北海道の医師はタフだなぁ

医療崩壊ネタと言うより、北海道の医師のタフさに驚嘆した方に比重を置いていますのでその点は宜しく。岩内協会病院と言うのがあります。ここは2007年4月頃と言いますから7年ぐらい前に4人いた内科医が3人いなくなり院長1人になると言う事態が起こっています。2007.4.19付北海道新聞より、

岩内協会病院 内科常勤医ゼロに 院長も今月末で退職

 【岩内】後志管内岩内町の岩内協会病院(二百四十床)で奥山修兒院長(54)が四月末で退職し、同病院の内科の常勤医が五月からゼロになることが十八日、分かった。同病院では出張医の外来応援などで内科診療を続ける方針だが、一部休診日も出る見込みだ。

 同病院は十一科を持つ岩内地方の中核病院だが、二〇○四年度の臨床研修制度導入に伴う医師の引き揚げなどが相次ぎ、四人いた内科医は五月からは奥山院長一人になる予定だった。その奥山院長も「途中で倒れるのは目に見えている。無念だが、いくら院長といえども耐えられない」と話している。

 同病院は四月、初期診断を行い専門医に紹介する「総合診療科」(総合内科)を新設。病院を経営する北海道社会事業協会の加藤紘之理事長(札幌・斗南病院長)ら札幌や小樽などからの出張医の応援を得て、外来患者に対応している。約四十人の入院患者は、昼間は「総合診療科」で、夜間は常勤の外科医らが診る。地元医師会の協力で維持している二十四時間の救急診療体制は当面、継続する方針。

いくら院長の肩書をもらっても1人では無理だとの御判断です。当時の医師総数について調べてみたのですが、2007年4月より前で一番近い2006年12月時点の病院概要には医師18人と書いてあります。これが常勤医数かどうかは疑問です。18人も常勤医がいて内科医が4人とはかなりアンバランスだからです。もう一つの傍証は「指導医・認定医」の紹介もあるのですが、これが2人しかいません。どうも非常勤医も総ざらいした人数の気がします。2007年4月に内科医が病院からいなくなるような騒動の後、2009年時点では常勤医8名の記載が確認できます。少し盛り返したのかどうかははっきりしないところです。

ここで確認したいのは2007年当時の診療体制です。

  1. 約四十人の入院患者は、昼間は「総合診療科」で、夜間は常勤の外科医らが診る
  2. 地元医師会の協力で維持している二十四時間の救急診療体制
外来も非常勤医の応援をかなり受けているような状況に受け取れます。でもって再びみたいな事が起こったわけです。2/5付朝日新聞より、

 岩内町の北海道社会事業協会岩内病院(常勤医5人、病床数240)が、医師不足のため今年に入って小児科を除く救急患者の受け入れを休止していることが、4日の道議会保健福祉委員会で明らかになった。岩内、共和町と泊、神恵内村の4町村で唯一の救急告示病院だが、受け入れ再開のめどは立っていない。

 病院や道によると、常勤医のうち院長が1月で診療をやめ、内科医1人が今月中に退職予定。病院は新聞折り込みなどで住民に受け入れ休止を知らせ、患者受け入れの協力を近隣の倶知安町余市町小樽市の拠点病院に求めた。

 岩内・寿都地方消防組合によると、1月の1カ月間で、4町村から町村外への救急搬送は63件。これまでより少なくとも30分は搬送時間が延びるが、患者の状態に影響が出た事態はこれまでに出ていないという。

常勤医の内訳は医師紹介にあり、内科医3人、整形外科医1人、小児科医1人となっています。このうち内科医2人がいなくなりまたまた内科は1人になるようです。そりゃ救急患者の受け入れが出来なくなるのは当然でしょうが、それよりも私が妙に気になったのは、

    小児科を除く救急患者の受け入れを休止
えっ!、小児科は救急受け入れを継続しているようです。1人でっせ。病院HPには次のように書かれています。

  • 24時間二次救急対応需体制。
  • 地域医療室を中心とした訪問看護、居宅介護支援事業を展開。
  • 岩宇地区唯一の小児科入院施設

ここしかないのは理解しますが、1人でっせ。外来表を確認すると1人だけの小児科医は週に午前診5コマ、午後に3コマをこなしていらっしゃいます。午後診が13:00〜16:00なんですが、午前診がチト長いと言うかエライ早くて、

    8:10〜11:30
8:10からの外来が週5回あるようです。医師1人ですからそんなに入院患者を抱えていないとは思うのですが、午前診の前に入院患者を診ておこうと思ったら、7:40ぐらいには出勤している必要はありますし、家を出るのはもっと前になります。どうやってはるかの実情はもちろん不明です。夜間休日は非常勤医の応援が手厚いのでしょうか。それとも2007年当時に書いてある外科医も含めた他科の医師がしっかり診てくれているのでしょうか。ここで他科の医師については、やはり整形外科医より内科医の方が協力を得やすいと思うのですが、内科医3人体制が1人体制に転じても小児科の救急応需が続けられると言うことは、もともとあんまり協力がなかったの傍証ぐらいにはなりそうに思えます。だから内科は救急応需を中止しても小児科は続いているぐらいです。

北海道での医療は「そんなもの」なんて話を耳にしたことがありますが、正直なところ

    タフやなぁ
3か月とか半年の短期ならともかく、こんな体制を長期に続けるのは私のような軟弱者では到底無理です。その点で感心しきってしまいました。