交代勤務制導入促進案だって

まずソースは12/25付YakugyoJihoからです。

 中でも注目されるのは、診療報酬上の加算項目の算定要件として、 一部の病院に「交代勤務制」の計画の検討を義務化する点だ。現在も、医師の事務作業を補助する「医療クラーク」の人件費の一部を手当てする「医師事務作業補助体制加算」など8つの加算は、勤務医の負担軽減につながる計画を策定しないと算定できない。医療機関は、負担軽減の計画の中身を

  1. 医師・看護師らの業務分担
  2. 医師に対する医療事務作業補助体制
  3. 交代勤務制導入
  4. 短時間正規雇用の医師の活用
  5. 医療機関との連携
  6. 外来縮小
― のいずれかを選択できる。

 厚生労働省は12年度改定で、小児、産科、救急などに関連する加算の算定については、3.の交代勤務制導入を「必ず検討する事項」とする方針だ。

 交代勤務制とは、夜勤明けを休みとするなど医師が交代で勤務することで長時間の連続勤務を軽減する制度。36時間連続勤務のような過重労働の防止が期待されるが、交代させられるだけの医師数の確保が前提となるため、広範囲で実施すれば「医師獲得競争」にも発展しかねない。

 そのため、交代勤務制を検討しないと算定できない加算は、そもそも一定数の医師がいることを算定要件にしている「小児入院医療管理料1,2」や「救命救急入院料」などの加算に限定する方針だ。「こうした加算を算定する病院は、通常8〜9人の医師がいると想定され、医師獲得の競争激化にはつながらない」(厚労省保険局医療課)とみている。勤務医対策は、過去数回の改定にわたって重視されてきた。前回の10年度改定でも、「医師事務作業補助体制加算」を大幅に増額したり、勤務医負担軽減の計画を策定しないと算定できない加算を増やすなどの対応をしてきた。

ま、軽いところから、

    交代勤務制とは、夜勤明けを休みとするなど医師が交代で勤務することで長時間の連続勤務を軽減する制度
記事を書いた人間はお気楽というか無知なんだろうと思っていますが、そもそも夜勤明けに勤務するとか、長時間の連続勤務が容認されている事自体が問題つうより違法です。
    36時間連続勤務のような過重労働の防止が期待
「期待」ってなんでっか?。勤務医の36時間連続勤務とは、
    通常勤務8時間 → 当直と言う名の違法夜勤16時間 → 通常勤務8時間 → さらに時間外勤務
これが基本で、この状態で翌日もごく普通に勤務する事を指します。そいでもって労基法41条3号の宿日直許可条件を遵守しても毎週1回以上、それ以上の回数のところなどゴマンとあります。なぜにこんなキチガイじみた勤務シフトが成立するかと言えば、違法夜勤時間が当直勤務と公式には見なされ、働かずに寝ているだけとされ、勤務時間に一切カウントされないからです。

軽減もクソも立派な違法労働であり、出るところに出れば一律断罪される代物です。ま、突っ込んでも今さらのお話ですから、ツッコミはこれぐらいにしておきます。



ほいじゃ本当に交代制加算なるものが中医協で検討されているか否かですが、12/7付中医協資料に確認できます。関係部分を引用しておくと、







課題と今後の方向性(医師事務作業補助者、交代勤務制)

  • 医師事務作業補助者の配置は様々な負担軽減策の中でも最も効果が大きく、より多くの医師事務補助者の配置や医師事務作業補助体制加算の届出が増加している。
  • 他方、医師事務作業補助者の配置していない医療機関の、配置しない理由として、補助者の雇用負担だけでなく、求人困難や、そもそも現体制で問題がないことをあげる医療機関もある。
  • 勤務状況の改善が必要と考える医師は全体の6割あり、増員を除くと勤務体制の見直しを上げる割合が高い。
  • 医師の8.1%が交代勤務制を行っており、負担軽減効果は高いと評価されている。特に救急医は他と比べ勤務時間は長く、当直に対する負担感は強い。
  • 勤務時間を短縮することで医療安全に関する指標に良い影響を与えるとの報告があり、当直明けの手術についてリスクが高いと考える医師の数は多い。
【今後の方向性】

  • 一定程度配置が進んだ医師事務補助者について少ない人数(100対1 75対1等)に対する評価の必要性についてどのように考えるか。
  • 医師事務補助者の配置人数に応じ、よりきめ細やかに評価することは可能か。
  • 産科、小児科、救急といった診療科に係る特定入院料(小児入院医療管理料等)や入院基本料等加算
  • (ハイリスク分娩管理加算等)は広くその算定にあたって、病院勤務医の負担の軽減及び処遇の改善を要件とする項目の対象の一つとし、交代勤務制についても負担軽減策の一つとして検討することとしてはどうか。
  • 特に勤務時間の長い救急医療については、医師の常時配置を必要とする入院料(救命救急入院料等)の算定にあたって、交代勤務制を実施していることに一定の評価を行ってはどうか。
  • 当直後の手術に対し一定の配慮を行うことを、勤務医負担軽減策の1つとして追加してはどうか。


何が驚いたかって、
    医師の8.1%が交代勤務制を行っており
たしか勤務医数は17万人ぐらいだったはずですが、8.1%と言うと1万4千人弱が交代勤務制であることになります。それだけいれば、少しは交代勤務制体験談が聞こえそうなものですが不思議なものです。なんらかの資料なり調査に基づいてのものでしょうから、嘘偽りとは思えませんが、非常に驚いたとさせて頂きます。まあ統計は様々なマジックがありますし、調査法もまた同じですから、根拠の調査やデータを御存知の方は宜しくお願いします。


それはともかく、ここでYakugyoJihoとの一致点を探しておきます。交代勤務制への加算をあげている点は当然として、

YakugyoJiho 中医協資料
厚生労働省は12年度改定で、小児、産科、救急などに関連する加算の算定については、3.の交代勤務制導入を「必ず検討する事項」とする方針だ。 産科、小児科、救急といった診療科に係る特定入院料(小児入院医療管理料等)や入院基本料等加算


若干わかりにくいのですが、とりあえず導入する予定であるのは「産科、小児科、救急」の予定であるのはわかります。でもって、これもよく読むと「加算」ではなく、交代勤務制を導入しなければ特定の加算を認めないものらしいのがわかります。つまりは減点と言う事です。具体的にどんな加算が対象になっているかですが、





YakugyoJiho 中医協資料

  • 医師の事務作業を補助する「医療クラーク」の人件費の一部を手当てする「医師事務作業補助体制加算」など8つの加算
  • 交代勤務制を検討しないと算定できない加算は、そもそも一定数の医師がいることを算定要件にしている「小児入院医療管理料1,2」や「救命救急入院料」などの加算に限定する方針
特定入院料(小児入院医療管理料等)や入院基本料等加算(ハイリスク分娩管理加算等)


YakugyoJihoの情報を信用すると、12/7の時点では入院料の加算への減点であったものが、「医師事務作業補助体制加算」など8つの加算まで含めて拡大された可能性が窺えます。



どうにも微妙すぎるお話で、交代勤務制を導入すれば単純に加算されるものであれば話はある程度簡単です。交代勤務制導入による、とくに日勤帯の戦力ダウンと加算による収入の算盤勘定になります。単純化すれば、

    日勤帯の戦力ダウンによる減収 vs 交代勤務制導入による加算収入
この比較がプラスになれば導入に前向きになります。もちろんこの比較以前に「交代制勤務を導入しない」選択もあり、導入しなくとも従来の収入は確保され支出も変わりません。経営判断としては、支出と加算収入がプラスになれば「お得だ」で導入に前向きになり、損だと後ろ向きになると言うところです。


ところが加算方式では減収分をとても補えないは確実にあります。つうかそこまでの予算などあろうはずもなく、加算方式では実効性が極端に乏しいと判断したのか、ペナルティ方式を採用しようとしているようです。ペナルティ方式なら予算はゼロで済むだけでなく、医療費節減にも効果があるとも言えます。構図としてこれも単純化すれば、

    日勤帯の戦力ダウンによる減収 or 交代勤務制導入しない事による加算分の減収
なんかドカ貧かジリ貧の選択を強いているようにしか見えません。これもドカ貧かジリ貧の二択ならまだしもなんですが、もう一つの選択枝が出てきます。
    この際やめてしまおう
産科の現状は良く知りませんが、小児科(つうより小児救急)も救急もさしての稼ぎがアテに出来る診療科ではありません。赤字で持て余し気味のところなら、ドカ貧もジリ貧でもなく無にする選択枝も十分にありえると言う事です。少々解釈が微妙ですが、
    医師の事務作業を補助する「医療クラーク」の人件費の一部を手当てする「医師事務作業補助体制加算」など8つの加算は、勤務医の負担軽減につながる計画を策定しないと算定できない
最終的にどうなるか不明ですが、「産科、小児科、救急」で交代勤務が導入できなければ他の診療科と言うか、病院全体で加算を失うのなら、そもそも無ければ加算が確保できるの算盤勘定も成立するからです。


ま、厚労省的には撤退が増えるのも計算のうちかもしれません。これも別なる大方針である集約化に寄与するからです。いずれにしても、少人数で地域医療のために歯を食いしばっている医療機関には何の恩恵はありません。負担に耐えられる大規模医療機関に交代勤務制が拡大すれば、医師の流れは自然に出来上がります。とりあえず地方の産科の減少に加速はつきますし、小児科が入院できる病院の減少にも拍車がかかるのは間違いありません。

もっとも医師の絶対数の関係から、現在存在するすべての病院で交代勤務制導入など算数的簡明さでムリですから、それはそれで良いのかもしれません。かくして目論み通り「産科、小児科、救急」は大都市に集中する事になります。そうなれば逆に人気が出てきて医師数増加に作用する可能性もあります。そりゃ、交代勤務制で大都市の大規模病院勤務が約束されるからです。

ひょっとすると、なかなかのプランなのかも知れません。ただ感触として非常に薄気味悪い感じは濃厚にあります。はてさて、どうなる事やらです。