二年目は権田原とバチバチやってるだけじゃなかったの。教授から、
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「USMLEを取れ」
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「ECFMGサーテフィケイトも取っとけ」
まさかウチをアメリカで開業でもさせる気かと思ったぐらい。だってそうでしょ、普通海外留学って言っても研究じゃない。救命救急科に顕微鏡除いたりガスクロマトグラフィーの研究が必要かどうかは疑問だし。でも教授が取れって言うから取ったけど
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「木村先生、紹介状だ。費用は悪いが出せない」
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「由紀恵君、おめでとう。アメリカ留学に選ばれたそうだね」
「え、ええ」
「加賀教授から聞いた」
「でも・・・」
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「ボクもビックリしたよ。あの加賀教授がボクに頭を下げて頼むんだよ。なんとか行かせてやってくれって」
「あの、その」
「もちろんOKしたよ」
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「はい」
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「木村さんの遺産だよ。木村さんも、奥さんもしっかり生命保険に入っていたし、ずっと由紀恵さんのために積み立ててくれてたんだ。由紀恵さんのものよ」
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「木村も見たかったろうな。由紀恵君の晴れ姿を」
「ほんとに」
「木村が生きていたら、嬉しくて朝まで飲み明かしていただろうな」
「ホントに、木村さんも強かったですから。大ウワバミなのは由紀恵さんそっくり」
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「父はお酒が弱かったですから」
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「あははは、由紀恵君は桁外れだけど、木村も世間じゃ酒は強いって言うんだよ」
ただ不安はテンコモリ。英会話には不安はないけど、女の身で単身アメリカに渡るのも不安といえば不安。アメリカって治安は良くないって言うし。アメリカ野郎にもウチの睨みは通じるんやろか。それより不安なのは教授から渡された紹介状。これが簡潔というか、短いというか、なんにも書いてないと同然いうかで、
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『アイ・アプルーブド』
正直なところ、こんなものでどうにかなるかって心配やってん。宛先の大学病院行ったんだけど、これがまあゴッツイ病院で港都大学病院が小病院に見えるほど。案内されて教室に行って出てきたのは、ちょっとどころやない、かなりいかつそうなオッサン。教授は紹介状を読んだんだけど、あんな短い紹介状をウンウン言いながら読むのよね。読むったって単語二つやのに穴が空くほどにらみ続けた末に、
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「君が加賀の認めた弟子か」
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「そうだ」
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「あの加賀が認めた弟子に間違いない。そんな医師がいるなんて・・・」
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「私も教えてはもらったが弟子じゃない落第生だ。アメリカでも加賀の弟子として耐え抜いた者はいるが、加賀が認めた弟子がいたとは聞いたことが無い。だから私に臨床技術を学ぶ意味はない」
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「君は救命救急のシステムを学べ、それと救命救急の技術体系を学べ。あの加賀がわざわざ私のような落第生を選んで、ここに送り込んだのはそのために違いない」
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「それとこれは私からの頼みだが、ウチの連中に少し教えてやってくれ。それ相応の給料は払う。本物の加賀の技術がどれほどのものか知ることは、ウチの連中の将来にきっと役立つ」
でもこれは助かった。研究だけなら学費を支払うだけになるけど、働けば給料が入って来る。だから加賀教授はアメリカでの臨床医資格をわざわざ取らせたんだって、やっとわかった。
ウチはとにかく加賀教授をお手本に実戦臨床技術を覚え込んだだけで『本物の加賀の技術』も価値とか凄さはさっぱりわからへんかってんけど、アメリカ人は驚嘆してた。どうも加賀教授は神格化され伝説化され過ぎてアメリカ人でも、
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『ホンマにそんなこと出来たのか』
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『オー、ジーザス』