トンデモ医療への常識的反応

私の旧友。医療系とは無縁の売れないアート系の仕事をされています。私はこれでも医師なので、会えば自然に医療の話も出てくるのですが、たまたまですがトンデモ系の医療のお話になりました。もっともいきなりそこになったわけではなく、漢方の話からの四方山の末です。そういう分野については、それなりに知識があるのでお相手した次第です。

旧友が抱いていたトンデモ系医療へのイメージは、そうですねぇ、漠然と「未知の分野」と言うぐらいのところでしょうか。現代医療で手が及ばない治療の可能性が秘められているところぐらいの感じです。間違いとも言い切れないのですが、そう素直に思い込んでもらっても困るので、ちと本腰を入れて説明させて頂きました。

説明しやすかったのは旧友が欧州古来の波動について怪しいながらも知識を持っていたことです。波動の漠然たる概念も知らないと説明が厄介になるのですが、ここを知っていたのは良い取っ掛かりになりました。とりあえずアルバート・エイブラハムスのラジオニクスの説明です。これがエイブラハムスの死後、FDAでも否定され、治療装置であるオシロクラストも怪しげなブラックボックスであった事実の話です。

    ほんじゃ、否定されたの?
そう聞きたくなるのはわかりますが、「信奉者の系譜は今も続いている」で話を続けました。現在の日本でも波動医学協会なるものがあり、オシロクラスト類似の装置は今なお作られ、販売されているです。さらにその波動医学協会自体が装置を検証したところ、センサーと測定装置に回路的なつながりがないとまで自ら公表していると話しました。当然次に出てくる反応は、
    ほんじゃ、否定されたの?
そう反応したくなるのはわかりますが、信奉者は否定していないと説明すると旧友は「???」状態になってしまったと言うところです。「一体なんなの?」ってところでしょうか。さらにこれが水伝とかEMの基本理論になっていると言えば、
    インチキちゃうん!
でも信じている人間が多数いる点を指摘すると、「どっかの新興宗教みたいやな」ってところです。ついでですから、もう一つのトンデモ源流であるソマチッド理論も解説するとまさしく目をシロクロさせていました。そんなものをまともに信じられている世界が信じられないぐらいのところでしょうか。


旧友がそういうトンデモ系の知識が薄そうなので、ひょっとしたらと思って「ホメパチもそうだ」と説明したらまさしく「え〜・・・・」てな感じでした。どうも旧友はホメパチは別と思っていたようです。しかたがないのでホメパチの基本原理である「振る」と「希釈」を説明し、効果は原液を薄めるほど「なぜか」強くなるのがホメパチであるの初歩的なお話をしました。

その上でどれほど薄めるのかの例として、フランスのホメパチ製薬会社が販売しているインフルンエンザ治療薬「オシロコシナム」を挙げ、希釈率は「宇宙に一滴」としたところで唖然と言うところでしょうか。もちろんラジオニクス理論との関係も説明しています。




たまたま出た話題だったので、私の説明も十分でない部分はあったとは思いますが、旧友はトンデモ医療のキモは理解してくれたようです。ブッ飛んだ理論の上に構築されている実態不明の怪しげなものであるです。旧友が鋭かったのは、では何故にそんな怪しげなものを人は信じ、はびこるのかを聞いてきた事です。これについては人は神秘に憧れるぐらいしか答えようがありませんでした。

人智を超える現象に遭遇した時、人はそこに超常的な何かを感じ畏怖する性質を持っているのだろうです。古代であれば自然現象である嵐や落雷、日照りや洪水なんかもそうだったと思います。多くの古代宗教は人智では制御できないものに神の力を感じて出来たと思っています。古代宗教も科学の一種なのですが、そういう超常的な現象を神の力として理論付けていたと考えています。

ルネッサンス以来の近代とは、神の力で理論が終っていたのを現代科学で説明してきた歴史だとも思っています。今や日常生活で目にする自然現象などは現代科学で説明できる時代になりました。理論そのものは知らなくとも、理論で全部説明できるのは誰もが知っているです。私も使っているPCにしても、中世やさらに古代となれば神秘の存在でしょうが、現代でPCに神秘を感じる人間はいないと思います。

医療も現代科学ですが、医療には未解明部分が多々あります。端的には治療できない病気はゴマンとあります。病気も生死に関ることがあり、その時に現代医学では対処できない時に人は神秘に傾きやすくなると思っています。何か未知の神秘的パワーによって、不治の病が治らないだろうかです。


トンデモ医療であっても理論はあります。ラジオニクスであり、さらにその大元の波動であり、またソマチッドもそうです。これらは現代科学で説明できないというより、まさに噴飯物の代物ですが、とりあえず深遠そうに見える理論です。しかし私はごく一部を除いて、トンデモ医療の信者も理論自体は理解していないと思っています。

いや理解と言う言葉は相応しくないようにも思っています。そういう世界では理論は理解するものでなく「信じる」ものだと考えます。古代宗教で神の力の原理は説明不要の絶対であるのと同様に、トンデモ医療の理論も理解不要の絶対の教義として覚えるものになっているのだと思っています。理解してしまう事は神秘のベールが薄れてしまうです。

あくまでも神秘は神秘であって、神秘をそのまま信じる事がトンデモ医療の本質と理解しています。現実に現代医学でも治せない病気があるのは事実ですから、それに遭遇した人々は神秘に最後の救いを求めてしまうです。もしトンデモ医療に存在価値があるとすれば、そういう点だろうぐらいには思っています。

そういう意味で棲み分けは必ずしも不可能ではない部分はあると思ってはいるのですが、トンデモ医療主宰者も商売を行われています。どんな商売であっても規模拡大の誘惑は不可避です。トンデモ医療主宰者は、現代医学の残りカスでは満足できないようです。ここで今以上に商売を広げるなら、現代医学のテリトリーを食い荒らす必要があります。食い荒らすためには現代医学を否定し、トンデモ医療に「代替」していくのが求められます。


実際はこんなに詳しくは話してはいませんが、代替医療とは現代医学の補完を目指しているのではなく、現代医学のある部分の置き換え(代替)を目指しているのが現実と説明させて頂きました。付け加えるならば、置き換え(代替)も可能な限り大きな部分を欲しています。まあ、究極目標は内科全般でしょうか。置き換え(代替)部分が大きくなるほど代替療法が商売として栄えるです。旧友は

    なるほど、そんなトンデモ商売なんだ!
とりあえずは納得してくれたので良い正月でした。あんまりリアルでの説明とか議論は得意とは言えないのですが、旧友が常識人であった事に乾杯です。まあまあ、普通は波動理論なり、ラジオニクス理論なり、ソマチッド理論を真面目に聞いて「そりゃ凄い!」と思わない・・・はずなんですけどねぇ。