日曜閑話52

今日は歴史閑話ではなくて中学の同窓会です。あえてサブタイトルをつければ「甘酸っぱくて、ほろ苦い思い出」です。正月にあった高校の同窓会は屁理屈を捏ねて欠席したのですが、中学の方は痛む右足を引きずってイソイソと出席してきました。こっちの方は気が向いたです。現金なものですが良い事にします。

会場に到着すると懐かしい顔、顔、顔と言いたいところですが、30年以上にもなる歳月の壁は厚く、顔を見ても判らないだけではなく、名前を見ても「あんたは誰だ?」状態であった事は白状しておきます。さすがに小中が同じ連中は頑張ればかなり思い出すことが出来ましたが、中学だけ同じだった連中はかなり忘れていました。最悪なのは向こうが思い出していて私が思いだせないケースで、本当に申し訳なかったと思っています。


思い出せないといえば恩師もそうで、ここにも30年以上の歳月が流れています。ただ教師と言う職業は教え子を忘れないと良く言われますが、恩師サイドはかなり覚えておられる事に驚かされました。歓談の時に、2年の担任恩師から「あんたが来ていたのは見えた」と言われ腰を抜かしそうになったものです。私の記憶の中では目立たない無難な優等生タイプで過ごしたはずのなのですが、どうやらそうとは言い切れなかったようです。

2年の担任恩師は当時28歳であったらしく、なおかつバリバリの体育教師でした。時代が時代であり、さらにキャラもあって、頭ごなしの精神論をパワーでゴリ押しするタイプと言えば想像できるでしょうか。私が覚えているのはそれぐらいなのですが、たまたま隣席にいた副委員長(当時の慣例で女性)が、

    「そうそう、良く職員室に呼び出されて説教された」
副委員長になるぐらいですから、彼女もそれなりに優等生タイプだった(はず)なのですが、これは初耳で「私は1回もない」と口を挟んだのが失敗でした。恩師と副委員長からのツッコミが同時に入って、
    「あんたのはそういうレベルでない!」
そこからいかに扱い難い生徒であったのかの暴露話のオンパレードになり、そこに3年の担任恩師まで加わって、袋叩き状態になってしまいした。私はすっかり忘れていたのですが、聞かされれば聞かされるほど「なんちゅう小生意気なガキだ」と感心させられました。そりゃ覚えているだろうです。私が抱いていた目立たない無難な優等生イメージは私が勝手に作り上げていたものだったようです。参ったな。。。



恩師二人と副委員長の集中砲火からなんとか逃げ出して、ホッと一息と思ったら、今回の同窓会で最大の爆弾が炸裂しました。こちらは中高同じだった旧友です。つうても私の記憶の中では単に同級生であった事がある程度です。この旧友も高校卒業以来の再会のはずですが近況報告や挨拶も抜きで、

    「○○さんが来てなくて残念やね」
ちなみにこの旧友も女性なんですが、意外な名前を持ち出されて少なからず動揺しました。「○○さん」は小中高が同じでしたから、あえて言えば共通の知人の名前として持ち出したぐらいと思おうとはしました。私の記憶が確かならば高3は同級生だったはずです。当時の理系クラスの女子生徒なんて5人ぐらいですから、不自然さは感じましたが30年ぶり以上の再会ですから話題の切り口ぐらいだろうと言うところです。

それぐらいに解釈して、軽く相槌を打って受け流そうとしたら爆弾が飛んできました。

    「好きやったもんね」
思わず椅子から転げ落ちそうになりました。動揺を隠し切れないまま、なんとかお茶を濁そうと言葉を探している間にトドメが来ます。
    「有名やったもん」
一気に酔いが全身に回った感じになりました。鏡があれば面白かったでしょうが、おそらく顔色が赤くなったり青くなったりの醜態を示していたと思います。何故にこの旧友は私の秘事中の秘事を知っているのだです。

旧友が指摘した事実(除く「有名」)にウソ偽りは無く、「○○さん」は中高を通しての私のマドンナです。マドンナの名誉のために書いておかなければなりませんが、関係は私のひたすらの片想いで、手を握った事もフォークダンスの時ぐらいしかありません。だいたい話をした事自体すら少なく、デートをするみたいな恋愛関係には海王星ぐらいの距離がありました。憧れていた時間こそ長いですが、実質的には何もなかった関係が「有名」だとはまさに驚愕の世界でした。

自慢じゃありませんが、中高を通して「もてた」なんて経験は一度たりともなく、従って彼女なんてものは存在する余地すらない悲しい時代です。この日に会った旧友も含めてクラスメート以上の親しさがあった女性など存在せず、どっちかと言うとクラスメート以下の関係しかなかったので、頭の中は「どうして、どうして」の謎が駆け巡る次第になったわけです。


同窓会当日は衝撃の爆弾話に動揺してしまい、えらい悪酔いしてしまったのですが、少しだけ冷静にあの時の状況を再分析してみます。30年以上経った時効のお話とは言え、あの旧友がマドンナが出席していても爆弾を落としたかです。まずそれはないと考えます。そりゃ、二次会、三次会と重ねて、積もる話の末(その時にはマドンナがいなくなっている状態)ならあるかもしれませんが、開口一番はありえないです。

そうなると私に話しかける前にマドンナの欠席を確認していたになります。マドンナの不在を確認した上で、私に爆弾を落としに来た事になります。なんのためにがサッパリわからないのですが、実はこの旧友との会話はこれだけなんです。後は正月の高校の同窓会を欠席した話が添え物ぐらいにあっただけで、ものの数分で誰かに話しかけられて去って行き、その後はついに顔を会わせる事もありませんでした。

そうなると旧友はわざわざ爆弾を落とすためだけに私を見つけ、ピンポイントでヒットさせ颯爽と去って行ったになってしまいます。


う〜ん、やっぱり訳わからん。私が覚えている限り旧友はその手の話に無縁の優等生タイプだったはずです。どちらかと言わなくとも堅いタイプで、浮ついた話を口にするなんて想像もつきません。歳月が人を変えたはありえますが、マドンナへの秘めたる想いの話自体がやっぱり30年以上も前の話です。つまり当時にこの話をどこかから聞きつけていたと考えざるを得ません。

それと旧友が言った「有名」は少々疑問です。当時から断続的ですが交友の続いている女性が2人います。交友と言っても結果的な仕事がらみなんですが、この2人は「知らなかった」と確認した事があります。だが旧友と言うか、旧友が属していたグループでは公然の秘密であったです。では旧友とマドンナが同じグループであったかですが、これがまたサッパリ思い出せません。

つうか同じグループでは爆弾を落とさないでしょう。マドンナもまた物静かな優等生タイプで、私の話はともかく浮いた噂なんて聞いた事もなく、そういう噂が出る余地もないぐらいのタイプです。旧友とマドンナがそんな話で盛り上がっている光景を想像するのが大変難しいです。

    男は初恋をあきらめる事ができず、女は最後の恋をあきらめる事ができない
こんな言葉がありますが、旧友の投げつけた爆弾のせいで、時の彼方に封印されていた記憶が甦ってしまいました。マドンナは私の事をどう思っていたのだろうです。聞いて見たいと思う反面、ここまで来たら永遠の謎の方が良いような気がします。そりゃ「迷惑だった」なんて言われたら、数少ない青春の思い出が失われてしまいます。

さてこの話もまた封印作業に取り掛かることにします。それでも数日ですが、過ぎ去りし遠い日の記憶を呼び覚まし、甘酸っぱい記憶の小道を歩かせてくれた事を旧友に感謝するべきかもしれません。ただ甘酸っぱいのは甘酸っぱいのですが、片想いで終わった恋はほろ苦いのも辛いところです。あの頃は若かったなぁ・・・・・。