「自然みたいな分娩」の分類・用語考

時々出てくるので「自然みたいな分娩」についての用語を整理しておきたいと思います。とりあえず「自然分娩」は経腟分娩を意味してしまう事がありますから、「自然みたいな分娩」とは区別したいと思います。現在の「自然みたいな分娩」は医療介入の程度によって表現される事が多いので、その程度でまず大分類を考えます。

産科医の管理を受けて産科医療機関で分娩したものを医療管理とまずしたいのですが、ここで問題になるのは某映画の題材になった某産科医院です。扱いに困るのですが、例外として扱うぐらいで後でもう一度考えます。

産科医療機関の次のランクの医療管理は助産師によるものです。助産師管理も助産師のモットーにより、産科医による医療管理に近いものから、独自の世界を構築するものまでおられ、これも一括りにするのは問題なのですが、境界領域の考察が必要かもしれません。

もう一つの大きなカテゴリーは医療管理を一切拒否される分娩です。これも形態的には信念でそうされている方と、ある意味信念ですが、妊娠中の医療管理のみ拒否されて、飛び込み分娩に走られる方もおられます。似ているが微妙に違うので、ここにも考察が必要です。

それでも大分類としては、

  1. 産科管理分娩
  2. 助産所分娩
  3. 医療拒否分娩
分けたのは良いのですが、これに「自然みたいな分類」がどう関連するかです。医療拒否分娩は「自然みたいな分娩」であるとしても良いとは思いますが、助産師分娩であっても、例外的な産科管理分娩でも「自然みたいな分類」に入れて語られることがしばしばあります。ここでなんですが、昨日Seisan様から頂いたコメントを紹介しておきます。

用語的には「自然派分娩(雰囲気として、病院よりも助産院、のほうが自然っぽいね、っていう安易な人たち)」と「自然分娩派(医療の介入を不要として自力でなんとかする、責任も自分で取ると言える人たち)」というふうに分けるのもありかと思います。

ここから発想したのですが、「自然みたいな分娩」の極北をまず定義するのが都合が良さそうです。エッセンス的には、

  • 医療介入の拒否が自己の確固たる信念に基いている
  • 分娩時のトラブルも自己責任として受け入れる
もう少し簡略に表現すると、産科医療と接点を全くもたいない「自然みたいな分娩」の極北と定義します。そうなると土壇場で産科医の助力を計算に入れている分娩はワンランク下がるとしても良いかと思います。

極北の次に分類されるのは産科医の介入拒否群です。いわゆる助産所分娩ですが、ここも何があっても助産所だけで完結させるものと、緊急時には産科医療機関の連携をしているものはランクが変わるとして良いかと思われます。連携派もさらに二つに分けても良いと考えられ、積極連携派と土壇場丸投げの消極連携派です。

例の映画の題材の産科医院は助産所消極連携派に分類しておけば収まりが良さそうな気がします。考察した分類を表にまとめておくと、

大分類 小分類 定義 自然みたいな分娩分類
医療拒否分娩 完全派 分娩時のトラブルも自己責任で負う 原始分娩
不完全派 土壇場での医療介入を期待する
助産所分娩 無連携派 いかなる事態でも産科医療機関を頼らない 自然派分娩
消極連携派 土壇場で産科医療機関に投げる
積極連携派 状況に応じて適切に連携する 自然風分娩
産科管理分娩 一部の産科医療機関は消極連携派とする 医療管理分娩


こんなもので如何でしょうか。ここで分類しきれなかったのは、野良妊婦からの飛び込み分娩派です。外形的には原始分娩に近いのですが、最後は産科医療機関を頼るのを既定路線にしていますから、原始分娩のカテゴリーには入りきらないような感じがします。つうか「自然みたいな分娩」で分類すべき対象とさらに分けて考えるのが良さそうと思います。

やはり「自然みたいな分娩」に分類される方は、確固たる信念として医療介入を排除したいのベースが必要で、他の理由で医療機関を利用しない分娩(厳密には妊娠管理)とは別種の存在と考えるのが適切と思います。

個人的にはソコソコ整理したと思うのですが、ご意見宜しくお願いします。