本業にかなり影響している問題なのでもう1回。
前回も引用した1/8付化血研HPより、
今回の処分は、弊所が、血漿分画製剤について長年にわたりこれを承認書と異なる方法で製造するとともに不正な製造記録を作成しこれを隠ぺいしていたこと、及び、独立行政法人医薬品医療機器総合機構による同製剤に関する立入調査において適切な対応を行わなかったこと、並びに、ワクチンについて厚生労働省の報告命令に対して適切な報告を行わなかったことによるものです。
私の知る限りではポイントは、
- 承認書と異なる方法で製造
- 不正な製造記録を作成しこれを隠ぺい
今回の化血研の「110日」は日本商事を上回る過去最長の厳罰処分であることは確認して良さそうです。ここでなんですが引用記事の田辺三菱製薬が起した問題ですが、
具体的に承認申請データの改ざんがあったのは、アンモニア含量試験、アルブミン以外の蛋白質濃度測定試験、重合体濃度測定試験、界面活性剤含量試験など。市販後にもバイファは、アレルギー誘発の可能性がある酵母成分の混入を調べる、ラットPCA反応試験の抗体抗原反応で、陽性を陰性と偽るなどの不正を行っていた。
処分に値しそうな問題ですが、それでも田辺三菱は25日間です。化血研の110日間がどんだけ重いかが直感できます。直感は出来るのですが、私のような医療関係者でも違和感が強いのは前回も書きましたが、
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製造工程は違法だが、出来上がった製品は問題なし
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不正品
- マスコミ
- 自称医療ジャーナリスト
- 反ワクチン団体
派手な化血研問題に較べると地味なんですが、北研問題ってのも実はあります。北研問題については化血研問題以上に情報が断片的で、ある程度確実なところを拾っておくと問題はMRワクチンに発生したようです。
ここまでは北研から文書で頂いています。この時のメーカーサイドの説明として、
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規定より力価は低いが実用上は問題ないので接種自体は問題ない
社内定期安定性モニタリングの結果、麻しんウイルスの力価が有効期間内に承認規格を下回る可能性があることが判明したことから、下記製造番号の当該製品の自主回収を行うことを決定しましたのでお知らせいたします。
この情報自体が昨年の10/31時点とチト古いのですが、それ以降にはないようなので最新版としてよさそうです。これによると問題の本質は、
- 製造直後には問題はなかった
- 時間の経過による力価の低下が早く、有効期限内に力価が規定を下回る事が判明した
HF060A及びHF061Aは回収対象外、つまり問題無しとなっています。もう少し情報が欲しいところなんですが、平成27年10月30日に厚生労働省へ情報提供した「自主回収の対象ワクチンに関する見解」の【別紙-1】の更新版にありました。
ワクチンの有効期間は製造から18ヶ月として表をシンプルにすると、
ロット番号 | 製造年月日 | 規格値を下回る時期 | |
年月日 | 製造より | ||
HF053A | 2014.3.3 | 2015.5.3 | 14ヶ月 |
HF054A | 2014.3.5 | 2015.5.5 | 14ヶ月 |
HF055A | 2014.4.8 | 2015.1.8 | 9ヵ月 |
HF056A | 2014.5.19 | 問題なし | |
HF058A | 2014.12.10 | 経時調査中 | |
HF059A | 2014.12.14 | 経時調査中 |
しかし2015年は2つのロットしか作っていないように見えます。MRワクチン製造なんて安定需要の売り切り商品に近いですから、年によって製造量の差は小さいはずです。第一三共の発表は2015年10月ですから、2014年実績からすると5ロットぐらいは作っていても良いはずです。これは問題を北研が自覚して製造と言うか、検品に出していない可能性が高いと見て良さそうです。いや見方によってはHF057Aがロット落ちになったようにHF061A以降は作っても、作っても規格を満たせない製品しか作れていない可能性もあります。
2015年のワクチン製造については業界筋の情報としてワクチン製造の改善に取り組んでいるの話はあります。そりゃ改善に取り組んで不思議ないのですが、もう一つの情報として未だに原因不明と言うのもあります。製造法を改善すると言うのは承認された製造工程以外の手法を用いることになり、これで品質的に問題が無い製品を作れても、検品の上で出荷なんかしたら化血研問題でわかるように業務停止ものの処分を受ける可能性があります。ですから北研が出荷を再開するには、
- 変更した製造工程での改善に成功する
- 成功した製造工程の正式承認を得る
北研問題を考える時のヒントになりそうなのがある伝聞情報です。ワクチンは感染症部会の管轄なんですが、そこである委員が、
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北研の方が化血研より悪質だ!
- 非承認の製造工程で作るのは過失
- 製造工程が非承認であるのを隠蔽するのは重過失
- ワクチン力価が有効期限内に低下するのは単なるトラブル
- ワクチン力価の低下にすぐに対応せずに半年も放置していたのは過失を越えた重過失
- 化血研製品は製造工程こそ厳重処分の不正であるが、出来上がった製品には問題なく接種者に被害は及ばない
- 北研製品は不良品の隠蔽になり、なおかつ接種者に影響が及ぶ
さて北研にもなんらかの処分が下されるのでしょうか。これについての情報は私は持ち合わせていません。不正は宜しくありませんし、不良品を接種するのは論外と思っています。不正や不良品を作ったメーカーになんらかの処分はあっても構わないのですが、そのためにセットのようにワクチン不足が起こるのは末端の医療機関及び接種希望者にとって迷惑なお話です。末端の医療機関が取れる対策としては、烙印の押された化血研製品、どうにも危ない臭いのする北研製品を除外して品揃えって言いたいところですが、全医療機関がそう動いたらワクチンは足りなくなるのが必至です。
去年の後半から引き続いてワクチンは厄年みたいです。