監督は辛いよ

 東京メッツの五利一平監督は連敗続きのチームをなんとか勝たせようとして、ゲンを担いだり、プロ野球解説者の実況中継まで取り入れたりしても上手く行かず、乱れ飛ぶ監督休養報道に最後は首にコルセットを巻いて、

    クビを切れるもんなら切ってみろ!
 こう開き直っていました。またたしか広岡達郎氏だったと思いますが、コーチ時代に打順の組み方が不自然すぎると感じたそうです。この時のチームも泥沼状態でしたが広岡氏は不自然な打順の秘密を知ってしまう事になります。

 なにをしても泥沼状態から抜け出さない状況に監督は占いで打順を決めていたのです。最後は神頼みになっていたってところでしょうか。プロ野球監督はとにかく勝てば官軍だけの世界で、負けたら辞めてしまえとファンとマスコミから罵倒されるだけの商売です。

 これは選手もそうで中日の二軍監督をされている片岡氏も阪神時代は痛烈すぎるヤジに心が折られそうになったエピソードを話されていました。この年の片岡氏は日本ハムから大いなる期待を寄せられて阪神にFA移籍をされていますが、どうにもこうにも成績が低迷してしまいます。

 FAの高額移籍選手の不振はそりゃもうの批判じゃなく非難の嵐が降り注ぎます。これはどの球団だってありますが、当時の阪神となれば格別だっただろうと想像できます。とくに当時は注目度の低かった日本ハムから阪神への移籍ですからさぞかし応えたはずです。

 いくつかエピソードを紹介されていましたが、一番胸に突き刺さるどころか、突き抜けてしまったとされるのがある日の甲子園での試合だったようです。子どもの声で、

    「片岡!」
 こう呼ばれるのが耳に入ったそうです。思わず声のする方に視線を向けた片岡氏に、
    「頼むから試合に出んといてくれるか」
 話を監督に戻しますが、どこの球団のファンも望むのは優勝です。そのためにファンやっているようなものですからね。ではどこの球団のファンが一番優勝を望んでいるかです。阪神ファンと言いたいところですが、熱狂度はともかく格段の差で巨人ファンでしょう。

 巨人が残してきた成績は別格です。セリーグは1950年から始まり今年で74年目になるはずですが、その半分以上の38回も優勝しています。単純計算で2年に1回の優勝です。それだけ優勝すれば巨人ファンにしたら優勝するのは当たり前の意識になっても不思議とは言えません。

 ですから巨人ファンが巨人の監督に望むのは単に優勝じゃありません。常に優勝するだと思っています。巨人の監督に苦節何年は存在せず、就任即優勝どころか無限連覇のはずです。ここでなんですが原現監督も通算で17年目のシーズンに臨まれていますが、そのうち9回の優勝をされています。

 阪神なら17年間で9回も優勝させたら神さえも超える存在になりそうものです。言いたくないですがセリーグでの阪神の優勝は全部で5回しかありません。

 優勝監督の名前ぐらい阪神ファンならすぐに並べられると思います。藤本定義、吉田義男、星野仙一、岡田彰布ですが、そのうち2回優勝させたのは藤本定義だけです。それでもあの阪神を優勝に導いた名監督として記憶にしっかり刻まれ敬意を払われています。

 それに比べると原監督の今後の評価はどうなるのかは興味はあります。監督時代の末期はどの監督も酷評されるものですが、監督退任後に再評価されます。原監督もそうなるはずですが、とにかくあの巨人の監督ですから1回や2回優勝させただけで手放しぐらいに褒められる阪神と同じではないかもしれません。

 監督とは辛いものです。