Sakino様から、
以下、野上ゆきえ都議の速報ツイートを転載しますが、「練馬区 日大光が丘病院の継承法人である公益社団法人地域医療振興協会は、本日午前東京都福祉保健局に事前計画を提出しました。70名の医師(常勤+非常勤換算分含む)が確保されているとのことです。」
これから、「審査」が行われるわけですが、ローテーションに関しては、小児科医師に関して「3ヶ月」というケースも含まれていることが伝わってきています。法務には不案内ですが、こういうの「常勤」というのだろうかと心配になります。
今まで「だいたい」で理解していた程度の常勤医換算ですが、一度しっかり知識整理しておきます。参考資料は、
URLからすると愛媛県の資料と推測されます。これは常勤医換算とは直接ではなく間接的(医師配置基準)に関係するだけですが、ちょっと「へぇぇ」と思ったので書いておきます。まずですが、
(1)入院患者数
- 通常の年は、365日である。
- 病院に休止した期間がある場合は、その期間を除く。
そりゃそうだろうしか言い様のないところですが、次に、
(2)外来患者数
- 実外来診療日数(各科別の年間の外来診療日数で除すのではなく、病院の実外来診療日数で除すこと。)
- 土曜・日曜日なども通常の外来診療体制をとっている場合は、当該診療日数に加える。
- 病院に定期的な休診日がある場合は、その日数を除く。
- 土曜・日曜日など通常の外来診療体制をとっていない場合で、救急の輪番制などで臨時に患者を診察する場合は、診療日数に加えない。
ここで確認できたのは
-
救急の輪番制などで臨時に患者を診察する場合は、診療日数に加えない
- 常勤医師とは、原則として病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者をいう。
- 病院で定めた医師の勤務時間は、就業規則などで確認すること。
- 通常の休暇、出張、外勤などがあっても、全てを勤務する医師に該当するのは当然である。
- 病院で定めた医師の1週間の勤務時間が、32時間未満の場合は、32時間以上勤務している医師を常勤医師とし、その他は非常勤医師として常勤換算する。
- 検査日現在、当該病院に勤務していない者で、長期にわたって勤務していない者(3ヶ月を超える者。予定者を含む。)については、理由の如何を問わず医師数の算定には加えない。
ただし、労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「労働基準法」という。)で取得が認められている産前・産後休業(産前6週間・産後8週間・計14週間)を取得している者については、長期にわたって勤務していない者には該当しない取扱いとする。
なお、当該医師が労働基準法で定める期間以上に産前・産後休業を取得する場合には、取得する(予定を含む。)休業期間から労働基準法で取得が認められている産前・産後休業の期間を除いた期間が3ヶ月を超えるときに長期にわたって勤務していない者に該当するものとする。
ここで確認できるのは常勤医の計算が1週間単位である事です。そのうえで
-
病院で定めた医師の勤務時間の全てを勤務する者
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上限:40時間(労基法)
下限:32時間
これが案外煩雑なので分割しながら読みます。
(1)原則として、非常勤医師については、1週間の当該病院の医師の通常の勤務時間により換算して計算するものとする。ただし、1週間の当該病院の医師の通常の勤務時間が32時間未満と定められている場合は、換算する分母は32時間とする。
なお、非常勤医師の勤務時間が1週間サイクルでない場合は、所要の調整を行うこと。
(例)月1回のみの勤務サイクルである場合には1/4を乗ずること。
分母については常勤医師と同じなので説明は省略します。ここでは分子の非常勤医のうちで、毎週勤務していないものです。どうも1ヶ月を4週計算しているような感触もあり、
-
(例)月1回のみの勤務サイクルである場合には1/4を乗ずること。
(2)当直に当たる非常勤医師についての換算する分母は、病院で定めた医師の1週間の勤務時間の2倍とする。
- 当直医師とは、外来診療を行っていない時間帯に入院患者の病状の急変等に対処するため病院内に拘束され待機している医師をいう。
- オンコールなど(病院外に出ることを前提としているもの)であっても、呼び出されることが常態化している場合であって、そのことを証明する書類(出勤簿等)が病院で整理されている場合は、その勤務時間を換算する。
- 病院で定めた医師の1週間の勤務時間が32時間未満の場合、当該病院の当直時の常勤換算する分母は、64時間とする。
私はこれを見つけてビックリしたのですが、当直バイトの勤務時間も常勤医換算に含まれていたことです。そうであるなら時間外勤務もまた当然含まれると判断して良さそうです。さらにオンコール医であっても条件と言うか帳簿さえ調えれば常勤換算の分子に加えられると言う事です。ただ当直医の場合は分母計算が変わり、
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病院で定めた医師の1週間の勤務時間の2倍とする
- 常勤医の勤務時間を9時〜17時とし間に45分の休憩を挟むとすれば(1日の勤務時間は7時間15分)、分母である常勤医の1週間の勤務時間は36時間15分となる。これを当直用に2倍計算すれば72.5時間になる。
- 残りは当直時間帯になり128時間となり、2人当直ですから分子は256時間となる。
- 常勤医換算すると、
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256時間 ÷ 72.5時間 = 3.531(人)
-
病院に置くべき医師の員数の標準の算定に当たっては、端数が生じる場合には、そのままで算定する。
(3)当直医師の換算後の数は、そのまま医師数に計上すること。
念押しで常勤換算できるとされています。ここはまあ良いとしても次も驚かされました。
(4)病院によっては、夕方から翌日の外来診療開始時間までの間で、交代制勤務などにより通常と同様の診療体制をとっている場合(一定部署を含む。例:夜間の外来診療や救命救急センターなど)もあるが、その時間にその体制に加わって勤務する非常勤医師の換算は(1)と同様の扱いとする。
交代勤務制の時の常勤医の扱いはどのシフトであっても通常勤務扱いになると解釈しますが、非常勤医が夜間シフトの交代勤務を行った時には、日勤帯の半分しか勤務時間として計算しないとしています。つまり当直であろうと交代勤務であろうと、非常勤医の時間計算上での価値は同等となっています。なんとなくと言うよりかなり複雑な気分になります。
同系列の2つの病院があり、双方とも2人の当直医を置いているとします。この当直医を自分の病院の医師ではなくもう一方の病院の医師で行えば(交換当直みたいな感じかな)、上で試算した通り、3.531人の常勤換算医が双方の病院で発生します。これは2つの病院で同時発生しますから合計で7人の常勤換算医が作り出されることになります。言うまでもないですが、両方の病院の医師の実数にはなんの関係もありません。帳簿上で無から7人が産まれてくると言うわけです。
常勤医師の1週間の勤務時間を36時間15分とし、1週間の当直時間を128時間とした上で試算を広げて見ます。
当直人数 | 当直勤務時間 (分子) |
分母 | 常勤換算数 |
1人 | 128時間 | 72.5時間 | 1.77人 |
2人 | 256時間 | 3.53人 | |
3人 | 384時間 | 5.02人 | |
4人 | 512時間 | 7.06人 | |
5人 | 640時間 | 8.83人 | |
6人 | 768時間 | 10.59人 | |
7人 | 896時間 | 12.36人 | |
8人 | 1024時間 | 14.12人 | |
9人 | 1152時間 | 15.89人 | |
10人 | 1280時間 | 17.66人 |
同系列のグループ病院で相互で交換当直を回せば、かなりの常勤換算医をグループ内で無から作り出せることになります。同系列グループで回すメリットは他にもあり、外部からの当直医招聘は当直料にかなり色をつけないといけませんが、同系列ならグループ定価で経費を抑制できる期待も出来ます。
あくまでも「たとえば」ですが、具体例を横須賀うわまち病院小児科をモデルで考えてみます。横須賀うわまち病院小児科はHPで確認する限り10人の小児科常勤医がいます。ここから4人が光が丘病院に抜ければ小児科医常勤数が6人になり小児入院医療管理料2の9人以上の施設基準を満たさなくなってしまいます。
しかしここで横須賀うわまち病院の当直医2人分を横須賀市民病院、光が丘病院、さらには北社会保険病院から小児科医を当直非常勤医として送り込めば、3.53人の小児科常勤換算医が生み出され、なんと小児入院医療管理料2を満たしてしまいます。
同様の手法は光が丘病院小児科にも適用可能で、ここも2人の外部からの小児科非常勤当直医を置けば、同じく3.53人が生み出されますから、ここに新規採用の2人が加われば5.53人、さらに横須賀うわまち病院から1人異動、北社会保険病院から1人異動すれば合計で7.53人で四捨五入すれば「8人」になります。これなら横須賀うわまち病院の小児入院医療管理料2の施設条件は無理しなくとも満たせます。
一種の錬金術みたいにも見えますが、たしか錬金術では人体練成はタブーだったはずと記憶しています。しかし医療では法に定められた正しい計算法になっているのが確認できます。ま、やらされている方はタマランでしょう。さて、これぐらいでSakino様の疑問にはソコソコ答えられたと思います。