外来管理加算と言われても勤務医ではピンと来ないかもしれませんが、開業医なら切実な問題です。医科診療報酬点数表から原文を引用すれば、
入院中の患者以外の患者に対して、慢性疼痛疾患管理並びに別に厚生労働大臣が定める検査並びにリハビリテーション、精神科専門療法、処置、手術、麻酔及び放射線治療を行なわず、計画的な医学管理を行なった場合は、外来管理加算として、所定点数に52点を加算する。
町医者の診療といえども医療は計画的に行われます。決して無計画に行なわれていません。ですからここに書かれた条件さえ満たせば診療科に関わらず算定されます。イメージとしてはチト違うかもしれませんが、一般の方々の○○手当のうち、勤労手当に類するものと解釈すれば分かりやすいと思います。
この外来管理加算について、中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会(第106回)で外来管理加算についてとして取り上げられています。
外来管理加算の算定については以前から問題を多々含んでおり、診療科によってはかなり恨み深い存在になっています。耳鼻咽喉科の医師などではとくにじゃないかと思います。算定条件の問題も大切ですが、算定が一般的に可能な診療科でも問題が多々あります。中医協ではその点を取り上げたようで「現状」としての分析が書かれています。
- 外来管理加算は、一定の処置や検査等を必要としない患者に対して、懇切丁寧な説明や計画的な医学管理等といった医療行為を行うことを包括的に評価したものであり、一定の処置や検査等を実施せずに計画的な医学管理を行った場合に算定できることとされている。
- このため、点数が個別に評価されている処置を実施した場合よりも、それらを実施しないで外来管理加算を算定した場合の方が高い点数となることがあるとの指摘がある(参考資料1〜3頁)。
- また、受診した患者にとって、目に見える処置などをするよりも、しない方の自己負担額が高くなり、患者にとって分かりにくいとの指摘もある。
問題としているのは
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ある範囲の検査処置を行った場合には外来管理加算が算定できず、結果として治療費が安くなる
こういう現象はこの資料で指摘している通り、
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目に見える処置などをするよりも、しない方の自己負担額が高くなり、患者にとって分かりにくい
「目に見える処置」を行った方が高くなるのはある意味常識です。これは医療だけではなく他の職種でも同様かと思います。ましてや「目に見える処置」を行った方が廉くなるとなれば、「目に見える処置」を行なわなかった日の方が高くなれば不信感が生まれます。もっともそういう風に設定したのは中医協及び厚労省なんですが、
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高い点数となることがあるとの指摘がある
それでも解消しようという姿勢は評価しても良いのですが、解消するとなると誰でも考えるのは
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「目に見える処置」のある日の方が治療費が高くなる
患者にとって分かりやすい診療報酬体系とするためにも、患者への懇切丁寧な説明や計画的な医学管理等に要する時間の目安を設けてはどうか。
まず医科診療報酬点数表の原文には「計画的な医学管理」とは記載されていますが、「懇切丁寧な説明」はどこにもありません。これは上記した通りです。もっとも外来管理加算が設定された当時には趣旨の中に含まれていたかもしれませんが、現在はありません。その明記されていない「懇切丁寧な説明」を古証文のように引っ張り出してきて、
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患者の不信は長時間の説明で解消させる
一体どれほどの時間を考えているのでしょうか。仮に10分とされただけで診療所は悲鳴をあげますし、病院でも外来は大混乱となります。10分となれば1時間に診察できる人数は6人となります。それ以上診察すれば「目安の時間に足りていない」と査定される可能性が出てきます。診療所の1日の診察時間は6時間から7時間ぐらいが多いと考えますが、そうなれば1日の上限が36から42人となります。診療科によりますが、それだけで倒産します。
小児科でも1日100人を診察しておられる医師がおられます。100人診察しようと思えば27.8時間必要です。1日じゃ到底足りなくなります。病院でも午前中に50人程度はいくらでもおられると思いますが、8時間以上は必要となります。日本中の医療機関が瞬時に麻痺します。
そんなに医療を叩き潰したいのかとつくづく思います。