へなちょこ様のツイートです。
図を見ても本文を見ても意味がわからなくて、私の頭がおかしいのかとおもったけど、やっぱり記事のほうがおかしかった。 / “神戸新聞|社会|海をダムに見立て発電 神大院教授が構想発表” http://htn.to/y9ciLp
あんまり物理は強いといえなので、得意な方のアドバイスを頂きたいのですが、2/28付神戸新聞の記事を分割しながら紹介します。とりあえず見出しは、
海をダムに見立て発電 神大院教授が構想発表
「海をダム」と言われてもイメージが湧かないのですが、一種の海流発電みたいなものとこの時点ではまず思いました。
原発事故に伴う電力不足が懸念される中、神戸大学大学院海事科学研究科の西岡俊久教授(63)が「海洋エネルギーを活用した大規模発電装置の仕組みを発明した」と発表した。海を巨大ダムに見立て、海中で水力発電を行うという独創的なアイデア。理論的には原子力をはるかに上回る発電が可能といい、国際特許を申請している。(今泉欣也)
前に産経新聞がルーブ・ゴールドバーグ・マシンもどきの装置が電力不足解決の切り札であると力説していたのより、かなりマシそうな印象を抱きます。肩書きだけで判断してはいけませんが、
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神戸大学大学院海事科学研究科の西岡俊久教授(63)
西岡教授は、破壊動力学の第一人者。物体に亀裂ができるメカニズムを解明するなどし、文部科学大臣科学技術賞、兵庫県科学賞などを受賞している。
これだけでも凄そうなんですが、西岡俊久の略歴等を見るともっと凄くて、「主な受賞・栄誉等」だけで38個を数えます。おそらくこの分野の大権威の方であると推察します。ゴメンナサイ、私は存じません。
海洋発電を考えたきっかけは、英スコットランド行政府が2008年に創設した「サルタイヤ賞」。海洋エネルギーだけを利用した革新的発電技術の開発者に賞金1000万ポンド(約12億円)を贈る賞で、西岡教授は地球の端が滝になっている「地球平面説」の絵からヒントを得たという。
ここは少々引っかかるのですが、「地球平面説」って、海の端が滝の様に落ちているものになります。まさかこの教授が地球平面説を本気で信じているとは思えませんから、あくまでも「ヒント」として発想の基になったとここは解釈します。次が基本メカニズムなんですが、
海洋発電装置は、大型船のような海上浮遊物と海中の発電機2基、海中の配管で構成される。
まず、海水が海上浮遊物に付設した配管に入り、水の勢いでタービンを回して発電。海水はその後、潜水艦のような耐圧容器に入った海中に向けて配管内を落下し、発電機のタービンを回す。電気は海底ケーブルなどから陸上に送電し、海水はモーターを使って容器外に排出する。
これについての模式図も記事に掲載されています。
ただ海には発電に必要な落差が無いので、発電機を海中に設置(吊り下げる)するようです。つまり海面と海中の落差を利用しようと言う事のようです。神戸新聞の図で一つよくわからないのは、海面の取水部でも発電を行うとなっています。う〜ん、これは落下に向かって発生する水流を利用しての発電と言う意味と解釈します。海中を通したパイプからの水流からの発電が本命の様にも思いますが、問題はパイプを落下した海水をどう処理するかです。
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海水はモーターを使って容器外に排出する
配管の素材として用いる「スペクトラ繊維」は、鉄の10倍の強度。「金属疲労が生じず、かつ軟らかいので巻いて収納できる」と西岡教授。発電量は水の流量と落下の高低差で決まり、「例えば、海中の発電機が深さ千メートルであれば原発千基分(1基分の発電量約100万キロワット)の電気を作り出すことも可能だ」と強調する。
基本的な疑問は発電量と排水モーターの電力使用量です。もちろんここは
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発電量 >>> 排水モーター電力使用量
ん、ん、ん、ちょっと待って下さい。西岡教授の1000m構想はパイプの中を水をほぼ海水を満たしている構想なのでしょうか。そうであればパイプの中にすべて海水が満たされた状態で起こる水流は、排水ポンプの排水量の分しか起こりません。海水が満たされた状態であれば、排水口に水圧がかからないのは有利ですが、その代わり排水分しか発電できる水流が起こらない事になります。
つうかパイプを海水で満たしてしまうのなら、別に海中深くにに発電機を置かなくとも、浅いところの水平状態でもあんまり変わらない様に私は思えます。
そうなるとパイプを流れる海水は自由落下に近い状態でないと意味がなさそうに感じます。地上の水力発電ではそういう形式になっています。ただ自由落下であっても流せる海水の量は排水ポンプによる排水量に限られます。地上なら近くの川なりに排水してしまえばそれで終わりですが、深さ1000mとなると排水口にかかる水圧を押しのけての排水が必要そうに思います。
あくまでも推測ですが、海面からパイプを通って発電した後の海水は海中の貯水槽なりに一旦貯める必要がありそうな気がします。そうしないと発電機が水流で動きません。発電のためにはドンドン海水を流さないといけないのですが、発電機を通った後の海水を海中発電所の外に排水しないと流すに流せなくなります。
そうなると海中発電機の律速段階はすべからく排水ポンプの排水量に依存する事になるわけです。これはかなり高性能の排水ポンプが必要そうに考えられます。この1000mの落差による発電量はよく判りませんが、発電するからには連続性も求められると思います。だって、貯水槽が一杯になった時にこれが排水されるまで発電が止まってしまうからです。
どの程度の海水が必要と計算されているか不明ですが、少なくとも毎分トン単位以上は必要そうに思います。いやもっと多くて数十トン単位、毎秒トン単位でも大げさとは思えません。これだけの海水を排出できるポンプを作動させても、発電量は十分に確保できると言う事になります。
どうも発電量と排水のためのエネルギー消費量の関係でグルグルと頭が回ってしまうのですが、少し発想を変えてみます。注目したいのは、
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海中の発電機が深さ千メートル
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発電量は水の流量と落下の高低差で決まり
ただなんですが、少量で大きなエネルギーとなれば衝撃力もまた強力ですから、これに耐えうる堅牢性のある発電機が必要になります。なんとなく研究と言うか理論のキモは、何メートルの水の落下があれば排水ポンプに費やすエネルギー量を上回るエネルギーが得られるかではないでしょうか。ここは理論研究なので、実地問題の発電機の堅牢性は仮定で済みます。
1000メートルでの発電規模は理論上では、
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原発千基分(1基分の発電量約100万キロワット)の電気を作り出すことも可能
そうなるとです。この西岡教授の理論の私の推定が正しいと仮定してですが、1000メートル級1基で原発1000基分になるのなら、これをわざわざ海中に作るのではなく地上に作ったらどうだろうと思います。海中に作るとなれば、海中と言うだけで様々な技術上のハードルが高くなりますが、これが地上であればかなり建設は容易になるはずです。
問題は水ですが、たとえば黒四ダムの黒部湖は平均標高1448メートルとなっています。現在の有効落差は545.5メートルとなっていますが、これを1000メートルにするのは技術的には可能と考えます。もちろん1000メートルの落差を作るための導水路等の建設は難工事にはなるでしょうか、それさえ作れば原発問題もCO2問題も一挙に解消するなら安い費用と思います。
黒部湖の水量では原発1000基は無理でも、100基でも50基でも十分すぎるほどの価値があります。う〜ん、海に作るより現実的な気がしてきました。
そうそう、これだけの権威の教授の理論試算ですから、間違いないと言いたいところですが、私では検証・検算できません。誰か知識と興味のある方にお願いしたいと思います。