14日投開票の舞鶴市議選。最大の争点は、舞鶴市民病院を含む公的3病院の再編をどうするかだ。増える赤字や医師不足といった課題を背負うなか、市がまとめた再編案をめぐる動きは遅々として進まない。地域医療における公立病院のあり方そのものが問われている。
■市民病院、赤字36億円
「税金のかけ方として不合理だ」「地域医療を守る全体像を示せないのなら、議案を否決する大義はない」。9月議会の最終日、市の一般会計から病院事業会計への赤字補填(ほてん)をめぐり、議員同士が激しい応酬を繰り広げた。
市議会の2大会派が、累積で36億円を超える市民病院の赤字を問題視。3、6月に続き、市からの7億円の赤字補填を前提とした病院事業会計の今年度当初予算案を否決する異例の事態になった。
赤字の原因は、2004年に内科医13人が集団退職したことに始まる。この年、新しい研修医制度ができたのに伴い、独自の研修で院内の医師養成をしてきた幹部が退職。同調する医師たちが辞めていった。06年には慢性疾患のための医療にシフトしたため、大学病院医局からの外科系医師の派遣もストップ。03年度末に30人いた常勤医は、現在8人しかいない。
当然、患者の足は遠のく。外来患者は03年度に14万6千人だったのが、昨年度は3万1千人に。198の病床は昨年度、26・6%の利用しかなかった。さらに市内には、公的な総合病院がほかに国立病院機構運営の舞鶴医療センター、舞鶴赤十字病院、舞鶴共済病院と三つあり、患者を奪い合う構図になっている。
そこで、現在浮上しているのが共済病院を除く3病院の再編計画だ。医療センター、赤十字はともに、医師不足や人口減による経営悪化に悩んでいる。
市は9月、(1)舞鶴医療センター内に急性期基幹病院を設置(2)舞鶴赤十字は市西部で急性期の一部や回復期以降の医療を担う拠点にする(3)市民病院は医療センターと赤十字に機能を移管――との案をまとめた。関係者によると、市民病院については閉鎖も含めて検討しているとみられる。
再編案が示された直後の9月議会では「医師確保の見通しがない、ずさんな計画」「再編は、持続可能な医療体制を構築するために必要だ」などと意見が割れた。
市は府の担当者とともに各病院の設置母体に出向き、診療体制や病床規模などについて協議を進めている。市医療政策推進課の瀬川治課長は「なるべく早く合意を得たい」と言う。
市内に住む男性会社員(42)は「市民病院はしっかりした医療体制が復活するなら歓迎するが、赤字体質から抜け出せないなら閉院したほうがよい。市民は我慢して待っているのに再編の話も進んでいるようには見えず、早く何とかしてほしい」と話す。
とりあえず舞鶴を考える時に常勤医が何人おられるかは注目になります。これを確認するのは至難の業なんですが、平成20年12月に新院長が就任し6名になったことは確認されています。さらにその6人体制は平成21年11月まで確認できます。とは言え今は平成22年11月です。舞鶴にとって1年は途轍もなく長い時間です。
病院HPには常勤医紹介なんてページはありませんし、平成20年8月から復刊されていた「舞鶴市民病院だより」も平成21年11月号を最後に発行されていないように思われます。少なくとも病院HPにはありません。そこで平成21年9月号「舞鶴市民病院だより」にある外来表と、現在の病院HPにある外来表を比べて見ます。私が確認する限り常勤医6人のお名前はすべて確認されますから、今でも6人とも健在の可能性は高いと考えられます。
では増えたかと言われると不明です。外来表だけでは常勤医か非常勤医かの区別は不可能だからです。コマ数からして増えていないと思われますが、それ以上はわかりません。
常勤医の人数確認はともかく、氏名の確認はディープな観察なんですが、そんなスノブなレベルでなくとも舞鶴は聖地の中でもとくに著名な病院です。せめてそういう著名病院に恥じない確かな取材が必要だと思うのですが、少々この記事は細部に粗い印象があります。今日は舞鶴検定のつもりで記事を確認してみます。
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赤字の原因は、2004年に内科医13人が集団退職したことに始まる。この年、新しい研修医制度ができたのに伴い、独自の研修で院内の医師養成をしてきた幹部が退職。同調する医師たちが辞めていった。
2003年、市民病院のわずかな赤字を理由に抜本的な経費削減を求める舞鶴市(市長:江守光起、事業管理者:本田安志)・院長(田中明)側と、『高度な医療にはそれなりの費用(税金)がかかり、医療の質を低下させてまで経費削減をするべきではない』とする副院長との対立と言われた。 副院長の退職もあり内科医14名中13名が退職。(肩書きはいずれも当時)
別に新研修医制度が出来た事とは基本的に関係ありません。舞鶴市及び院長サイドと副院長の内部抗争であり、舞鶴市側が副院長を事実上追い出すことに成功はしていますが、ついでに内科医も一緒に退職してしまったのが事の真相となっています。朝日はどこから新研修医制度が大量辞職の原因であるとのネタをつかんだのでしょうか。少々不思議です。
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06年には慢性疾患のための医療にシフトしたため、大学病院医局からの外科系医師の派遣もストップ
2006年(平成18年)1月、依然として内科医が派遣されない状況が続き、外科医などを派遣する大学病院から「このまま内科医が派遣されない事態が続くなら、引き揚げる」との通告
外科医は我慢強いですね、2年も内科医が来ないのを我慢していたようですがついにこらえきれずに最終通告を行い、2006年3月に退職しています。「慢性疾患にシフト」も何も2006年6月には副院長追い出し側にあった院長すら退職し、常勤医ゼロになっています。だいたい内科常勤医不在の状態で「慢性疾患にシフト」も珍妙な状態です。朝日は何を元に記事を書かれたのか首を捻ります。
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03年度末に30人いた常勤医は、現在8人しかいない。
なぜにそうなのかは不明ですが、注意して読まなければならないところです。
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外来患者は03年度に14万6千人だったのが、昨年度は3万1千人に
年度 | 病院 | 診療所 | 合計 |
2006 | 5978 | 8957 | 14935 |
2007 | 12373 | 8667 | 21040 |
2008 | 18488 | 8484 | 26972 |
2009 | 17666 | 9680 | 27346 |
*2009年度は2009年6月時点の見込み |
この外来数の推移からすると朝日記事の3万1000人は病院と診療所の合計数と考えるのが妥当です。なおかつ見込み時点では2万7946人であったのが結果としては3万1000人に増えたようです。診療所の外来数はそれなりに安定していますから、病院の外来数は2万1000人から2万2000人程度ではないかと推測されます。これはおそらくなんですが、現院長を除く5人体制になったのが2008年4月頃と推測されますから、確実に外来数は増えているとは評価可能です。
2006年には5976人まで落ち込んでいましたから、再び集まった医師たちは地道に努力を積み重ねておられると言っても良さそうです。外来患者は一度逃げられると取り返すのに時間がかかるものです。
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198の病床は昨年度、26・6%の利用しかなかった
病床数 198床
一般病床 150床
療養型病床 48床(うち介護療養型病床 12床)
こうなってはいます。ただなんですが、診療所もあわせて常勤医は8人しかいないわけです。病院だけなら6人です。6人で198床を見れるわけがありません。公立病院改革プランの概要からですが、
平成18年度より、一般病床150床のうち90床を休床し、一般病床60床、療養病床48床の計108床で運営を行っている。
現在の運用病床数は108床ですから、単純計算ですが48.8%程度の利用があった事になります。平成21年度3月時点の1日当たりの入院患者数は47人ですから、結果としては横這いないし、微増に留まったと見るべきかもしれません。優秀な成績とは言えないと存じますが、28人で198床を回していたのに較べての比較は如何なものでしょうか。事実はより正確にお願いしたいところです。
これは舞鶴検定ではありませんが、朝日が拾った「代表的な市民の声」です。
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市民病院はしっかりした医療体制が復活するなら歓迎するが、赤字体質から抜け出せないなら閉院したほうがよい
舞鶴の経営が傾いて久しいのは誰でも知っていますが、そういう状態にも関らず人件費の問題も経費の問題も改善されていないのが最大の問題でしょう。今まで出来なかったと言う事は、これからも出来ない聖域であると考えるのが妥当です。そんなものを抱えて黒字体質を望まれるなら、閉院しか選択はありません。
もっともですが、この「代表的な市民の声」も、いざ閉院が決まると「病院が無くなる事への不安」にすぐ置き換えられるのも世の常ですから、その程度と解釈しておくのが宜しいかと思います。
でもって朝日記事の検定結果ですが、あんまり高い点は出にくいですね。他の記事の基礎的なデータまで疑念を抱かせる様な気がします。