志木市民病院の話は続いているようです

もう触れまいと思っていたのですが、最近ネタガレが酷くて拾っておきます。志木市民病院の経営の復習なんですが、まずは病床利用率です。

みればお判りのように小児科だけは病床利用数を伸ばしていますが、他の診療科は確実に落ち込んでいます。
小児科の奮闘にも関らず(個人的にはチト悲しい)、病院全体の病床利用率は落ち込んでおり、これに連動する様に病院収入(補助金以外の分)も落ち込んでいます。それと2008年ぐらいから、支出の増大が加速度を付けています。2009年が分かりやすいのですが、それまでは収入が減れば支出も連動して減る関係にあったのが、収入に関係なく支出が著増しています。

理由は調査不足で不明なのですが、可能性として7:1看護体制のために増えた人件費によるものではないかとも言われています。7:1看護体制は打ち出の小槌みたいな収入効果が期待できると考えられていますが、病床利用率が余り低いと増えた分の人件費が重石になっているんじゃないかです。もっともこの点については推測に過ぎません。ただ傍証としては2007年から2010年の間に、

  1. 増えた支出は4億4181万3000円である
  2. 増えた支出のうち3億9509万8000円は医業費用である
  3. 増えた医業費用のうち3億3834万1000円は給与費である
人件費が増えている事だけは間違いありません。



ここまでは前にやった志木市民病院の現状の復習です。今日は本当に大雑把な情報で申し訳ないのですが、これだけ大モメした病院に志木市立市民病院改革委員会があります。この病院には2009年に市民病院再生計画(改訂版)が出来ているんですが、今回の改革委員会は今度の事態を受けたものと見ています。違っていたらゴメンナサイ。

その改革委員会では漏れ聞く話によりますと、光が丘病院を撤退した日大を誘致しようとの案が決定されたようです。これまで志木市民病院に受診していた小児患者にとっては朗報なんですが、正直なところ本当に実現するんだろうかの疑問の声は出ています。とりあえず年度末が迫ったこの時期にです。

それでも出てきている報告書は妙に重いところがあります。と言うのも参加されている委員が

氏 名 役   職
長 隆 東日本税理士法人 代表社員
林 謙治 国立保健医療科学院 院長
伊藤 雅治 社団法人全国社会保険協会連合会理事長
遠藤 誠作 北海道大学大学院公共政策学研究センター研究員
小松 秀樹 医療法人鉄蕉会 亀田総合病院副院長
関塚 永一 独立行政法人 国立病院機構埼玉病院 病院長
武藤 正樹 国際医療福祉大学大学院 教授


実に錚々たる面々だからです。とくに委員長を務められている長隆氏は非常に有名な方ですし、委員の小松秀樹氏も良く名前が知られている方です。それとこの手の委員会での委員長は単なる司会で無いのもまた周知のことです。内実は知りようもありませんが、あの長隆氏が委員長をされて出された報告書であると言う点が非常に重いと言う事です。

もちろん位置付け的には「おそらく」ですが提言だとは思います。が、ここまでの実力者が出した提言ですから、実行の裏付けがあるんじゃないかと感じるわけです。夢物語の実現不可能の方向性を示して「ハイ、サヨナラ」なんて事は決してないはずだの見方です。報告書として出して提言したのなら、採用されれば高度の蓋然性をもって実現する内容であるとの判断です。

これも内実は良く知りませんが、経営改革委員会は「夢を語る委員会」ではなく、具体的に実行可能な案を出すのが仕事であろうと考えるからです。


ここでなんですがもう1人の著名人である小松秀樹氏の、

ここには、

筆者は、第2回の委員会での議論を踏まえて、2月23日に意見書を提出し、委員会では必要な検討がなされていないこと、報告書はデータに基づかない政治決断の色彩が強いことを指摘した。この問題では、これまでに、いくつかの政治決断とその撤回があった。筆者は、報告書の内容が、外部委員が関わるべき範囲を超えていると判断し、委員を辞任した。辞任は、報告書で示された方針に、賛同も反対も意味するものではない。 

辞任は「賛同も反対も意味するものではない」と断られていますが、本気で賛同であれば辞任する必要性が乏しいわけですから、そういう風に私は受け取ります。内容についてはリンク先を読まれれば良いかと思いますが、報告書の方針自体に強い懸念を示し、その回答が改革委員会では得られなかったと読めます。

小松氏の意見は、少しでも現在の医療情勢を知っていればある意味平凡な内容です。その程度の懸念は当然出てくるわけであり、そこをクリアして初めて次に進める指摘点です。実際の議論がどうであったかまで確認していませんが、結果から見れば小松氏の指摘点に、小松氏は満足の行く回答を得ることが出来ず、そこを曖昧にしたままの報告書に賛同する事はできないとしたと見ます。だから辞任です。

小松氏の結論部分だけ引用しておくと、

  1. 迅速な判断で、日大に病院運営を依頼するとすれば、委員会ではなく、市民の負託を受けている首長、議員が決めるべきである。
  2. 日大に運営を委ねるとすれば、第三者による将来の財政負担のシミュレーションを実施して市民に提示すべきである。
  3. 廃院を含めてあらゆる選択肢について、本格的に検討するとすれば、別に時間的な余裕のある委員会を立ちあげるべきである。

この部分で注目しておきたいには、

    日大に病院運営を依頼するとすれば、委員会ではなく、市民の負託を受けている首長、議員が決めるべきである
日大誘致は改革委員会が決定するとなっています。報告書にどこを誘致すると書いても構わないと言うものの、書いたからには実現性が問われる事になります。誘致するとのは書いたものの、実際に頼みに行って袖にされたのでは報告書の意味がありません。直接には改革委員会の責任は問われないと思いますが、間接的な批判は免れえません。

どうもこの点から日大と長氏の間では既に話が出来ているんじゃないかの憶測が出ています。出ても不思議はないと思います。だって、委員会が誘致するとの報告書を出して、誘致にもし失敗したら委員長の面目丸潰れになるからです。つうか、日大を誘致できる裏付けがなければ、日大誘致の方針なんて安易に報告書に盛り込めると思えないからです。そんなに軽々しく言葉を弄ぶ人間では長氏は「絶対にない」と思っています。

そこまで委員長として推進されるのであれば、その言葉の裏付けはあると他の委員は受け取ったのではないかと推測します。ただ長氏が行っている日大との根回し工作は、ギリギリまでと言うか、正式決定になるまで表面化する事が出来ない事情があり、小松氏の指摘に対して歯切れ良い説明が出来なかったのではないかです。

それと委員会での決定にこだわったのは、日大との根回し工作が長氏の個人的信用に依っている部分が大きく、あくまでも長氏の決定推進の形にしておく必要があるのではないかとも推測します。志木市民病院の将来を決めるだけでなく、この地区の小児診療の行方を左右しかねない問題ですから、長氏もそれぐらいの準備を整えて改革委員会に臨まれたとしてもやり過ぎとは言えないでしょう。

ここで誤解無い様にお願いしたいのですが、志木市民病院のために長氏が日大との間に根回し工作を行っていても全く問題はありません。実現性が求められる会議ですし、言ったら悪いですが、小松氏の言う「首長、議員が決めるべきである」は手続き上の正論ですが、誘致相手を首長・議会が議論の末に決めたところで相手にされないと話にならないからです。

問題の本質は日大が本当に来る気があるかどうかだけで、とにもかくにも来るかどうかが焦点になるからです。言ったら悪いですが、日大が来た後の経営問題は、またその時に考えるでもそれほど差し支えありません。その時はその時で病院経営刷新委員会でも作って協議すれば良いからです。


医療問題に関する重鎮であり実力者である長隆委員長の鼎の軽重が問われる時のように感じます。楽しみに待つことにします。