出席停止期間の改訂

学校保健安全法施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)として出ているのですが、第1種については置いておきます。第1種なんて発生しただけで大騒ぎになりますから、とりあえず日常診療にはあまり関係しません。


第2種

改訂前と改訂後に比較表を作ってみます。

疾患 改訂前 改訂後
結核 病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで 病状により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで
インフルエンザ 解熱した後二日を経過するまで 発症した後5日を経過し,かつ,解熱した後2日(幼児にあっては,3日)を経過するまで
百日咳 特有の咳が消失するまで 特有の咳が消失するまで又は5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで
麻疹 解熱した後三日を経過するまで 解熱後3日を経過するまで
流行性耳下腺炎 耳下腺の腫脹が消失するまで 耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで
風疹 発疹が消失するまで 発疹が消失するまで
水痘 すべての発疹が痂皮化するまで すべての発疹が痂皮化するまで
咽頭結膜熱 主要症状が消退した後二日を経過するまで 主要症状が消退した後二日を経過するまで
髄膜炎菌性髄膜炎 従来は指定なし 病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めるまで。


黄色の背景を入れたところが今回の改訂部分です。インフルエンザは発熱から5日間も注意ですが、幼児であれば解熱後3日になっているのは注意しておく必要がありそうです。幼稚園児や保育園児では出席停止期間が長くなる可能性があります。

百日咳も注意が必要で、どちらかの条件を満たせば良いとなっています。

  • 特有の咳が消失するまで
  • 5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで
つう事は5日間の適正な抗菌性物質製剤さえ投与すれば、特有の咳が残っていても登校可能とも解釈は出来ます。ちょっと難解なのは流行性耳下腺炎で、
    必要条件:耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過
    十分条件:全身状態が良好になるまで
この2つの条件を満たせば良いとなっており、従来の腫脹の有無は関係なくなっています。腫れがある程度残っていても5日間が経過し、全身状態が良好ならば通学・通園は可能と言う事です。髄膜炎菌性髄膜炎は必ず入院治療になると考えるのが妥当ですから、新たに加わっているぐらいで宜しいかと思います。


これらの出席停止期間は、

病状によりにより学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときは、この限りでありません。

こうはなっていますが、現実的には条文にある出席停止期間を目安にしますから、小児医療に携わるものならしっかり覚えておく必要があります。


第3種

第3種とは

コレラ、細菌性赤痢腸管出血性大腸菌感染症、腸チフス、パラチフス流行性角結膜炎、急性出血性結膜炎その他の感染症

コレラ?、細菌性赤痢??、腸チフス???、パラチフス???? 第3種だったっけ。Webで確認できる学校保健安全法施行規則18条3項にはそう書いてあります。私の覚え違いかと思って調べて見たら、博多インフェクションコントロールフォーラムの学校において予防すべき伝染病及び出席停止期間の基準(福岡県医師会作成)には第1種として、

エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、急性灰白髄炎コレラ、細菌性赤痢ジフテリア、腸チフス、パラチフス

ただしこれらは平成11年6月に作成されたとなっており、その後の改正により第1種は、

エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱、痘そう、南米出血熱、ペスト、マールブルグ病、ラッサ熱、急性灰白髄炎ジフテリア重症急性呼吸器症候群(病原体がコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)及び鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであつてその血清亜型がH五N一であるものに限る。次号及び第十九条第一項第二号イにおいて「鳥インフルエンザ(H五N一)」という。)

こうなりかつては第1種であったコレラ、細菌性赤痢、腸チフス、パラチフスが第3種に変わっているようです。小児科医でありながら勉強不足に恥じ入るばかりです。知識のアップデートは油断するとすぐにおいてけぼりにされます。実地ではどれも実際に見た事のない疾患ばかりで、私も油断していました。


学校保健安全法施行規則19条4号の運用問題

条文を示します。

第一種若しくは第二種の感染症患者のある家に居住する者又はこれらの感染症にかかつている疑いがある者については、予防処置の施行の状況その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで。

1種はとりあえず置いておきます。もちろんあの新型インフルエンザの時には問題になったのですが、話が煩雑になるのであえて置いておきます。2種の感染症は上記した通りなのですが、そういう2種感染症患者が家庭内に発生すれば、その兄弟姉妹も出席停止なるです。ここも既感染で免疫が出来ていれば出席停止にならないでしょうが、未感染であれば出席停止になるです。

たとえば家族内に季節性インフルエンザ患者が発生すれば兄弟姉妹も出席停止になるです。また2種には水痘や流行性耳下腺炎も含まれています。これらは潜伏期が2週間程度ありますが、この間も出席停止になるかです。条文を杓子定規に解釈すればそうなります。また「感染症にかかつている疑いがある者」の解釈もクラスで患者が発生すれば該当しそうな気がします。

これの取扱いは頭を悩ましているのですが、皆様はどう扱われておられるのでしょうか。とりあえず、

    予防処置の施行の状況
ここも平たく言えば予防接種を行っている者は予防処置が出来ている見ても良いとは思いますが、未感染で予防接種もされていないのなら兄弟姉妹は根こそぎの出席停止にするのが妥当になります。インフルエンザなら潜伏期間が比較的短いのでまだ影響は少ないですが、水痘や流行性耳下腺炎は長いので困るところです。ただ学校保健安全法19条には、

校長は、感染症にかかつており、かかつている疑いがあり、又はかかるおそれのある児童生徒等があるときは、政令で定めるところにより、出席を停止させることができる。

ここも読みようなんですが、出席停止はあくまでも「させることができる」であり、出席停止を命じるのは校長です。患者の状態は3つに定義分けされ、

  1. かかつており
  2. かかつている疑いがあり
  3. かかるおそれのある
この3つの状態でどの程度の範囲で出席停止にするかは校長判断と言えなくもありません。医師としては受診した「かかっており」の患者の診断・治療を行うまでがお仕事で、その患者を出席停止にするかどうかはもちろんの事、「かかつている疑いがあり」「かかるおそれのある」も出席停止にする判断を下すのは校長とも解釈できます。

医師としては「かかつている疑いがあり」「かかるおそれのある」で出席停止の判断が行われた児童生徒に対して、学校保健安全法施行規則19条4号に基づいて「感染のおそれがないと認めるまで」の部分での関与で良いぐらいに私は考えています。これで良いはずなんですが、解釈違いをしているようならアドバイス下さい。