クリスマス・イブ

 遥かなる青春時代、さらにそれ以前の子ども時代はクリスマスはワクワクするイベントでした。個人的な話ですが、子ども時代は誕生日とクリスマスには好きな物を買ってもらえる家庭内ルールがあり、何を買ってもらうか頭を悩ましたものです。なんでもと言っても交渉は必要でしたし。

 もっとも親が子どもほどクリスマスをイベントとして重視していたかは疑問です。よくある質問に、

    サンタをいつまで信じていたか?
 例の朝起きると枕元に欲しかった玩具が置いてある世界です。これが記憶に残る限りゼロで、クリスマスのプレゼントは親と一緒に買いに行っていたのです。サンタがプレゼントを子どもに配る話は知っていましたが、子どもの時から話と現実の差を叩き込まれたぐらいでしょうか。

 我が家には大きなクリスマス・ツリーがありました。子どもの背丈ぐらいは余裕であるものです。それは良かったのですが、あれは親が買ったものでないのは間違いありません。オーナメントに鷲のマークのロゴがあったからです。祖父が薬局を経営していましたが、おそらく拡販グッズとして大正製薬からもらったもので良さそうです。

 これも妙に覚えていますが、小学校の4年か5年ぐらいの時にクリスマスで私ははしゃいでいました。たぶんですが何度も何度も、クリスマス、クリスマスと行ったのがうるさく感じたのだと思います。他にも機嫌が悪かったのだと思いますが、母親は冷え冷えした声で、

    うちは仏教だからクリスマスは関係ない!
 こんな感じでピシャリと言われています。曖昧過ぎる遠い記憶ですが、翌年からツリーを飾らなくなった気がします。なんとなく思い出しています。


 学生の頃のクリスマスはバブルに向かう好景気の中でした。素直にバブル期として良いでしょう。当時の恋人たちのクリスマスは、高級レストランで過ごすでした。そのためにカップ麺でひたすら貯金するなんて話がゴロゴロ転がっていました。

 これは今だって基本的にはそうかもしれませんが、当時の感覚的には絶対というか、それをやらなけえば恋人たちのクリスマスではないぐらいの風潮だった気がしています。

 私はどうだったかですが、たぶん行ってません。とにかく予約が取るのが大変で、12月の始めじゃ手遅れ状態だったんじゃないかと思います。それだけじゃなく、ネット前の時代で情報がとにかくプア。

 そういうオシャレなレストランの情報を得ようとすれば情報雑誌に頼るしかなく、情報雑誌に載るような店は予約殺到ぐらいの関係で良かったはずです。ウソかホントかわかりませんが、クリスマス・ディナーを済ませた帰りに来年の予約を取るなんて話もあったぐらいです。

 さらに言えばクリスマス価格で高かった。学生の懐には響きすぎるぐらいです。そりゃ、ディナー代の上にプレゼント代が乗りますからね。

 どうしていたかの記憶も曖昧になっていますが、下宿でケーキを買って食べていたんじゃないかと思っています。そこにケンタッキーを買い込んでぐらいの慎ましいものだったぐらいでしょうか。なんというか、

    無理にクリスマス・イブに出かけなくても良い
 そんなクリスマスでも満足してくれた当時のパートナーに感謝かもです。まあ、どうせディナーに行くなら誕生日ぐらいで十分としてくれたのもあったかもしれません。誕生日のディナーも・・・それは置いときます。これもまた遠い日の思い出です。


 あれから幾星霜です。子どもが小さいうちはサンタもやってました。大きくなってからもケーキを買って、シャンパン買ってもやってました。そのうち上の娘が家を出て行き、下の娘も学生です。親と過ごすクリスマスより、恋人なり友人と過ごすクリスマスになっています。

 そうなってくれないと困るのですが、また一つ人生の曲がり角を通り過ぎようとしていると感じています。