いつもの朝令暮改

5/17付け中国新聞より、

終末期相談支援料を再検討 後期高齢者医療制度厚労省

 後期高齢者医療制度長寿医療制度)で厚生労働省は十六日、回復の見込みが難しい終末期の治療方針を患者や家族と医師らが話し合って文書にまとめた場合、医療機関に診療報酬二千円が支払われる「終末期相談支援料」について、厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会中医協)で再検討してもらうことを決めた。

 野党や難病患者団体に「延命措置の中止を強制されかねない」として廃止を求める意見もあることを考慮した。二十一日に中医協総会を開き、見直しも含め検討をあらためて委ねる。診療報酬は中医協の答申を経て四月に改定されたばかり。二カ月足らずで個別項目を再検討するのは異例だ。

 併せて、高齢者のかかりつけ担当医(主治医)としての継続的な医学管理に対し月六千円の定額報酬が支払われる「後期高齢者診療料」についても、地域の医師会で反発の声が上がっており、再検討の対象とする。

 厚労省はいずれの見直しにも否定的だが、中医協の判断によっては廃止の可能性もある。中医協は(1)健康保険組合など支払い側(2)医師会など診療側(3)学者ら公益代表―で構成、委員は二十人。

 終末期相談支援料は「在宅診療に熱心な医師らを評価しようと導入した」(厚労省)とされるが、民主党は「終末期の医療費抑制が目的」と批判。舛添要一厚労相は十五日の参院厚労委員会で「意図は善意でも、終末期医療への取り組みが後退する危険性がある。見直すべき点は調査を踏まえ改革する」と答弁した。

マルメの後期高齢者診療料の話はさておき、終末期相談支援料の見直しを注目してみます。これは生前意思確認への診療報酬で前にも一度触れましたが具体的内容として、

 医師が一般的に認められている医学的知見に基づき回復を見込むことが難しいと判断した後期高齢者について、患者の同意を得て、医師、看護師、その他関係職種が共同し、患者及びその家族等とともに、終末期における診療方針等について十分に話し合い、その内容を文書等にまとめた場合に評価する。

あからさまに言えば死期が確実な患者に対してどれほどの延命医療を施すかの確認のことです。算定要件として、

  1. 終末期における診療方針等について十分に話し合い、文書(電子媒体を含む)又は映像により記録した媒体(以下、「文書等」という。)にまとめて提供した場合に算定する
  2. 患者に対して、現在の病状、今後予想される病状の変化等について説明し、病状に基づく介護を含めた生活支援、病状が急変した場合の延命治療等の実施の希望、急変時の搬送の希望並びに希望する際は搬送先の医療機関の連絡先等終末期における診療方針について話し合い、文書等にとりまとめ提供する
  3. 入院中の患者の診療方針について、患者及び家族等と話し合いを行うことは日常の診療においても必要なことであることから、入院中の患者については、特に連続して1時間以上にわたり話し合いを行った場合に限り算定できることとする
  4. 患者の意思の決定に当たっては、「終末期医療の決定プロセスに関するガイドライン」(平成18年5月21日医政発第0521011号)及び「終末期医療に関するガイドライン」(日本医師会)等を参考とすること

かなりの手間ひまを要するのですが診療報酬は、

    後期高齢者終末期相談支援料 200点(1回に限る)
ちなみに200点とは2000円の事です。この制度に対して批判があるようで、
    野党や難病患者団体に「延命措置の中止を強制されかねない」として廃止を求める意見
こういう批判を受けて厚労省は、
    二カ月足らずで個別項目を再検討するのは異例だ。
非常に素早い対応を行なっています。

実はこの制度は今回の診療報酬改定の中で数少ない評価部分だの声が医師にはあります。理由は終末期を迎えた患者に対し、延命処置を含む治療方針を決めておくのは日常業務だからです。この制度が出来たから終末期の治療方針を予め決めるような動きが出たのではなく、以前から行なっていた業務に診療報酬が付いた事を評価していたのです。「たった2000円!」みたいな意見ももちろんありましたが、診療報酬化されることにより、より定着することに好感を持ったと言うところです。

ところが異例の早期見直しだそうです。見直しと言うのは診療報酬を「上げる」ではなく「取り消す」で間違いありません。記事を読みながら、どうしても私は悪意を感じてしまうのですが、「終末期における診療方針」を決定するのは制度を読んでもらえれば分かるとおり患者本人です。選択としてトコトンの延命を望む選択も出来ますし、一旦同意しても後日これを反故にしてやり直す事も可能です。終末期の患者の心理は微妙ですから、そういう事も含めての診療報酬です。

それと診療報酬が消滅しても、この作業は何の関係もなく必要なものとして続けられます。診療報酬から無くなったから消え去る行為ではありません。それなのに、まるで診療報酬が無くなれば消滅する行為のように書かれていると感じるのは私だけでしょうか。

記事の不勉強とか悪意とかはともかく、厚労省は本音ではこの検討を歓迎しているように思います。医療側の観測の一つに「どうせ長くは続かない」があります。これまでも似たようなケースで診療報酬を設けて推進し、拡がったところで「定着した」として報酬を突然打ち切る政策が多々ありました。もちろん打ち切っても書類仕事としてはキッチリ残ります。どうせこの制度も同じ運命だろうと見ていますが、打ち切る理由が出てくれば大喜びだと思われます。これまで通り、タダでやってくれれば医療費はそもそも不要だからです。

あえて心配すれば中医協でこの問題の扱い方がゴネで、報酬は無くなる代わりに手間は数倍なんてのは嫌ですね。