成田赤十字病院

3/12付共同通信(47NEWS版)より、

医師11人が一斉に退職へ 千葉・成田赤十字病院

 成田空港に最も近い総合病院で、年間3万人超の救急患者を診療する成田赤十字病院(千葉県成田市、加藤誠院長)の常勤内科医34人のうち11人が、3月末での退職を申し出ていることが12日、分かった。同日までに5人しか補充のめどがたっていない。

 同病院は「過酷な勤務状況が主な理由」としている。

 救命救急センターがある同病院は遠方から多くの患者が訪れ、新型インフルエンザ発生時には感染が疑われる人を受け入れる「特定感染症指定医療機関」にも指定されている。

 脇田久副院長は「県内の他の医療機関の閉鎖や規模縮小の影響で、本来の想定以上に患者が増え、医師の負担が大きくなっている。この状況で新型インフルエンザが発生したら、対応は極めて難しい」と話している。

 同病院によると、11人のうち7人は医学部卒業後3−5年目の後期研修医。退職後は他の病院に移ったり、大学に戻ったりする。同病院は4月以降、内科の外来はかかりつけ医の紹介状がある患者に絞って受け付けるなどの対応をとる方針。

常勤内科医34人を成田日赤の各科紹介で確認してみたのですが、

診療科 常勤医 嘱託 研修医
総合内科 2 0 0
消化器内科 5 1 2〜3
循環器内科 5 0 0
腎臓内科 3 0 0
血液腫瘍科 3 0 0
呼吸器内科 3 0 1〜2
糖尿病代謝内科 1 0 0
神経内科 5 0 0
27 1 3〜5


記事の内科がどこまで指すのか不明なのですが、成田日赤では神経内科以外の内科を大きな集団としてまとめ、その中に臓器別の診療科がある形態になっています。神経内科を含めても27名、もし含まなければ22名になってしまいます。記事にある、

常勤内科医34人のうち11人が、3月末での退職を申し出ていることが12日、分かった。同日までに5人しか補充のめどがたっていない。

この算数が既に行なわれていたのなら、

    34 − 11 + 5 = 28
だいたい帳尻が合うのですが、現在は異動前の状態を反映していると考えられるので「???」です。そうなると後7人どこかに内科に常勤医としている事になります。内科全体の診療紹介のところに、

さらに、柳沢(副院長)尾世川(診療管理部長)が各専門内科を調整・統括しております。

こうあるので、調整・統括するぐらいですから副院長と診療管理部長が内科常勤医であるとすれば、残りは5人です。常勤医がHPに掲載されていない理由として考えられるのは、医師の異動とHP更新のギャップの可能性はあります。4月なり5月の異動の分は更新しても、その後の異動に対応していない可能性です。それにしても5人は少なくないようにも思いますが、掲載されていないものは仕方ありません。

もう一つの記事データも確認して見ます。

同病院によると、11人のうち7人は医学部卒業後3−5年目の後期研修医

3〜5年目といえば平成16年〜平成18年に医籍登録された医師と考えられます。HPに掲載されている医師で該当しそうなのは、

  • 循環器内科:平成16年2名
  • 神経内科:平成16年1名、平成18年1名
計4名です。そうなると不明の5名のうち3名は少なくとも後期研修医である事になります。ここで後期研修医の数がそもそも何人いたかになります。これがまた難しいのですが、2009年度採用成田赤十字病院内科後期研修プログラムと言うのがあります。おそらく募集人数自体は毎年大差はないとすると、

募集人数: 8名程度

これが毎年満たされていれば、成田日赤内科の後期研修期間は

研修期間:原則として2年間。ただし、2年間の後期研修後、本人希望を審議し、補足的研修や内科系専門研修を許可する場合がある(専修医制度)。

単純計算で16人になります。もっとも定員の8人が常に満たされているかどうかは少々疑問で、

第1次募集:2008年6月30日(月)締め切り、7月5日(土)に採用試験。
第2次募集:2008年9月16日(火)締め切り、9月20日(土)に採用試験。
(一次募集で募集定員に達した場合、第2次募集は中止する場合があります)

第2次募集が設定されているぐらいですから、必ずしも一次募集で定員が埋まらないのかもしれません。それにしても良く知らないのですが、後期研修医の募集ってこんな時期にやるんですね。どうもなんですが、不明の5名はすべて後期研修医としても良いかもしれません。そうなると後期研修医の総数は最大9名と推測されます。

あくまでも推測ですが、成田日赤内科の構成は、

  • スタッフクラス:25名
  • 後期研修医クラス:9名
こうである可能性があります。そうなると

常勤内科医34人のうち11人が、3月末での退職を申し出ていることが12日、分かった。同日までに5人しか補充のめどがたっていない。

ここの解釈を考えてみると、7人が3〜5年目ですから、

  • スタッフ4人が退職し5人が補充された
  • 後期研修医クラス9人中7人が退職した
後期研修医の補充は募集時期からして6/30締め切り、7/5に採用試験ですから、今の時期には目途が立ち難いような気がします。まさかなんですが、記事にある「5人」は6/30締め切りの後期研修医に募集してきた医師の数を「補充の目途」としているのでしょうか。どうもよく分からないところです。



ここまで書いてもう一つ思いついた事があります。成田日赤では内科と神経内科を別立てにしています。別立ては後期研修医募集もそうで、内科内科(地域医療)神経内科と分かれています。人数は内科が8名程度、内科(地域医療)が若干名、神経内科が記載無しです。

それと各科紹介の卒業年次を良く見ると、

  • 内科7科:卒後5年目2名
  • 神経内科:卒後3年目1名、卒後5年目2名
卒後5年目を成田日赤の後期研修医ではなく専修医と考える事が出来ます。HPに掲載される医師名は所属する診療科があってこそ掲載されるものであり、神経内科の卒後3年目の医師は、神経内科に所属しているから名前が記載されていると考えられます。一方で内科7科はローテーションですから、内科には所属していても内科7科の特定の診療科に所属している訳ではないので名前が無いとの考え方は可能です。さらに卒後5年目の医師は専修医であり所属する診療科があるので名前が記載されているとも考えられます。

そうなれば推測される内科7科の構成は、

  • スタッフクラス:20名
  • 後期研修医クラス:14名
後期研修クラスには卒後5年目(専修医)の平成16年卒を含み、スタッフには副院長、診療部長を含まない計算としています。もしこの構成なら後期研修の期間は2年ですから、7人が抜けても基本的に不思議はありません。不思議はありませんが、わざわざ記事にしていますから何か理由があるはずです。理由を考えると募集時期からして7月に後期研修医は採用されますから、6月までは研修期間であると考えるのが妥当です。

6月までいるはずの後期研修医が3ヶ月前倒しで年度末に退職してしまったのが事件の真相の様な気がします。もちろん卒後3年目も含みますから、1年持たずに退職したものも含まれると考えられますし、人数からして研修医が連絡を取り合っての集団逃散の可能性も考えられます。

理由は、

同病院は「過酷な勤務状況が主な理由」としている。

この推測が正しいかどうかは内部事情を知りませんから何とも言えませんが、成田日赤にすれば記事になったのは非常に拙かった気がします。言うまでもなく2009年度の後期研修医募集への影響です。2年の後期研修期間が過酷で集団逃散を招く状態である事を広く宣伝してしまった事になります。隠すのが良いかどうかは別の議論ですが、果たして募集があるかどうかの危険性さえ出てきます。別にそんなところをワザワザ選ぶ必然性がないですからね。

もう少し推測を広げると、後期研修医の3月退職組以外の研修2年目の生き残りも6月にさらに退職します。研修1年目と研修2年目の退職人数までは不明ですが、仮に研修1年目の数が多いと7月になれば後期研修医が本当にゴッソリいなくなります。悪評が広まって応募人数が減れば、内科7科の後期研修医が半減以下になる可能性も十分あると言う事です。後期研修医の戦力が減った負担はスタッフに圧し掛かります。成田日赤の負担が大きくなっているのは記事情報を信じても良さそうですから怖い話です。

本当のところはどうなんでしょうか。真相はどうあれ、後期研修医の集団逃散のニュースは全国の前期研修医に広がった事だけは間違いありません。