光が丘病院小児科医の帳尻

昨日は東日本大震災から1年の日でした。犠牲になられた多くの人々の御冥福を祈ると共に、被災者の方々の生活再建が1日も早くなされる事を願います。


3/9付msn産経より、

 日大光が丘病院(東京都練馬区)が撤退し地域医療振興協会が引き継ぐ問題で、協会が確保した新病院の小児科常勤医は8人であることが8日、分かった。区は公募時に、常勤医16人程度の日大の規模と機能を維持すると公約していた。

 複数の関係者によると、7日の引き継ぎ会で、練馬区と協会が、名前が確定した常勤医は8人と伝えた。内訳は新採用が2人で、残り6人は、協会の病院から半年ごとに交代勤務する。この人数では小児救急の当直は1人態勢となる。

ほぉ、それでも小児科医を8人集められたのは立派な成果だと思います。住民の方には不満が残るでしょうが、この御時世に短期間で8人集めるのは大変だったと思います。8人の人数としての評価より、今日は問題にしたいのは8人の内容です。

    内訳は新採用が2人で、残り6人は、協会の病院から半年ごとに交代勤務する
どうも新たに採用できたのは2人だけで、他の6人は地域医療振興協会(協会)系の病院からの「出向」になるらしいようです。協会では出向による人事異動が頻繁に行なわれるらしいと聞いていますから、今回も同様の手法を使われたと考えます。

次の疑問はどこからだろうです。これについて練馬区議であり、光が丘病院問題の情報発信を精力的に行っている池尻成二のブログの「ローテーション」とは何か? 〜新・光が丘病院の医師体制〜に情報があります。

6人のうち4人は横須賀の市立うわまち病院から。後の2人は北区の病院(北社会保険病院)からということのようです。

この6人の常勤もローテ方式のようで、

  • 7日の引き継ぎでは半年ごとのローテーションという説明だったとのこと
  • 6日にあった別な会議では「2週間〜1,2カ月単位」という話が出ていたとも聞きます

ここは情報が錯綜していますが、具体的にどうするかの調整がまだ出来ていないのか、半年ローテの医師と「2週間〜1,2カ月単位」ローテの医師が混在しているのかもしれません。それともう一つのポイントは、どうやら現在の説明では光が丘病院の小児科医は「常勤医」として発表されているようです。これも光が丘病院情報はたとえ区の発表だっても容易に引っくり返るので判断が難しいのですが、今日は常勤医であることを前提に考えて見ます。


ここに施設基準届出というのがあります。北社会保険病院については確認出来なかったのですが、

病院 横須賀うわまち病院 横須賀市民病院
特定入院料の施設基準 小児入院医療管理料2 小児入院医療管理料3
承認年月日 平成20年3月1日 平成14年7月1日
小児科医の人数基準 当該保険医療機関内に小児科の常勤の医師が9名以上配置されていること。 当該保険医療機関内に小児科の常勤の医師が5名以上配置されていること。
現在確認できる小児科医数 10人 5人


何回かムックしていますが、横須賀市民病院の5人の小児科医は横須賀うわまち病院からの出向であるのは現在も確認できます。この2つの病院の施設基準を満たすための医師は14人必要であり、現在のままなら1人は出向で抜けてもOKですが、それ以上抜けるとどちらかの病院の施設基準を満たさなくなります。

簡単な算数なんですが、横須賀うわまち病院から4人の小児科医をどういう形式であれ常勤医として異動させれば、3人足りないです。施設基準も問題ですが、横須賀うわまち病院の小児科医数も6人となり、現在の戦力から半減します。横須賀うわまち病院小児科はかなりのアクテビティがあると聞いていますが、10人から6人になれば嫌でも従来の機能が大幅に低下します。言ったら悪いですが、春からの光が丘病院以下の戦力になります。

そういう状況で考えられるのは、

  1. 横須賀うわまち病院に春から3人以上の戦力が加わる
  2. 横須賀市民病院ないしは横須賀うわまち病院のの施設基準維持をどちらかをあきらめる
  3. 横須賀うわまち病院にはさらに別ルートの協会の応援がある
3.の別ルートについては、それをするぐらいなら直に光が丘に回す方が合理的に見えます。1.の新戦力もある意味同様です。ただ新戦力に関しては、新規である光が丘に中堅戦力を回すために、玉突き人事である可能性はあります。2.もそうですが4月の横須賀うわまち病院の小児科医数がどうなるかの情報が無いので判断が難しいところです。

施設基準関連でもう一つ引っかかるのは小児入院医療管理料2です。これを取得するには常勤小児科医が9人必要なんですが、光が丘が中途半端に8人であるのが気になります。言ったら悪いですが、もう1人増やせば小児入院医療管理料2の取得条件を満たします。この辺もよく知らないのですが、継承後に施設基準を再取得するのに時間が必要なので、スタート時には9人にこだわらなくても良いぐらいの解釈かもしれません。

それでも回せるものなら9人基準を満たしていても良さそうなものですから、8人にしたと言うのはそれなりの事情がある様にも思えます。


その関連なのですが、施設基準の常勤医とは「たぶん」ですが常勤医換算でもOKのはずです。少し古いデータで申し訳ないのですが、H.20.1.28付東京北社会保険病院(ニックネーム:北社保)の現状と言う資料に北社保の小児科医数が記載されており、常勤医6人、非常勤医11人となっています。現在の数がわからないのですが。北社保も含めて非常勤医からの常勤医換算数が上乗せされている可能性はあります。

光が丘も同様で、常勤医数としては8人であっても、常勤医換算数を含めれば9人を超えるです。横須賀うわまち病院も同様で、4人を常勤医として光が丘に出向させても非常勤医からの換算で3人が捻出できる、もしくは捻出できるような人事異動を行っているです。


一番良いのは横須賀うわまち病院に4人は無理でも2〜3人程度の新戦力が加わってくれている事です。実情はそうなのかもしれませんが、そうであっても引っかかるところはあります。仮に4人が横須賀うわまち病院に新戦力として加わって、そこからの玉突き人事で光が丘に異動があったとしても、別にローテ方式を取る必然性が乏しい点です。

立ち上げメンバーはある程度固定の方が望ましいのは医療に限らず同じだと思います。それをしないのは、協会人事の特徴の可能性もありますが、むしろ固定に出来ない内部事情がありそうに思えない事もありません。

そこからの連想なんですが、ここまでは光が丘小児科に小児科医が異動する前提で考えてきました。しかしそうでない可能性もあります。横須賀うわまち病院だって、そんなに簡単に小児科医が増やせるのなら、横須賀市民病院を協会が請け負ってからでも補充していたはずです。どうも実質として小児科医が増えたのは光が丘の新規採用の2人だけとも見えます、

そういう状況で横須賀うわまち病院から4人も引き抜けば嫌でも大きな影響が出ます。ここで地域医療振興協会専務理事山田隆司氏の発言を引用します。

  • 光が丘であっても、主体は救急と総診だ。光が丘でやるとしても救急と総診がいちばんのキーになると思っている。
  • 小児救急についても、総合医が診る

小児科医と発表されていますが、実態は総合診療医による「なんちゃって小児科医」がカウントされているんじゃなかろうかです。国家予算なんかで使われる手法ですが、同じ予算を様々に見方を変えて総額○○億円なんてします。同じ手法で、総合診療医と言っても、ある時は総合診療医、ある時は救急医、ある時は小児科医としてカウントしているだけの可能性もありそうな気がします。つまり総合診療医の小児科研修としてのローテじゃなかろうかです。

スッタモンダはありましたが、もう3月もかなり過ぎています。4月になれば否応無しに光が丘病院の新体制がはっきりしますので、チョットだけ楽しみな気がしています。まだ寒いですが、春はもうすぐです。