新々型インフルエンザ対策だってさ

3/10付読売記事より、

全国民に予防接種も、新型インフル特措法案決定

 政府は9日、強毒性の新型インフルエンザの流行に備えた特別措置法案を閣議決定し、衆院に提出した。

 自民、公明両党も同法案の内容に理解を示しており、今国会で成立する見通しだ。政府は公布後、1年以内の施行を目指している。

 法案は、強毒性の新型インフルエンザの全国的な流行が「国民生活・経済に重大な影響を及ぼすおそれがある」と明記した。流行時には首相を本部長とする政府対策本部が、緊急事態を宣言するとし、深刻な流行が予想される場合には、同本部が予防接種の「対象者と期間」を定める規定も盛り込んだ。政府は最悪の場合、原則として全国民を対象とした予防接種実施を想定している。

 都道府県知事の権限も強化する。具体的には、住民への外出自粛や学校の休校、集会の制限を要請できることや、医薬品や医療機器を取り扱う企業などが物資の売り渡しを拒否した場合、強制収用を可能にした。

特措法案の現物は見つからなかったのですが、おそらく内容的にはこうなるだろうと言うか、こういう行動計画の法的裏付けになるだろうと言うのが新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議2011.8.15付第45回資料にあります。この対策会議はHP上では1/17の第48回まであるのですが、第48回資料に新型インフルエンザ対策のための法制のたたき台(案)がありますから、45回資料にある

これが具体的なガイドラインになると見ます。46回以降は討議した形跡が乏しいと見ます。全部で78ページもある立派なものですが、適当に興味をもったところをつまみ食いします。


想定規模

本行動計画を策定するに際しては、過去に世界で大流行したインフルエンザのデータを参考とし、一つの例として、発病率については、全人口の25%が新型インフルエンザに罹患するとし、致死率については、アジアインフルエンザ等並みの中等度の場合は0.53%、スペインインフルエンザ並みの重度の場合は2.0%と想定した。

当然どういう規模を想定するかの設定は必要です。この行動計画はこういう前提から、

  • 全人口の25%が新型インフルエンザに罹患すると想定した場合、医療機関を受診する患者数(上限値)は、約2,500万人15推計。
  • 入院患者数及び死亡者数については、この推計の上限値である約2,500 万
    人を基に、過去に世界で大流行したインフルエンザのデータを使用し、ア
    ジアインフルエンザ等を中等度(致死率0.53%)、スペインインフルエンザを重度(致死率2.0%)として、中等度の場合では、入院患者数の上限は約53 万人、死亡者数の上限は約17 万人となり、重度の場合では、入院患者数の上限は約200万人、死亡者数の上限は約64万人となると推計。
  • 全人口の25%が罹患し、流行が各地域で約8週間続くという仮定の下での入院患者の発生分布の試算を行ったところ、中等度の場合、1日当たりの最大入院患者数は10.1万人(流行発生から5週目)と推計され、重度の場合、1日当たりの最大入院患者数は39.9万人と推計。

結構な規模の想定を行っており、中等度の規模で「1日当たりの最大入院患者数は10.1万人」、重度なら「最大入院患者数は39.9万人」の推定だそうです。そうなると気になるのは病床数ですが、e-statの医療施設調査によると、平成22年時点で一般病床が90万3621床、感染症病床が1788床となっています。中等度でも厳しいですが、重度なら・・・言わぬが花になりそうです。

でもって基本方針を少し抜粋しておきますが、

  • 感染拡大を抑えて、流行のピークをなるべく後ろにずらし、医療提供体制の整備やワクチン製造のための時間を確保する。
  • 流行のピーク時の患者数等をなるべく少なくして医療体制への負荷を軽減するとともに、医療提供体制の強化を図ることで、必要な患者が適切な医療を受けられるようにする。

当たり前ですが10万人なり30万人が入院するような事態になれば、医療機関が対応できるはずも無く、種々の対策を施す事によってピークを低くし、対応可能の範囲に納めようと言うわけです。逆に言えば、この行動計画が有効に機能しなかった場合は轟沈という事です。前回の新型の時の教訓が活かされていればと願うばかりです。


具体策

水際作戦はもう1回やるようですがそこは今日は飛ばして、診療所レベルで関係しそうなところとして、

新型インフルエンザに感染している可能性がより高い、発生国からの帰国者や国内患者の濃厚接触者の診療のために、国内発生当初は各地域に「帰国者・接触者外来」(発生国からの帰国者や、国内患者の濃厚接触者であって、発熱・呼吸器症状等を有する者を対象とした外来)を確保して診療を行うが、新型インフルエンザの患者はその他の医療機関を受診する可能性もあることを踏まえて対応する必要がある。このため、その他の医療機関も含めて、医療機関内においては、新型インフルエンザに感染している可能性がある者とそれ以外の疾患の患者との接触を避ける工夫等の院内感染対策を行う。

また発熱外来を作るようですが、小児科開業医なんて発熱患者の巣窟です。これに対し、

    医療機関内においては、新型インフルエンザに感染している可能性がある者とそれ以外の疾患の患者との接触を避ける工夫等の院内感染対策を行う。
いつもながらアッサリ書いてくれると思います。

帰国者・接触者外来以外の医療機関でも患者が見られるようになった場合等には、帰国者・接触者外来を指定しての診療体制から一般の医療機関(内科・小児科等、通常、インフルエンザの診療を行う全ての医療機関)で診療する体制に切り替える。

ふぅ

    通常、インフルエンザの診療を行う全ての医療機関
うちも該当する事になりますが、院内感染対策なんて事実上不可能ですから、対応できない医療機関は「インフルエンザお断り」の貼り紙でOKなんでしょうか。どうも甘くはないようで、

全ての医療機関に対して、医療機関の特性や規模に応じた診療継続計画の作成を要請し、その作成を支援すること。

ここで医療機関の従業者の感染対策の基本は、

また、医療従事者は、マスク・ガウン等の個人防護具の使用や健康管理、ワクチンの接種を行い、十分な防御なく患者と接触した際には、抗インフルエンザウイルス薬の予防投与を行う。

待合室でマスクをしているからOKレベルで許してくれるか・・・無理なのかなぁ? 診療所ばかりではつまらないと思うので、

入院治療が必要な新型インフルエンザの患者が増加し、医療機関の収容能力を超えた場合に備え、公共施設等で医療を提供することについて検討を行うこと。

これも趣旨としてはわかるのですが、具体的にどうやっての問題が常に出てきます。まずこういう設備を作る段階になれば医療機関も修羅場状態ですから、そこからどうやって医師や看護師などを捻り出すのだろうです。さらに臨時の収容施設である公共施設に期待する医療設備はどの程度の問題です。医療機器にしてもどこから調達するのかの問題もあります。

入院するぐらいのインフルエンザ患者ですから、モニターも必要でしょうし、今どきですから点滴ポンプも必要かもしれません。ベッドもどうするかはあります。酸素もボンベ持込にしても大変そうです。患者への食事の調達も簡単とは言えません。

何が言いたいかですが、臨時の施設は病院より医療レベルは落ちます。レベルが落ちた分に生じるであろう医療トラブルについてはどう考えておられるだろうです。政府は緊急事態宣言を出すとはしていますが、医療トラブルについても緊急事態宣言なのかです。震災の時でさえ基本は平時ルールです。設備体制が劣る臨時施設で、病院と同じ医療レベルの責任問題を問われると少々辛いところです。

とにかく医療と名の付くところに寝かせとけば治る訳ではありません。特別措置法にそこまで配慮してあるかと言われれば、期待は薄いでしょうねぇ。


ワクチン関連

ワクチンですが2種類を想定しているようで、

  • プレパンデミックワクチン


      パンデミックワクチンの開発・製造には一定の時間がかかるため、それまでの間の対応として、医療従事者及び社会機能の維持に関わる者に対し、感染対策の一つとして、プレパンデミックワクチンの接種を行うこととし、その原液の製造・備蓄を進める。


  • パンデミックワクチン


      新型インフルエンザ発生後、ワクチン製造用のウイルス株が決定されてから6か月以内に全国民分のパンデミックワクチンを製造することを目指し、細胞培養法など新しいワクチン製造法や、経鼻粘膜ワクチン等の投与方法等の研究・開発を促進するとともに、生産ラインの整備を推進する。
私やスタッフが接種されるのは、

プレパンデミックワクチンの接種の対象となる医療従事者及び社会機能の維持に関わる者の具体的な範囲や接種順位に係る考え方を平素から整理しておく。プレパンデミックワクチンの接種が必要な者の数を把握する。

どうもプレパンデミックワクチンになりそうです。改良されているのかな? 

プレパンデミックワクチンの有効性・安全性に関する臨床研究等を実施し、得られた結果の評価等に基づき、発生時に即時に第一線で対応する医療従事者及び社会機能の維持に関わる者に対し、プレパンデミックワクチンを新型インフルエンザの未発生期の段階で事前接種することについて検討を行う。さらに、安全性等の評価を踏まえ、プレパンデミックワクチンの事前接種を段階的に拡大していくことについても検討を行う。

なるほど! まず医療従事者とか「社会機能の維持に関わる者」に接種して、安全そうだったら適用範囲を広げる計画だそうです。プレパンデミックワクチンはとりあえず置いといて、国民が広く接種される予定のパンデミックワクチンですが、

    ワクチン製造用のウイルス株が決定されてから6か月以内
6ヶ月以内か・・・技術的にはそんなものだろうとは思いますが、絶対に6ヶ月以内に出来るかと言えば、

細胞培養法等による製造体制が整備されるまでの間、鶏卵によるパンデミックワクチンの製造体制において可能な限りの生産能力の向上を図る。

書き方からすれば細胞培養法が確立すれば可能になるかもしれないぐらいに受け取れば良いのでしょうか。ただし出来たからと言ってすぐに接種できるわけではありません。

あくまでも私がそう解釈するだけですが、細胞培養法で製造期間の短縮が可能になっても、そこから実際に接種されるまでの期間を考慮すれば、パンデミックワクチンが接種されるまで6ヶ月を切るのは難しそうな感じがします。前回の新型は大雑把には、

  1. 4月にメキシコで発見
  2. 5月に日本上陸
  3. 夏に小康状態
  4. 9月から流行の兆し
  5. 10〜11月にピーク
  6. 12月には終息傾向
  7. 1月にはほぼ沈静化
これに対しワクチン接種がテンヤワンヤの末に少数でも始まったのが10月(6ヶ月目)、もう少し拡大したのが11月(7ヶ月目)、接種が本格化したのが12月(8ヶ月目)です。たしかに新型発生から6ヶ月目の10月の時点で本格規模での接種が始まっていればワクチンは前回よりもマシ程度で間に合う可能性はあります。ただなんですが、前回は夏の小康期がありました。

次回も同じように小康期があれば良いですが、必ずしもあるとは言えません。もちろん前回より小康期が長い事もあるでしょうが、逆に上陸から一直線にピークに向かう事も十分ありえます。前回で言えば小康期であった7〜8月にピークが来るのも十分ありえると言う事です。つまり発生から3〜4ヶ月でピークが来る事も十分にありえると言う事です。

技術的な壁は理解しないといけませんし、無理なものは無理ですから、次回にワクチンが間に合うかどうかも運次第としても良いかもしれません。でもって接種体制ですが、

  • 新型インフルエンザの病原性が高く、感染力が強い場合、公費で集団的な接種を行うことを基本として、都道府県等と協議して、接種の役割分担(実施主体、費用負担等)、集団的な接種の実施基準等の接種の枠組を策定し、予防接種法における法的位置づけを明確にする。
  • 接種の実施主体が、医師会、事業者、学校関係者等と協力し、接種に携わる医療従事者等や、接種の場所、接種の周知・予約方法等、接種の具体的な実施方法について策定できるよう、接種体制の具体的なモデルを示すなど、技術的な支援を行う。
  • 新型インフルエンザ発生後の状況を想定した上で、状況に応じてパンデミックワクチンの接種順位を決定する際の基本的な考え方を策定する。

う〜ん、どうも歯切れが悪いですねぇ。

    集団的な接種の実施基準等の接種の枠組を策定し、予防接種法における法的位置づけを明確にする
ここは良いのですが、47回会議にある「新型インフルエンザ対策行動計画(平成23年9月20日改定)」のポイントには、
    病原性が高い等の場合は、公費で集団接種することを基本として、対策本部で接種順位等を決定し、関係者の協力の下、接種を開始
病原性が高くなければ前回の新型ワクチン方式を踏襲しそうな事も書かれています。どうなる事やらです。そう言えば前回のワクチン接種時には感染予防のために他の患者との時間的・空間的隔離が必要とされていましたから、個別接種となれば前回の大騒動がまたあるのでしょう。

これはワクチンと関係ないオマケですが、

新型インフルエンザ迅速診断キットの実用化を図る

技術的な事は詳しくないのですが、そんなに早く出来るものなのでしょうか。製品として開発し製造承認を受け、さらに大量生産して医療機関の下に届くなんて芸当が出来るのかどうかはチト不安です。ワクチン並の6ヶ月で期待できるかどうかは疑問が出るところです。


感想

なにせ長いので、隅々まで精読出来ていない点を割り引いても、私の感想としては前回の新型の時の対策をほぼ踏襲していると感じます。前回の対策もドタバタはテンコモリありましたが、醒めて考えるとあれぐらいしか現実的になかったと言えない事もありません。ではでは、前回の最大の問題点はどこにあったかです。個々のケースは様々ですが、あえて言えば「臨機応変」です。

未知の感染症ですから、新たな知見がドンドン出てくるのは宿命です。基本的には既知のインフルエンザの病態と較べながらの対策・治療になりますが、状況が状況ですから様々な情報が良い意味でも、悪い意味でも乱れ飛びます。そういう情報に対する社会的反応も含めた対策の変更の柔軟性に欠けたのが大きな欠点であった様に感じています。

具体的には最前線の医療現場と、中央の対策本部との温度差が余りに大きかったです。こういう対策は一種の戦争みたいなもので、戦前に戦略・戦術に基づいた準備は行ないますが、実戦が始まれば予想外の事が次々に噴出してきます。戦前に決めた通りにすべてが進むはずも無く、戦況に応じた作戦変更をいかに迅速かつ的確に行えるかがポイントです。

結局のところ発生した時期の責任者の能力にすべては依存する事になります。前回の責任者は、歴代厚労大臣の中でも優秀(様々な他の批評もあるにせよ)な方であったとは思いますが、それであの程度ですから次回は果たしてどうかに尽きるのかもしれません。


それと前回の教訓を活かしきれていない部分は戦略的にあるとは思っています。従来のガイドラインでもそうでしたが、戦略的に新型インフルエンザとその他の発熱疾患を区別できる前提がどうもあるように思えてなりません。戦略の基本は「封じ込め」であるのは理解しますが、封じ込めのためには迅速かつ的確に新型インフルエンザとその他の発熱疾患を診断する必要が生じます。

それがまるで容易に出来るような前提で戦略は出来ているしか見えません。しかし医療現場の最前線にいる者として非常に困難であるとしか言えません。私は小児科開業医ですが、現在の季節性インフルエンザの診断にも苦慮しています。高熱患者がはたしてインフルエンザであるのか、他の疾患であるのかは診察しただけで見分けるのはまず不可能です。さらに言えば高熱でなくともインフルエンザ患者はいます。

現在の基本戦術は簡易キットの結果にかなり依存しています。全面的ではありませんが、ある程度の部分は依存しないと見分けが出来ないです。しかし新型が登場すれば従来のキットの反応はどうなるのからまず始まります。ガイドラインで出現を予測しているアジア風邪タイプ、スペイン風邪タイプ、さらには鳥インフルエンザであっても従来のキットでA型の判定ぐらいは可能かもしれません。

これとて現在のキットの発熱から検査時間の精度の関連性、さらには判定結果の信頼性なんかも手探りで進まざるを得なくなります。それと最大の問題点であるキットのA型判定が新型であるのか、そうでないかは医師であっても無理です。そうなるとまたぞろPCR検査になるのですが、

都道府県等に対し、地方衛生研究所における新型インフルエンザに対するPCR検査を実施する体制を整備するよう要請し、その技術的支援を行う

これがまた凄い時間が必要です。もう一度引用しておきますが、

    医療機関内においては、新型インフルエンザに感染している可能性がある者とそれ以外の疾患の患者との接触を避ける工夫等の院内感染対策を行う。
これを通常の医療機関で行うとした上での具体的対処を現実的に考えれば、
  1. 発熱患者はまず隔離(受診受付を行った時点では「発熱 = 疑い」以上の判断は不可能)
  2. 従来の簡易キットで検査する
  3. A型の判定が出る
陰性の判定も嫌なんですが、A型の判定でも困ります。これが新型なのかそうでないのかなんて現場では判りようがありません。そうなれば、確定診断のために、
  1. 発熱外来に搬送する(行ってもらう)
他に方法が思い浮かびません。いくらガイドラインで新たな簡易キットを迅速に作ると書いたところで、現実的に旬の時期に入手できるとは到底考えられないからです。ただこの点について対策が為されていない事もなく、

新型インフルエンザの症例定義を明確にし、随時修正を行い、関係機関に周知する。

この手法を読んで前回の悪夢が甦った医師は少なくないと思います。私もそうです。例の同時期に発熱者が○人とか、△△に行った事があるかとかです。同じ事がまた繰り返されそうです。もうちょっと具体的には、

    前線医師:「インフルエンザA型陽性です。新型確認のためにPCR検査お願いします」
    保健所 :「メキシコ、カナダ、アメリカの渡航歴はありますか?」
    前線医師:「ありません」
    保健所 :「では季節性だから検査は不要です」

    前線医師:「インフルエンザA型陽性です。新型確認のためにPCR検査お願いします」
    保健所 :「メキシコ、カナダ、アメリカの渡航歴はありますか?」
    前線医師:「渡航歴はありませんが、他にも同じ学校の発熱患者が2人います」
    保健所 :「3人じゃないから検査は不要です」

    前線医師:「ありゃ〜、インフルエンザA型陽性だよ〜。PCR検査しなくちゃ〜」
    発熱患者:「ぇえ〜。わし博多やけん、新型だったら街歩けの〜なるぅ。たのむから、PCR検査はやめてくんさい」
    前線医師:「それもそうだが・・・いや、やはり地域の感染対策のためPCRはしないといけない。保健所に連絡しますよ、いいですね」
    発熱患者:「殺生な・・・」
    前線医師:「PCR検査をお願いします」
    保健所 :「メキシコ、カナダ、アメリカへの渡航歴、もしくは関西への旅行歴、もしくは博多区板付中学校校区のうろつき歴はありますか?」
    前線医師:「ないようです」
    保健所 :「季節性インフルエンザですから、検査は不要です」
前回の症例定義は実際のところこんな感じであった事は、前線の医師なら周知の事実です。



次回もたぶんに出たとこ勝負になりそうです。なんつうても前回の新型対策は公式に「成功だった」と総括していますから、その成功体験が次回の対策のベースになるからです。ささやかな願いとして、次回は神戸から国内感染が始まらないようにです。あれは本当に難儀な経験で、中央との折衝に行政や医師会関係者は精力をすり減らし、現場は中央からの実情無視の朝令暮改に振り回され続けましたからねぇ。

批判するなら対案を出せと言われそうですが、前回のネックであり現場で苦労させられた点についての改善を求めるぐらいは許容範囲と存じます。もう少し言えば、対策として新型患者を医療として迅速に見分けられない事を織り込んだ対策を求めたいの要望です。これは対策の根本の変更と、政治的責任問題まで波及する問題になるとも考えられ、今日の時点ではガイドラインに対する指摘に留めさせて頂き、機会があれば日を改めて考察したいと思います。