米国産牛肉輸入再開

みんなが書くだろうベタな話題ですが、私も食べる事になるかもしれませんのでちょっと一言。

経緯を簡単にたどると、まず日本でBSEが発生しました。これは結構な騒ぎとなり、現与党幹事長が当時農林水産相だったので、お決まりの米国産ビフテキをおいしそうに食べるパフォーマンスをやったりしましたが、最終的に全頭検査という荒技を使って日本の牛肉不安を沈静化させました。

その後、ほぼ引き続くようにアメリカでBSE発生が報じられました。日本での騒ぎの余韻が収まっていない時期であったので、即時に輸入禁止となりました。アメリカ牛肉業界にしても日本はお得意様ですので、「買ってくれないなら売らない」と高見の見物というわけにもいかず、活発なロビー活動とともに輸入再開交渉が行なわれました。

この交渉経過は不思議なものでした。アメリカもBSEが発生したので牛肉管理に乗り出さざるを得なくなり、アメリカの基準を作りました。アメリカ国内向けとしてはそれでOKだったようです。ところがその基準はアメリカの牛肉業界の事情もあり、日本に較べて甘い基準となっています。べつにアメリカが甘いのは問題ではありません。あくまでもアメリカ国内問題であり、アメリカ国民さえ納得すればそれ以上でもそれ以下でもありません。

ところが輸入再開交渉では、アメリカの基準で日本は米国産牛肉を買えと高圧的な姿勢でアメリカは一貫して主張しました。さらに言えば、日本の基準は厳しすぎるからアメリカの基準に日本も引き下げよと、交渉というより脅迫に近い雰囲気で行なわれたようです。アメリカお得意の牛肉以外の貿易産品に幅広くリンクさせる手法の前に日本はいつもの通り腰が砕け、アメリカ基準に限りなく近寄った上で、少しだけ日本向けに基準を高くする程度の内容で妥協する事になります。

すったもんだの末、輸入再開。まずはサンプル輸入という形式で始まりました。再開されてすぐに危険部位があからさまにゴロンと見える形で含まれているのが発覚し再び輸入禁止。またもや輸入再開交渉です。日本では慎重派の声が高くなりかけていましたが、政府は食品安全委員会に目一杯圧力をかけ、それでも足りないと見るや、慎重派委員を差し替えて輸入再々開にこぎつけました。

政治状況によっては大問題になる事ですが、与党圧倒的多数の状況であることと、国会が終了時期に合わせてのタイミングでもあったので、これほどの荒技を使っても粛々と再々開されました。ちと長くなりましたが、今朝は読売新聞社説に注目してみたいと思います。読売新聞は前回の輸入再開決定時の去年の10/25にも社説を掲載し、その時の内容は妙に記憶に残っているのです。オンラインではすでにID、パスワードでないと引き出せないので、記憶に頼って記事内容を抜粋してみます。

  1. 「政治的圧力」をかけてでももっと早く答申を出せなかったのは失政。
  2. 国民のBSEに対する漠然とした不安、伝えられるアメリカの牛肉管理の大雑把さへの不安、日本人が全頭検査で納得している安心感などは取るに足らないものだ。
  3. アメリカとの友好関係だとか、関連業界の損失の方を大きく重視し、少々の危険性など「政治的」に早期に押し潰してしまわなかったのが怠慢だ。
それに対して6/22付の読売新聞社説より抜粋、

半年ぶりに米国産牛肉が市場に出回るわけだ。国内には歓迎する牛丼ファンらがいる一方、本当に大丈夫か、疑いの目で見る消費者も少なくない。

 賛否が入り交じる中での再開であることを、忘れてはなるまい。日米の関係当局は、日本向け牛肉を扱う食肉処理施設での品質管理を徹底させ、安全な牛肉が食卓に届くよう、万全を期すべきだ。

さて同じ新聞の社説でしょうか。イエロージャーナリズムの見識なんてこの程度のものと言う事でしょうね。垂れ流せば過去は綺麗に忘れる。もちろん責任なんて「せ」の字も考えない。その時々に一番受けそうな話を書き散らすだけ。社説なんてその程度の代物である事をまたもや再確認させて頂きました。