統計からの診療所医師数の推移2

統計からの診療所医師数の推移の続編です。前回が第4部までだったので今回は続きとして第5部から始めます。


第5部

経年変化を追ってみます。e-statには1歳刻みの年齢分布表があります。これを利用すると同じ年齢の医師の変化を追えます。同じ年齢とは2010年度に30歳だった集団が40歳になった時の変化を追えると言う事です。これを表にして見ます。対象は診療所医師の総数ですが、1歳刻みの表ではデカ過ぎるのでエントリーでは10歳刻みにしています。

年齢 2000 2002 2004 2006 2008 2010
2000年 2010年
30-34 40-49 7189 9980 13095 16299 19506 21808
40-49 50-59 22848 25086 27183 28979 30404 31327
50-59 60-69 19223 19488 19845 20080 20291 20276
60-69 70-79 15764 15329 14798 13949 12925 11998
70- 80- 23177 19709 16479 11944 10256 7991

これをグラフにします。
凡例の年齢は2000年当時のもので、2010年にはすべて10歳プラスになっています。つまり30歳代なら40歳代に移行していると言う事です。うん、これは皆様の実感に近いんじゃないでしょうか。データを読み取っておくと、
  1. 2000年に20歳代・30歳代・40歳代(2010年には30歳代・40歳代・50歳代。以下同じ)であった医師は10年後には確実に増加。30歳代の伸びの方が強い
  2. 2000年に50歳代であった医師はほぼ横這い
  3. 2000年に60歳代であった医師は減少傾向


第6部

そうなると前回やった統計結果との乖離をどう説明するかになります。たとえばこれです。

たぶん動態と静態の違いみたいなものになるのでしょうが、実感と差を表現するのが・・・う〜ん、難しいなぁ。まず開業するのは「若い医師が増えた」の実感ですが、

2010年度の年齢階級 30歳代 40歳代 50歳代
2010年度の病院勤務医数 57741 40324 17565
2010年度までの診療所医師増加数 14619 8479 1053
病院勤務医の移行率 25.3% 21.0% 6.0%

ここで2010年度の30歳代の4人に1人が、40歳代の5人に1人が診療所医師になっている事は確認できます。2010年度の30歳代医師も40歳代医師も母集団は同一ですから、10年間の純増になり実感としては「多い」と感じるのかもしれません。それと2010年度の30歳代医師と40歳代医師で診療所医師になった者は合計で2万3098人です。2010年度の診療所医師の総数は9万9465人ですから23.1%、4人に1人弱が、200年度の30歳〜40歳代医師から診療所医師になったものになります。 もう一つの見方として、2010年度の50歳代医師の数とは、
  1. 2000年度時点で既に診療所医師になっていた40歳代医師
  2. 2010年度から40歳代医師が診療所医師になっていた者
この2つの合計になります。他の年代も同様ですが、ここで長期推移表をもう一度見てみます。
1996年度頃から50歳代医師が急増し、一方で40歳代医師は1986年から2000年にかけて増加傾向を示しています。40歳代医師はその10年前の30歳代医師の診療所医師への移行を表していると考えると、2010年度の50歳代医師の増加の原因として、
  1. 2000年度までの10年間も30歳代医師の診療所医師への移行は増え続け、2000年度頃が最近のピークである
  2. これに加えて2000年度から10年間の40歳代医師の診療所医師への移行が活発に行われた
2000年度まで10年間の30歳代医師も、2000年度から10年間の40歳代医師も母集団としては同じになります。つまり1990年度に30歳代であった医師は10年間で診療所医師に活発に移行した。この集団は2000年度に40歳代になっても診療所医師への移行ペースが高く続いた。

ここ20年間で1990年度に30歳代医師であったものが高率に診療所医師に移行した結果が2010年度の50歳代診療所医師の増加と現れ、実感として「若手・中堅」の診療医師への移行が多いと感じている。ういでに言えば、1996年度からの50歳代医師の増加はその10年前の40歳代医師の診療所医師への移行が活発になっていたことを示すです。あえてまとめれば、

  1. 1976年度頃から30歳代医師の診療所医師への移行が活発化した
  2. 1996年度頃から40歳代医師の診療所医師の移行が活発化ないし1986年からの30歳代医師の増加が反映し始めた
  3. 1990年度頃からは30歳代医師の移行は横這いから漸減となったが、2000年代になっても40歳代医師の移行は続いている
う〜ん、こんな説明でエエんかな? どうも自信が無いのですが、私ではこの程度しか説明できないのを恨めしく思いながら今日は終わりにします。