初春を寿はぎながらブログ開き

年末年始で大休止してしまうと再始動に猛烈なパワーが必要になってしまい、ようやくブログを開きます。新春あいさつネタでお茶を濁すのも旬が過ぎつつありますから、軽いネタでお楽しみ頂こうと思います。あんまり質は良くないのですが、

協会光が丘病院の医師募集の要項です。読むと案外面白味がありましたので、推理物として提供させて頂きます。


募集科目

募集科目

数えて見ると17診療科で、日大光が丘病院の現在と較べてみます。

協会光が丘 日大光が丘
一般内科 内科
呼吸器内科 存在せず
消化器内科 存在せず
循環器内科 循環器科
神経内科 神経内科
総合診療科 存在せず
産婦人科 産婦人科
小児科 小児総合診療科
精神科 精神神経科
泌尿器科 泌尿器科
眼科 眼科
耳鼻咽喉科 耳鼻咽喉科
麻酔科 麻酔科
リハビリテーション科、 リハビリテーション
放射線 放射線
病理科 病理部
募集なし 皮膚科
募集なし 外科
募集なし 心血管・呼吸器外科
募集なし 脳神経外科
募集なし 整形外科
募集なし 臨床検査医学科


並べてみると良くわかるのですが、日大時代より内科系がより細分化する計画に見えます。総合診療科と一般内科をどう棲み分けるのかは存じませんが、これも広義の内科の一部門ととらえると、日大時代に較べて呼吸器内科、消化器内科と合わせて3診療科増えるようです。あくまでもちなみにですが、横須賀市民病院の呼吸器内科、神経内科は未だに常勤医はゼロのままだったはずです。

横須賀市民病院を持ち出すのは良くないかもしれませんが、泌尿器科産婦人科地域医療振興協会が引き継いだ後も常勤医がいなくなったままのところです。なかなか大変そうに思います。

もう一つは外科系の募集が少ない事です。外科、心臓外科、脳神経外科、整形外科と言えば花形なんですが、皮膚科も合わせて既に医師を集められたのでしょうか。募集が無いと言うのは、既に集まったか、それとも診療科を閉じる、もしくは非常勤医による外来維持の形態を目指しているになるのですが、これ以上は判断出来ません。判断は出来ませんが集まったんじゃないかと推測できる材料はあります。

救急医療・小児医療・周産期医療、災害時医療に力を入れます。

外科と整形外科抜きで救急医療やましてや災害時医療はちょっと力を入れにくい気がします。もちろん脳神経外科もなかったら困りそうな診療科です。ひょっとしたら総合診療科が兼ねるのかな?


勤務時間

休日

    日曜日、祝祭日
週勤務日数
    4.0日 〜 5.0日

勤務時間
    (月〜金) 08時30分 〜 17時15分
    (土曜日) 08時30分 〜 17時15分

なかなか味わいのある勤務体系ですが、月曜でも土曜でも勤務時間は同じのようです。あえてポイントを示しておけば、いわゆる日勤帯のみに勤務時間を示しています。勤務時間は8時間45分ですが、休憩時間を何分にしているかは興味深いところです。労働基準法には、

第三十四条

 使用者は、労働時間が六時間を超える場合においては少くとも四十五分、八時間を超える場合においては少くとも一時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない。

ここで「八時間を超える場合」でちょうど8時間なら休憩時間が何分必要かですが、解釈として8時間ちょうどなら「超えない」になるそうです。そこから考えると8時間労働の45分休憩を指し示すとするのが宜しそうです。そういう勤務時間自体は珍しくも無いのですが、1日8時間であるなら、5日働けば週の上限の40時間に達します。ところが某病院は土曜日を休診としていません。土曜日の診療体制がどうなるかは不明ですが、表向きの勤務シフトをどう構成するのか興味は出てきます。

それと募集要項に書いてある4.0日と言うのも考えようによっては不思議な勤務日数で、なぜにこんなカテゴリーがあるのかチト不思議です。こういうところこそ、

勤務内容

    外来、病棟、検査、手術
    各科目により異なります。
    詳細はお問い合わせ下さい。

「詳細はお問合せ下さい」なりにしても良さそうなものですが、既に決まっている人に週4日組が結構いるので書かれてあるのでしょうか。それとも「出向」でもあって、1日は出向元の病院に勤務とかがあるのでしょうか。


年棒

給与(年棒) 1000万円 〜 1800万円 応相談

給与が年棒制と言うのも、医療界だけではなくマジックワードになりやすいものです。ちょっと強調しておきますが、病院側がいくら年棒制と言おうが、時間外手当も発生します。年俸制と労働基準法から引用しておきますが、

年俸制」という概念は法律上明確に定義されているわけではなく、一般的に使用者と労働者が年額をもって賃金を定める場合が年俸制と呼ばれている。法律上の特別の賃金形態ではないため、労働時間や賃金に関する労働基準法上の規制は適用されるのが原則である。

単に給料の年額総支払い分を示しているだけに過ぎないと言う事です。 従って、

時間外労働、深夜労働または休日労働をさせた場合は割増賃金を支払わなければならない(労働基準法第37 条)というのが労働基準法の基本原則であり、年俸制を採用したというだけでその適用を免れるものではない。

ただし年棒内に予め一定の時間外等の割増賃金を含ませるのはアリとされますが、

年俸制であっても法律上必要な割増賃金の支払義務があることは上述のとおりであり、労働実績にかかわらずいかなる場合でも年俸額以上支払わないという運用は違法である。この点について通達は、「年俸額または月額賃金に時間外労働等の割増賃金が含まれていることが労働契約の内容として明らかであって、割増賃金相当額と通常の労働時間に対応する賃金部分が区別されており、かつ割増賃金相当額が法定の割増賃金額以上に支払われている場合は、一定の割増賃金を含ませていたとしても労働基準法上問題ない」としている(平12.3.8 基収第78 号)。この趣旨は、年俸額のうちのどの部分が割増賃金に相当する額であるかを明確にし、実際の労働時間に基づき計算される本来支払うべき法定の割増賃金(以下便宜上「計算上の割増賃金」という。)を計算した上で、不足があれば追加支給すべきということであり、結局法定の割増賃金を全額支払うことが大前提ということになる。

キモを示しておけば、

    割増賃金相当額と通常の労働時間に対応する賃金部分が区別
当たり前の話ですが、時間外手当相当の金額分は年棒に含ませることはできても、それ以上は支払いの必要性が出てくると言うわけです。これは当直に於ても同様と考えてもよいと思われ、年棒制に明示されている当直勤務料金は追加料金無しでもOKですが、それ以上になれば支払いが必要とするのが妥当です。さすがに御存知の方が医師でも増えてきていますが
    労働契約書はよ〜く確認しましょう♪
年棒制になっているから時間外勤務も無制限デスマッチと説明してチョンのところも少なくありませんが、年棒制で無くとも無制限デスマッチのところが多いのも周知の事です。年棒制と説明するだけマシと言う考え方も出るぐらいです。経営優秀な協会だからと言って、労働契約も優秀であると盲信せずに、確認しておく事をお勧めします。経営シビアと労務管理の優秀さはしばしば反比例するのが世の常です。


当直

当直 応相談

何をもって「応相談」なのか難しいところですが、年棒制に連動して年間当直数を契約時に設定して年棒に含ませる・・・なんて事はまず考えられませんから、ごく素直に高齢医師対策ぐらいに解釈します。さてさて当直にもう少し絡めば、

当直あり:内科系・外科系・産科・小児科

ここが一番興味があります。99.99%以上の確率で、労基法41条3号の宿日直許可に基づいた宿直であると考えられます。光が丘病院の形態は調べる限りチト特殊で、ほぼ純粋の賃貸契約となっています。練馬区は光が丘病院の土地・建物を所有しているだけの大家であり、現在の日大は純粋の店子です。継承と言っても、店子が出た後に、同じ業種の新たな店子が入った形になります。

そうなると某病院は継承に当たって新病院をイチから作る事務手続きが基本的に必要かと考えます。この新たな事務手続きの中に労基法41条3号の宿日直許可の新たな取得が入ってくるはずです。申請及び許可は事務手続きにはなりますが、これがすんなり下りるかどうかを個人的に大いに注目しています。

勤務医の労働環境を巡る問題は段々と大きくなっています。あくまでも風の噂に聞いただけですが、労基署も新たな宿日直許可について非常に慎重な姿勢があるとされます。募集要項を読む限り、某病院は従来型の当直と言う名の違法夜勤による勤務体制を敷こうとしています。これを黙って許可するかどうかです。面白そうな点です。


地方出張 or 出向

複数先を合計で4週間地方の病院の地域支援を行って頂きます。

らしいと言えばらしいのですが、4週間と言えばおおよそ1ヶ月、厳密には7.7%の医師戦力が病院から不在となります。一説では既に70人の医師を集めたともありますが、そのうち5人以上は「地方の病院の地域支援」で常に不在になります。

素直に取るとそうなるのですが、もう少し推理を巡らすと、おそらく協会系の病院医師は似たような労働契約を結んでいるはずです。そういう契約が悪いとは言いませんが、問題は「地方」の解釈です。なんとなく「地方 ≒ 僻地 or 非大都市部病院」の語感がありますが、言い様によっては日本中どこであっても「地方」です。首都東京であっても東京「地方」と言う事は可能です。

練馬区であっても東京の練馬「地方」と言う事は可能ですから、他の協会系病院からの「地方の病院の地域支援」だって成立するはずです。これは協会系勤務医にとってはちょっとした朗報になるかもしれません。協会光が丘病院の医師が足りない間は光が丘病院への「地方の病院の地域支援」が相当長期に行なわれるかもしれないからです。

東京都への僻地医療支援はモットーに反すると考える人もいるでしょうが、練馬区だって東京ですから、逆に楽しみにする医師も少なからず出てくるような気がします。


ブログ開きですから、今日はこのあたりで。では今年もよろしくお願いします。