続クラリスとクラリシッド

前回のエントリーがえらい反響だったようで、反響が大きすぎて対応に困惑しています。アボットのMRだけではなく、大正富山のMRまで一緒になった来訪があり、エントリー内容の釈明に汗を流していきました。目の前で二人に味見をしてもらったのですが、さすがにMR、絶対に差があるとは言いませんでしたね。もともと微差なんですから、「私はクラリスの方が美味しいと思うんですが?」と聞いても「そうは思いません!」と言われれば水掛け論になってしまいます。目に見える差なんて示しようが無いからです。もっともうちの職員は蔭で「あいつら味盲ちゃうん」とつぶやいていましたが。

そんなこんなで販売となりました。実は味見はお隣の調剤薬局でもやってもらっていたのですが、そこでもどうも味に差がありそうの意見となっていました。そのためか「本当にクラリシッドで良いのですか?」の念押しまであったのですが、誠実で義理堅いアボットMRに味の件を了承している手前、無情の変更の決断は躊躇され、従来どおりクラリシッド採用の決断としました。

味の違いについては、推測される原因をコメントにも幾つか寄せてもらいました。私も推測した原因も含めて幾つか挙げたいと思います。

  1. ロット説
      ロットで味のばらつきは出ないとMRは明言しました。それに製剤見本段階でロットが変わるほどの生産量があるとも考え難いですしね。
  2. 高温変質説
      新工夫のコーティングですが、熱には弱いそうで、MRの説明では50℃ぐらいで影響があるそうです。暑い季節になっていますので、MRの営業車の車内温度は相当上がっている可能性はあり、全面的には可能性は否定できないそうです。そうであるならクーラーボックスにでも入れて営業に回った方が良いかもしれませんね。
  3. 品質ムラ説
      均一に大量生産をしているとは言えどうしても最低限のムラは出ます。とくにまだ生産は開始されたばかりで、力価とか溶解性とかは厳重にチェックされているかもしれませんが、感性に頼るだけの味では案外大きなものになっている可能性はあります。それがたまたまクラリスとクラリシッドで表面化したのじゃないかというものです。これについては両社MRとも100%の否定はしませんでした。
  4. 製造別ライン説
      クラリシッドの薬ビンを見ると製造販売元アボットジャパン、技術指導大正製薬と明記されています。これを素直に読むとアボット大正製薬の技術指導で独自に生産していると解釈できます。工場が違うなら味が微妙に違う事は十分ありえます。この件については両社MRとも明快に否定し、大正製薬の同じ工場の同じラインで間違い無く製造しているとの事です。
私のようなヤブ医者ではこれ以上の原因究明はできません。アボットジャパンの内部でもこの問題はかなり大きな問題になっているとの事であり、アボットを糾弾するのが目的じゃありません。むしろアボットがこれまでいかに誠実に営業を行なってきたかは身をもって知っているので、今後の製品はきっと同じであろうと私は信じてクラリシッドを従来どおり使います。説明をいくら聞いても差が出る理由が見つからないからです。

少なくとも、もし仮に製造見本段階で私が感じたように味に差があったとしても、社内問題になってくれたのなら、今後はアボット挙げて味の差の監視に励んでくれるでしょうし、そうなればこの問題は自然に消失すると考えるからです。それにしても味の差にこれほどこだわる診療所の担当になったMRさんがすごいお気の毒です。わざわざ両社の味を比較して、「うまい」「まずい」なんて事に大騒ぎするところは珍しいでしょうからね。