今春の診療報酬改定で物議を醸した地域医療貢献加算ですが、5/11付m3.comによると多くの診療所が申請されている事が確認できます。正直なところかなり驚かされました。
リンク先が開かない人のために概略だけをお伝えすると、
- 調査診療所数:6万1275施設
- 届出診療所数:1万2961施設
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北海道、茨城、栃木、福井、山梨、長野、滋賀、大阪、兵庫、福岡、長崎、沖縄
調査数に対する届出割合は2割程度ですが、これらがすべて受理されるかどうかはわかりません。私の個人的な観測ですが、余りに多いのに驚いて地域医療貢献加算の申請条件が変更されたようだからです。地域医療貢献加算の条件は24時間365日の時間外に対応できることです。もうちょっと細かく言うと、足立政務官の国会答弁では、
- 件数条件:1ヶ月の準夜加算(たぶん深夜加算も)の件数
- 金額条件:1ヶ月の準夜加算(たぶん深夜加算も)された診療報酬額
これらが必要条件ですがこれに十分条件が新たに示されています。5/6付CBニュース(Yahoo !版)からですが、
厚生労働省がこのほど全国の地方厚生局などに事務連絡した「疑義解釈資料その3」によると、再診料が包括される小児科外来診療料や在宅患者訪問診療料などを算定した場合、新設された「地域医療貢献加算」や「明細書発行体制等加算」などの再診料の加算は算定できないとしている。
補足情報として群馬県保険医協会の新点数Q&A(医科)にも、
【小児科外来診療料】
Q17 小児科外来診療料と地域医療貢献加算及び明細書発行体制等加算の併算定はできるか。
A17 小児科外来診療料に包括されているため、併算定はできない。
つまり地域医療貢献加算を申請し受理してもらうためには、
- 必要条件・・・原則として24時間365日対応
- 件数条件、金額条件を満たす
- 十分条件
- 小児科外来診療料を算定する場合は算定不可
- 在宅患者訪問診療料を算定する場合は算定不可
- 小児科外来診療料を算定する場合は算定不可
そもそも小児科診療所では3割ぐらいが初診ですから、残り7割が再診、さらにその半分弱が小児外来診察料に該当し、地域貢献加算が算定できるのは3割は言い過ぎとしても5割弱ぐらいになりそうな感じです。そんな小さな事にこだわって申請していない小児科診療所もあるかもしれませんが、経営上の問題でこだわりたい診療所は少々あてが外れたかもしれません。
もっともなんですが地域貢献医療加算でのおカネの問題は言うほど大きくありません。どうでも良い試算ですが、小児科開業医で初診が3割、小児外来診察料の再診が2割、その他の再診が5割と仮定しても、
1日外来数 | 週間外来数 | 地域医療貢献加算収入 (算定5割) |
地域医療貢献加算収入 (算定7割) |
100人 | 500人 | 7500円 | 10500円 |
75人 | 375人 | 5630円 | 7880円 |
50人 | 250人 | 3750円 | 5250円 |
小児外来診察料を算定していない小児科開業医もおられますから、1週間での5割試算と7割試算を計算してみましたが、この程度です。1日100人外来のウハクリでもおおよそ初診患者2人〜3人分程度の金額です。収入の面だけで言えば、地域医療貢献加算で収入を増やそうというより時間外診察での収入を増やそうとする側面の方が大きい事がわかって頂けるかと思います。
ですから地域医療貢献加算で収入を増やそうという面よりも、この加算を取得する事により患者負担が増える事を懸念している診療所が少なくない事も群馬県保険医協会の新点数Q&A(医科)から窺えます。
Q3 地域医療貢献加算及び明細書発行体制加算は、届け出て、なおかつ算定しないという選択は可能か。
A3 ルール上、届出を行った場合は算定することが原則とされている。
Q4 地域医療貢献加算は本当に全ての再診患者に一律に算定しなくてはいけないのか。選択不可か。
A4 届出をしてしまった場合、ルール上選択は不可。
この疑義照会をどういう診療科、どういう診療所がどれほどの数で行なわれたかはもちろん不明ですが、出るぐらいですからそれなりの数のものがあったと推測するのは可能です。またこういう疑義解釈により地域貢献加算の届出を取り止めた診療所もそれなりにあったと推測する事も可能です。
それと誰もが気になるのは診療科の構成です。これは残念ながらm3の記事には掲載されていませんでした。そうそう注目の青森ですが793施設中88施設が届出を行なっています。今日は簡単ですが報告までです。