官僚的日本語は難しい

<中医協速報>外来管理加算の見直しは来年以降に先送りより厚労省中医協資料データ不正流用疑惑についての厚労省代表の説明部分です。

原医療課長は、概ね5分としたのは丁寧な診察をするために必要な時間として出しているとし、財政の影響を検討するために時間外診療の調査データを使ったと説明。依頼状が二種類あるミスは認めたが、謝罪については、問われても言及を避けた。最後に、5分を決める議論に使っていないと再度発言した。

あくまでも保団連による要約なのでその分は差し引く必要があるにしても難解な発言です。まずこの発言には3つの部分があります。

  1. 時間内診察の診察時間算出のために「時間外診療」の調査データを使った
  2. 依頼状は2種類あることを認めた
  3. 調査データは「5分ルール」を決めるのに使ってない
分けたところで難解なのは変わらないのですが、とりあえず1.と3.は関連していると考えられます。そうなると厚労省の説明としてはまず疑惑の中医協資料は、
    「5分ルール」の検討資料であるが、決定資料でない
こういう主張を行っているようです。どうもなんですが、検討資料からタマタマ自然発生した議論の行く末が「5分ルール」であり、「5分ルール」を決定するために本来用いられた資料ではないという理屈のようです。つまり検討資料と決定には何の因果関係も無いと理解すれば良いのでしょうか、他に取りようがあればあれば是非教えてください。私のような凡庸な頭脳ではこれが精一杯の理解です。

ではでは原徳壽課長が「検討資料」を使ってどんなプレゼンをしたかを見直してみます。平成19年12月7日の中医協の診療報酬基本問題小委員会からですが、まず、

 それから、宿題事項の3番目でございます。外来管理加算でございます。前回、何もしない、何もしないと言うのは変ですけれども、要するに、処置や検査等を行わない、専ら診察・指導をやる場合に外来管理加算がとれるということになっているわけですが、これについて受診する患者の側から見ると、検査や処置をしてくれないときに高くなるのは何か腑に落ちないというような意見が従来からあったわけであります。そこで、そういう丁寧な説明や、あるいは医学管理をしっかり計画的にやってもらうということから、時間の目安を設けてはどうかということを前回御提案いたしました。

こういう前置きが中医協資料を説明する前に行なわれています。注目して欲しいのは2点でまず、

    宿題事項の3番目でございます
「宿題事項」とはこれ以前の中医協論議厚労省にデータの提出を求められたものへの回答を行なうの宣言です。宿題事項の具体的内容を示すのがもう一点で、
    時間の目安を設けてはどうかということを前回御提案いたしました。
「時間の目安」すなわち外来管理加算の時間用件についての厚労省からの提案であることを明言しています。続いて本論ですが、

 そこで、実際問題として、どれぐらいの時間が診療に当てられているかということを少し見てみました。2ページ目をごらんいただきたいと思います。「内科診療所における医師一人あたりの、患者一人あたり平均診療時間の分布」でございます。この時間は、1カ月間の表示をしてあります診療時間と、それからその1月間の患者さん、これの割合をとる。それから診療する医師が1人以上の場合もありますので、医師の人数で割る。そういう形でもって1人当たりの診療時間の分布を見た。そうしますと、一番右端で30分以上のところが非常に多くなっていますが、これは逆に言うと、時間を患者で割りますので、患者さんがある程度少ない診療所ということで、患者さんをしっかり診ておられるところもあるかもわかりませんけれども、患者さんを診てしばらく時間があいて患者さんが来る、こういうような場合が多く考えられます。比較的患者さんが少ないところがここに出てきますので、必ずしもストレートに診療時間とまでは言えません。ただ、左のほうに行きまして、5分とか7分とか10分とか、あるいは1分未満というところもございます。あるいは3分未満のところも少しあります。このようなところは、患者数と実際の開業時間ですので、それが延長して当然やっておられますから、現実的にどうだということはこれだけではわかるわけではありませんけれども、それにしてもやはり非常に短時間しか割けないのではないかと見られるようなところもある。そういう中で患者さんに十分な説明をしていただいているのだろうかというようなこともありますので、おおむね5分以上は普通はかけておられるだろうということから、今回は、1ページ目に戻りまして、大体5分以上の医療機関が9割ぐらいでありますので、そういうあたりを目安に、やはり時間の目安を今回設けてはどうかということを再度御提案申し上げたいと思います。

これも最後の部分に注目して欲しいのですが、

    大体5分以上の医療機関が9割ぐらいでありますので、そういうあたりを目安に、やはり時間の目安を今回設けてはどうかということを再度御提案申し上げたいと思います。
この中医協発言の理解は難しくないと思いますが、疑惑の中医協資料を使って「宿題事項」であった時間要件の提案を行なうと宣言し、さらに「5分でどうか」の「御提案」を行なっております。この中医協資料は原課長の説明によると「検討資料」ですが、その検討資料は「5分」を引き出すためだけに使われているしか私には読めません。少なくとも他の目的を説明するための資料とは逆立ちしても読めません。それとあくまでも私の見る限りですが、今春に改定された外来管理加算の時間要件に関して「診察時間」に関する資料はこれだけであったかと思われます。

原徳壽課長は中医協において「検討資料」と「決定資料」があるとの発言がなされています。そもそもなんですが、中医協に用いられた資料はそういう風に分類されているのでしょうか。資料は中医協論議への検討材料としてすべて提出されるわけであり、資料を決定に関し活用したものも、活用しなかったものも当然あります。このうち活用しなかったものも審議には用いられ、広い意味で審議決定に関係したと通常の感覚では考えます。とくに問題の資料は、この資料から「5分」の基準が提起されており、時間要件決定に大きな影響を及ぼした資料であると素直に見れば感じられます。

さらに時間要件に関しては、ここから勤務医対策と称する費用捻出に大きく関ってきます。そもそも外来管理加算の時間要件が浮上した背景には、当初厚労省サイドが目指した初診料・再診料、とくに再診料引き下げが挫折したのが引き金である事は周知の事実です。そのため原徳壽課長も、m3の医療維新インタビューで、

――「5分を診療時間の目安とする」という要件を問題視する声が多いのですが、通知に要件として明記するのでしょうか。

  そこは、なかなか難しいところですが、やはり「5分」ですね。なぜ「5分」にこだわっているか。一つには、財源の問題があります。改定時には、外来管理加算がどのくらい算定されるかを計算していますから、「5分」は崩せません。

ここまで明言しています。しかし

    調査データは「5分ルール」を決めるのに使ってない
そうなるとこれもまた一般的感覚では財源の計算にも使われていないと考えます。「5分ルール」により概算された財源は中医協論議の中核とも言える資料に基づくもののはずであり、当然の事ながら外来管理加算の時間要件の決定に「決定的」な影響を及ぼしていると考えます。これを「使っていない」と明言するならば、当然ですが問題の資料以外の別の「決定資料」に基づいて行なわれたものにならなければなりません。是非、保団連におかれましては疑惑の資料以外の財源計算に用いられた資料の開示を請求して頂きたいと思います。

冒頭で原徳壽課長の発言は難解としましたし、官僚以外の人間には本当に難解至極なんですが、無理やり整合性を取って考えれば、

  1. 疑惑の資料は「5分ルール」とまったく無関係な検討資料として用いただけ
  2. 検討資料の解説の中でタマタマ診療所の9割の平均診察時間が「5分以上」と説明しただけ
  3. 「5分以上」の発言から検討資料とまったく無関係に「5分ルール」の話が自然発生した
  4. 「5分」が検討資料と関係なく決められた後、財源計算の「決定資料」には用いた
これを昨年度の中医協での原徳壽課長の説明から即座に読み取らなければならない事になり、相当難解な日本語であると私は感じます。もちろん保団連が要約した発言であるため、本当に原徳壽課長がこういう発言をしたかは、後日に公開される公式の議事録で改めて確認させて頂きます。


もう一つの発言である、

    依頼状は2種類あることを認めた
これが「どの」2種類であるかは文面では分かりません。依頼状は現在3種類確認されています。どれも正式に配布された依頼状です。依頼内容に関しては今日はもう触れませんが、調査目的に関してそれぞれ文面も内容も異なります。こういう事態が生じた事に対し、
    謝罪については、問われても言及を避けた
まさかと思いますが、保団連が面談した時の森光課長補佐の発言のように、
    今は信頼関係がない。よって回答しない
こういう姿勢を中医協でも貫いているのでしょうか。いちおう形式上は森光課長補佐は厚労省保険部医療課を代表して発言したわけですから、首尾一貫していると言えなくも無いのですけどね。