ステマとアストロターフィング

少し前と言うか去年ぐらいにツイッターに「ステマ」と言う文字を良く見かけました。使われ方からすると、あまり良い意味に使われていないのだけはわかったのですが、とりあえず「ステマ」が判らないです。判らないのも気色悪いので調べてみると「ステルスマーケティング」の略語である事がまずわかりました。恥ずかしながら「捨て魔」との関連性を考えたりしていたので調べて良かったです。

具体的にステマとはwikipediaより、

具体的には、自社に関する飲食店の口コミサイトで、否定的な意見を削除して良い意見だけを残す事により、良いイメージを与えるようにしたり、あたかも客観的な記事を装った広告や、影響力のあるブロガーが報酬を得ていることを明示せずに、第三者的な立場を偽装して、特定の企業や製品について高い評価を行うことなどがあげられる。モラルの観点からしばしば消費者団体などから非難を受けることがあり、また、「やらせ」が発覚すれば、消費者からの信用を落とすことにもつながりかねない。なお、消費者庁は、景品表示法の不当表示に抵触する可能性があるとする。

このように、ステルスマーケティングは、自身の身元や宣伝が目的であることを隠して行われるため、消費者をだます側面を持ち、また『サクラ』や『やらせ』との線引きが困難であるため、一部諸外国では法により規制されている。

なるほど「○○は使ってよかった」と本当は報酬をもらってやっているのに、あたかも第三者を装って書き込む類である事が判ります。確かにあんまり嬉しい行為ではありません。ネットで商品とかの評価を見る時にどうしても参考にしますからねぇ。

ただどこら辺が「宜しくない」と「セーフ」の境界なんだろうとは思います。wikipediaにはアメリカの規制も書かれているのですが、

商品またはサービスの「推奨者」(endorser)と、マーケッターやアドバタイザー(広告主)との間の「重大な関係」(material connections)の有無及び「金銭授受」の有無などを開示する義務を、その第255.1条(d)項及び第255.5条として新設した

カネをもらってのプロ的な書き込みはまず良くなかろうは素直に理解出来ます。ではモニター的なものはどうなんだろうと思います。試供品的なものを使っての実際の感想を書く類です。それも「有無などを開示する義務」と言う事になってくるのだと思います。

もう一つは新車の発売時にあるドライブ・インプレッションみたいなものです。あれはとりあえず自動車メーカーから試乗車が提供されます。そこは明記してあるのですが、たぶん「プラス接待」があると想像しています。ないかもしれませんが、自動車メーカーも良い試乗記を書いて欲しいはずですから、招待した試乗者に何かするだろうです。

もっともこの手の提灯記事は提灯である事が余りにもミエミエなので、ステマには該当しないのかもしれません。


さらに気になるのは「奇跡の○○食品(療法)」の類の使用者の感想です。あれはステマどころか本当にそんな感想を寄せた人物の存在さえ時に疑われますが、良いんでしょうかねぇ。考えようによってはステマ以下のレベルとも思えますし、そもそも日本ではwikipediaより、

日本においても、マーケティングの教科書に「倫理」という新しい項目が加えられるなど、企業倫理の一環として「マーケティング倫理」が意識されつつある

つまりは野放しですから法的には問題なさそうです。信じるも信じないも読んだ人の眼力次第と言うところでしょうか。




ステマがなんとなく理解できたところで、ちょっと面白い関連項目でアストロターフィングってのが目に付きました。「宇宙に芝生を敷く?」みたいな印象を持ちましたが、これもwikipediaから、

アストロターフィングとは、団体・組織が背後に隠れ、自発的な草の根運動に見せかけて行う意見主張・説得・アドボカシーの手法である

和訳として「人工芝運動」とか、「人工草の根運動」とか、「偽草の根運動」とされるとなっています。ちなみに語源となった「アストロターフ」はアメリカの人工芝の有名ブランドだそうです。では具体的には、

アストロターフィングの手法としては、一般市民を装って多量の意見書簡を送りつける方法が古典的なものである。用語の考案者であるベンツェンは、自身が経験した特定企業が背後にあると思われるこの種の書簡による働きかけを表現するために、本物の草の根運動の芝生と「アストロターフ」の比喩を用いた。電話や電子メールを使っても同様の行為が行われている。

また、第三者の名義を用い、公平な立場を装って評論をマスメディアに寄稿することで宣伝を図る行為も、アストロターフィングにあたる。この場合の第三者は、実際には宣伝をしようとする者の関連団体などであるが、関係を隠して中立的な立場を装っている

どうもこれはステマの社会運動版みたいな感じです。市民団体の運動として質問状を出したり、自らの主張を表明するのはポピュラーな手法ですが、これは前提としてその市民団体が自立していると言うのがあります。ここでその市民運動自体が、何らかの他の利害勢力の影響下にある場合が該当するようです。自立している市民団体の発言と思わせて、実は利害勢力の単なる代弁者であるみたいな状態と言えば良いでしょうか。

もう少し具体的に考えるとある事象に対し積極的な運動を行っていた市民団体が、実は裏で利害勢力とつながっているみたいな感じでしょうか。確かにあまり好ましい手法とは思えません。

ただこれも案外多い様な気がします。純粋のアストロターフィングとは言えないかもしれませんが、いかにも「第三者機関でござい」と装いながら、実は特定利害勢力とグルそのもみたいな感じです。医療界でも、集金機能評価機構としか思えないその手の団体が実在する様に思います。もちろんアストロターフィングほど露骨ではなく、もっと制度上は巧妙になっていると感じています。



ステマとアストロターフィングを紹介してみたのですが、御用委員、さらには御用委員会はどうなるんだろうと連想はつながります。実態は良く存じませんが、おそらく直接のカネの関係はないと思っています。そこまでやれば買収収賄になります。ただ直接はなくとも間接はあるように思っています。言ったら悪いですが無料奉仕で御用委員を務めるメリットが思い浮かばないからです。

電波芸者と揶揄される有識者と称される人も考えようによっては面白いところです。電波芸者である事のメリットは、

  1. 直接のギャラ
  2. メディア露出により有名人になる
  3. 有名人になる事による、講演会とか出版本の収益
とくに2.と3.は両輪みたいなところがあり、3.のメリットを享受するために、2.の地位の確保に汲々とするみたいな感じです。2.の地位を確保するためには、メディアに気に入られる有識者発言を注文に応じて作り出すことが重要となり、より素早く、よりもっともらしそうなものを当意即妙で量産するのが鍵になりそうです。

ま、電波芸者も考えれば大変な商売で、メディアの注文に即座に応じるだけでなく、飽きられない工夫も常に求められます。また前の問題の見解と180度違うコメントを求められても、矛盾無くと言うか、強引にでも辻褄を合わせてと言うか、過去は知らないと開き直っての営業姿勢が重要になります。そこまでしてもメディアはドライですから、電波芸者本人の人気が落ちたり、ジャンルが被る新たな電波芸者が出れば、その座を追われ切り捨てられます。


何かまとまりの悪い話でしたが、世の中のカラクリは単純そうで複雑、複雑そうで単純と改めて感じた次第です。