悔しいがようわからん

話はある知人の産科医が、地域の医療事情により予防接種にも関与しなければならなくなったボヤキから始まります。ま、産科と小児科は周産期でクロスするとは言え、予防接種になると通常は完全に小児科領域で、基礎的な知識はあっても実戦的な知識は手薄なのは致し方ありません。実戦的とは接種時に保護者にどう説明するかとか、接種スケジュールを具体的にどう立てるかです。

説明の方は勉強してもらうとして、接種スケジュールについては、

こういうのが一応あるので目安にはなります。目安にはなるのですが、今度は私の方が細部で引っかかって個人的に立ち往生しています。この小児科学会の表の基本前提は同時接種です。同時接種についての是非については省略しますが、表の接種スタート時期を注目してください。
    2ヶ月時・・・Hib、PCV7、HBV、Rota
    3ヶ月時・・・DPT、Hib、PCV7、HBV、Rota
どこもおかしくはないのですが、予防接種には地域事情があります。他の地域の方は適宜脳内置換してもらいますが、神戸では4ヶ月検診時にBCG集団接種があります。2ヶ月時、3ヶ月時にRota接種を行うとすれば、BCG接種との絡みが大きなポイントになります。Rotaは生ワクチンのために他のワクチンとの接種に4週間の接種間隔が必要です。

BCGの日程は年間スケジュールで決まっているために、Rota接種も4ヶ月時のBCGを計算しながら予定を組まなければなりません。簡単には2ヶ月の接種開始時に、

    2ヶ月時接種 → 4週間 → 3ヶ月時接種 → 4週間 → 4ヶ月時BCG接種
つまり日程が決定している4ヶ月時のBCG接種予定日から逆算して、8週間以上前に2ヶ月時の接種日を決定しないとならないと言うことです。ギチギチ8週間前がラストチャンスですが、少しでも接種スケジュールに余裕を持たすためには、可能な限り2ヶ月時の接種を早くすることが望ましいになります。実務的にもBCG接種予定日の8週間前に一挙に希望されたら医療機関の方が対応しきれません。

ほいじゃ2ヶ月時は具体的にいつなら最短かになります。ここが予防接種のウルサイところで、1日間違えればアウトです。そこで添付文書や予防接種規則を読み返してみたのですが、ワクチンによって接種が可能になる時期の表現が微妙に違います。

  • Rotaは生後6週間から
  • Hib、PCV7は2ヶ月齢以上
  • DPTは生後3月に達した時
Rotaは週齢ですから、たぶん月曜日に生まれたなら翌週の日曜日が1週齢になるはずです。ちょっと自信がないのですが、年齢の時は誕生日の前日に年齢が増えるのが定義ですから、週齢も同じだろうと考えています。ただ周産期的にはday 0とする計算法もありますから、どうだろうの部分を残します。それでもRotaの週齢計算は置いておきます。生後6週は同時接種をする上ではさしたる意味がないからです。

問題はHib、PCV7の「2ヶ月齢」です。月齢はいつを区切りにするのでしょうか。誕生日と同じ日が翌月に来た日ないしその前日と言いたいところですが、年や週と違い月は日数にバラツキがあります。端的には12月の終盤生まれの子供が不明です。

具体的には12/30、12/31に生まれた子供の1ヶ月齢は、1月も31日までありますからどうとでも計算できます。ほいじゃ2ヶ月齢はどうなるかです。2月は28日までしかありません。つまり30日も31日もないだけではなく、その前日と考えてもありません。つまり12/30、12/31に生まれた子供の2ヶ月齢になる日は、2/28なのか3/1以降なのかです。どこかに通達とか解釈があれば是非情報下さい。

それと気になるのはDPTの「生後3月に達した時」と「3ヶ月齢」は同じ日を表現しているのでしょうか。同じにも思えますが、ちと違う可能性も含まれるようにも思います。こういう行政文の解釈はワクチン接種ではスタート時もそうですが、期限ギリギリの時にも常に問題になります。正しい解釈法を御存知の方は本当に宜しくお願いします。


えらい細かいところにこだわったお話ですが、かなり前に接種間隔の週数計算でも少し悩んだ事があります。不活化ワクチンの接種間隔は1週間ですが、たとえば水曜日に接種したとすれば、翌週の水曜日に接種できるかどうかの問題です。神戸では保健所に確認したら、翌週の同一曜日であれば1週間になると返答をもらいましたが、この話題の時に地域によっては水曜日ではなく木曜日が1週間目であるとの情報をもらった事があります。

その地域が今でもそうなのかどうかは確認しようがありませんが、ワクチン接種においては1日の解釈の違いが「接種ミス」と騒がれかねませんから、実務上は軽視できないところです。年齢とか、月齢とか、週齢とかは数え方が業界や慣習、さらには法によって微妙に変わる事が多々ありますから、予防接種では正確にはどう数えるかの知識は確認しておきたいところです。