埼玉の救急の基礎数値

ソースは

そこに「救急自動車による都道府県別事故種別救急出場件数」と言うのがあります。ここにはとりあえず2000年度から2011年度までのあるのですが、出動件数は、

都道府県 2000年度 2011年度 増加
埼玉 208471件 300999件 1.44倍
全国 4182675件 5707655件 1.36倍


埼玉は人口増加地帯とは言え全国よりも件数の伸びは多く、2000年度から10万件増えています。埼玉県のデータをもう少し詳しく紹介しておくと、

年度 火災、自然災害、水難、交通事故、労働災害、運動競技、一般負傷、加害、自損行為 急病 転院搬送 医師搬送 資機材等 その他
2000 74261 115360 15519 163 155 3013 208471
2001 78648 122728 16538 100 95 3215 221324
2002 79741 131949 17878 88 92 3244 232992
2003 83050 140913 18671 57 93 3256 246040
2004 84768 148548 19341 34 102 3698 256491
2005 87046 161523 19970 74 79 3873 272565
2006 85477 159958 19927 63 101 3659 269185
2007 84677 163834 19373 59 105 3448 271496
2008 81391 157796 18825 32 95 3225 261364
2009 80750 160884 18638 50 86 3090 263498
2010 86376 178477 19979 38 81 3740 288691
2011 88608 188439 19885 42 65 3960 300999
2011-2010 14347 73079 4366 -121 -90 947 92528

2000年度から2011年度までに総件数は9万2528件増えていますが、そのうち「急病」が7万3079件を占めている事が判ります。やはり高齢化の影響でしょうか。それにしても凄い増え方です。30万件のうち医師搬送とか、資材搬送、その他(これはなんだ?)を引いても1日平均813件の救急出動が行われている事になります。急病だけでも516件になります。 搬送先は医療機関になります。搬送先の医療機関は救急告示病院・診療所に限られるわけではありませんが、夜間・休日となるとかなりの割合で運ばれる可能性が高いと思われます。その数の推移です。
年度 病院 診療所 合計
国立 公立 公的 私的 病院計
2000 3 11 8 185 207 24 231
2001 3 11 8 183 205 24 229
2002 3 11 8 179 201 27 228
2003 3 11 8 177 199 22 221
2004 3 11 8 174 196 19 215
2005 3 11 8 169 191 20 211
2006 3 11 8 162 184 16 200
2007 3 10 7 160 180 15 195
2008 3 10 7 157 177 15 192
2009 3 9 7 156 175 15 190
2010 3 9 7 155 174 14 188
2011 3 10 13 144 170 15 185

ここの2010-2011年度で急に公的病院が6ヶ所増えた理由が不明ですが、とにかく2000年度から37病院が減少しています。ここも量より集約化によると質の向上が行われたかもしれないの仮説は不可能ではありません。しかしながら埼玉医療の現状については何度か解説していますが、チト無理がありそうな気がします。素直に弱体化していると取りたいところです。一応病床分布の表だけ参考のために出しておきます。
病床数 2010 2011 増減
20〜99床 8795 7776 -1019
100〜200床 16149 16690 541
200〜299床 10638 9655 -983
300〜399床 10047 10925 878
400〜499床 6015 7441 1426
500〜599床 3221 3798 577
600〜699床 1285 1223 -62
700〜799床 1465 2966 1501
800〜899床 1684 0 -1684
900床以上 1483 2001 518

これも他の都道府県と比較しないと意味が少ないのですが、とりあえず100床未満の小病院が減っています。数で言えば28病院です。その代わり500床未満の病院が5つ、500床以上の病院が2つ増えています。この辺も埼玉の実情が分からないとなんとも論評できないところです。 医療者には常識ですが、かなりの規模の病院であっても重症患者の救急での並列治療は難しいところがあります。軽症と重症、または軽症のみであれば並列はまだしも可能ですが、弩級やましてや超弩級クラスが搬送されれば、そこで受け入れは不能となります。スーパーのレジの様に並列治療は医療戦力の関係で難しいと言って良いでしょう。とくに夜間や休日となるとさらに難しくなります。 1日800件と言えば、1時間に30件以上、2分に1件以上の救急出動があり、これが医療機関に搬送された時に主力となる(と思う)救急病院がこの程度の数でなんとかなるとは思いにくいところがあります。そうそう手間ひま惜しんだので埼玉だけのデータだけですが、埼玉が厳しいのは論議以前ですが、他だってあんまり変わらないぐらい厳しい事は念のために付け加えておきます。天国みたいな過剰都道府県は存在せず、東京でさえまだ不足だそうです。 ところで埼玉の救急医療のデータが実際のところどうなのかです。消防庁は2007年から照会回数や現場滞在時間のデータを出しています。これがどう探しても2011年分が見つからないので遺憾ながら平成22年中の救急搬送における医療機関の受入状況等実態調査の結果を参考にします。比較対照は埼玉に隣接する東京にします。理由は医師の数が対照的だからです。
    埼玉:人口10万人対142.6人(日本最低)
    東京:人口10万人対285.4人(日本最高)
東京はちょうど埼玉の2倍になるのがわかります。対象データは重症救急ですが、まずは照会回数です。これを見る時の注意は照会とは問い合わせ回数であり、照会回数1回とは1回目の問合せで搬送先が決まった事を指します。
照会回数 埼玉 東京 全国平均
1 15547 69.0 33486 70.0 82.7
2 3024 20.0 7245 21.5 13.5
3 1486 3048
4 849 6.1 1559 5.2 2.5
5 531 926
6 305 3.4 514 2.7 1.1
7 207 327
8 118 221
9 88 143
10 58 107
11 39 0.6 57 0.6 0.2
12 35 50
13 19 39
14 16 36
15 7 17
16 7 21
17 2 9
18 7 7
19 0 12
20 2 8
21以上 6 24
最大 30 42 42

う〜ん、互角ですねぇ。では現場滞在時間です。
現場滞在時間 埼玉(%) 東京(%) 全国平均(%)
30分未満 85.4 90.4 97.0
30分以上 14.6 9.6 2.5
45分以上 4.4 3.0 0.4
60分以上 1.9 1.0 0.1

これは埼玉の方が若干悪いようです。それと埼玉からは県外搬送が多いとされますが、これがなかなか良いデータがなくて救命救急センター事案ですが、
2009年度データですが4.1%しかありません。埼玉のデータが良くないのは確かですが、医師数が人口比で2倍の東京に近い成績を残していますから大健闘としても良い気がします。これ以上の改善を望むのは酷じゃないかなぁ?そうそう都道府県によって救命救急センター搬送事案の数が違うのは前に分析しましたが、これについては結局のところ「よく判らない」の結果しか出なかった事を付け加えておきます。