これは9/4に受信した神戸市保健所長からの平成21年9月1日付神保健予730号の表題が、
こうなっていますのでタイトル名にしたのですが、何がどうなっているのか内容を読んでも良く分からないので、調査確認しながらエントリーにします。まずなんですが、国は、平成21年8月25日付で感染症法の施行規則を改正し、発生届を不要とするとともにクラスターサーベイランスにおけるPCR検査も不要としました。今後は、抗原性、薬剤耐性を調べるウイルスサーベイランスや重症化や性状の変化を把握する入院サーベイランスを強化するとしています。
ここだけ読むと監視体制を
こうしたと読めます。何がどう違うんだになるんですが、その前に改正された感染症法施行規則を確認してみます。感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成21年8月25日厚生労働省令第136号)だと思うのですが新旧対照表があるので較べてみます。改正されたのは第三条及び附則の様で、まず第三条3号が削除されています。削除された内容は、
診断した新型インフルエンザ等感染症(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH1N1であるものに限る。)の患者又は無症状病原体保有者について、当該患者又は無症状病原体保有者が通い、又は入所、入居若しくは入院している施設において、当該感染症の患者(法第八条第二項の規定により患者と見なされる者を除く。)が確認されている旨の連絡その他当該感染症が集団的に発生しているおそれがある旨の連絡を保健所長から受けた場合(書面(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することのとのできない方式で作られる記録を含む。以下この号において同じ。)で連絡が行なわれた場合であって、かつ、当該書面に定める期間内に診断された場合に限る。)に該当しない場合。
この第三条とはそもそも何の規定かといえば、
法第十二条第一項に規定する厚生労働省令で定める場合は次のとおりにする。
では法第十二条一項とは何ぞやになりますが、これは感染症法になり
医師は、次に掲げる者を診断したときは、厚生労働省令で定める場合を除き、第一号に掲げる者については直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を、第二号に掲げる者については七日以内にその者の年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければならない。
一 一類感染症の患者、二類感染症、三類感染症、四類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者又は無症状病原体保有者及び新感染症にかかっていると疑われる者
削除された感染症法施行規則3条3号とは届出の例外規定みたいなものと考えれば良いと思います。読むと頭痛がしそうな内容なんですが、どうやら保健所長からの書面などの指示がない場合は入院や入所中の施設からの届出は不要であったらしいぐらいに思います。とりあえずこれは削除されています。そのかわりに施行規則第三条の附則第二条の二および第二条の三が出来ています。これも「経過措置」となっていますが、
第二条の二
法第十二条第一項に規定する厚生労働省令で定める場合は、第三条各号に掲げるもののほか、当分の間、新型インフルエンザ等感染症(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH一N一であるものに限る。)の患者又は無症状病原体保有者を診断した場合とする。
第二条の三
法第十二条第六項において準用する同条第一項に規定する厚生労働省令で定める場合は、当分の間、前条に規定する感染症により死亡した者(当該感染症により死亡したと疑われる者を含む。)の死体を検案した場合とする。
う〜ん、サッパリわかりません。この新たに加えられた附則を素直に読むと、法第十二条第一項の病気が届出対象のはずなんですが、そこには、
こうなっています。附則により新型インフルエンザの定義が明確化し、-
病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH一N一であるものに限る。
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感染症法の施行規則を改正し、発生届を不要とする
それと読みながら浮かんできたごく素直な疑問ですが、感染症施行規則には新型インフルエンザを「インフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH一N一であるもの」としていますが、季節性のAソ連型との鑑別はどうなるのでしょうか。Aソ連型も「インフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH一N一」なんですが、感染症施行規則を読む限り違いを書いてありません。
なぜこの改正で届出が不要になったのか理解できませんでしたが、とにかく届出は不要になったのだけは神戸市保健所長が明記していますから、そういう方針である事だけは納得しないといけないようです。それで今後(いつまで続くか不明ですが・・・)の方針として、
- クラスターサーベイランス
- 現在実施しているクラスターサーベイランスにかかわるPCR検査は原則実施しない。
PCR検査協力医療機関(344医療機関)は、重症化するおそれの高い症例や重症化するおそれの高い社会福祉施設等で集団発生している場合に医師の判断でPCR検査を実施する。重症化するおそれの高い症例については、抗原性、薬剤耐性など性状も合わせて検査します。
- 医師は、インフルエンザ様症状を呈する患者を診察し、問診等により、当該患者に属する施設において、集団発生している疑いのある場合は、最寄の区保健所に連絡する。
- ウイルスサーベイランス
既存の定点医療機関の病原体定点を一部見直し、インフルエンザに特化した病原体定点を定め、実施する。
- 入院サーベイランス
すべての入院医療機関において、医師は、インフルエンザ様症状呈する患者であって入院を要するものを確認した場合(ただし、インフルエンザ迅速キットB型陽性である場合を除く。)、患者の検体を採取するとともに、保健所に連絡する。
- 発生届
クラスター(集団発生)であってもPCR検査は行わないとしています。行なわないという事は確定診断がつかない事になります。その上でPCR検査協力機関に要請されている
-
重症化するおそれの高い症例
*基礎疾患を有する者等
妊婦、幼児、高齢者 、慢性呼吸器疾患・慢性心疾患・代謝性疾患(糖尿病等)・腎機能障害・免疫機能不全(ステロイド全身投与等)等を有しており、治療経過や管理の状況等を勘案して医師により重症化のリスクが高いと判断される者等。
小児科では「幼児」が入ってますから、かなり多くなるような気もしないでもありませんが、どんなものなのでしょうか。
それと新型インフルエンザ対策は「国が箸の上げ下ろしまで指示する」の批評がありましたが、「社会福祉施設等で集団発生している場合」の「社会福祉施設等」も指定されており対象となる社会福祉施設等として事務連絡されていますから注意が必要です。
と、ここまで書いたところで今度は神戸市医師会新型インフルエンザ対策会議からのFaxが届きました。これは神戸市保健所からの方針を補足説明する形になっています。これも書き写しますが、
神戸市保健所長からのFaxよりは変更点がわかりやすいのですが、それでもわかりにくいところとして、
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集団発生の端緒を把握するために最初の1例のみPCR検査を実施
現実的には保健所に問合せて確認するんでしょうが、これもPCR検査協力医療機関だけが担うのか、そうでない医療機関も「怪しい」と思えばPCR検査が出来るのかも不明です。保健所と医師会ではニュアンスが若干異なりますからね。
それと「端緒を把握するために最初の1例のみ」と言っても、これからは季節性との混在が予想されますから、たまたま「端緒の1例」がA香港型であったら、以後のPCR検査はしないと言う事でしょうか。複数のタイプのインフルエンザが集団内で蔓延する事もありえますから、「端緒の1例」だけでは本当にその集団で流行しているインフルエンザが何なのかを見逃すおそれもあるような気もするのですが、どんなものでしょうか。
もう一つ、保健所の「重症化するおそれの高い症例」の位置付けがかなり異なっています。医師会のはある意味シンプルで「入院を要した重症者」であるらしいように思います。しかし保健所の方は外来でもそういう患者がいたら検査するみたいに読めますし、入院患者は明らかに別建てになっています。こういうところは下々の者として、情報の一元化を願いたいのですが、やはり無理なんでしょうね。
とにかく確認できるのは新型インフルエンザに対してのPCR検査での確認患者数は大幅に減るだろうと言う事です。ほとんどの患者は確定診断をつけずに「通常のインフルエンザ」として扱っていく方針と理解して良さそうな気もします。そういう方針は理解しますし、現実に患者が大量発生したときには、そうしないとパンクするのもわかります。
ただかなり新型の恐怖を感じてられる方が多いので、この方針にどれ程の人が納得するかにちょっと不安を感じないでもありません。不安の声が広がった時に、またブレが出てこないかを心配します。臨機応変と言うか朝令暮改に振り回されるのは最前線の現場ですから心配です。
こういう方針変更こそしっかりとアナウンスして、今のうちに周知徹底しておかないと混乱の火種になるような気がするのですが、現在のところあんまり熱心なように見えません。