EM激動史 前編

先週の金曜のエントリーの最後の方に書いた

    個人的にはもうあんまりやりたくない話題です
これは変わらぬ本音なんですが、私の悪い癖で一度執着するとあれこれ調べたくなってしまいます。セラミックスで一点突破すれば当初の目的は果たしているのですが、やはりどうしても知見が浅い感じになっています。もう少し深いところを知っておかないと、論評するにしても上滑りの感じがどうしてもするのです。ですから食傷気味とは思いますがお付き合い下さい。


メインソース

EMについて詳しく資料を集め分析している

ここを大きく参考にさせて頂きます。つうか私のエントリーを読むよりリンク先を読んで頂いた方がむしろ良いかもしれません。私の方はダイジェスト版程度の内容に過ぎません。このブログに出会わなければEMについてこれほど知るのは難しかったとも思っています。


EMの源流

有限会社サン興産業はEM製造メーカーです。これでは紹介として不十分なので、元もとは農業用微生物資材の製造販売及び研究開発を行っていた会社のようです。農業用微生物資材とは有用微生物を農地に撒いて効果を狙うものです。サン興産業のメッセージには、

 弊社 サン興産業はEMを世に出し4分の1世紀が経ちました。当初はバイオスター、バイオスター2号、バイオライフ、バイオクリーン、バイオガーデンの名で販売されておりました。しかし品質的に安定せず、又効果にもバラつきがあり、商品というには程遠いものであったと思われます。当時同じ様に琉球大学において土壌微生物の研究をしている農学博士比嘉教授と出会い相談した事により、現在のEMの基礎が出来たと思います。

よ〜く読んで欲しいのですが、まず商品として「当初はバイオスター、バイオスター2号、バイオライフ、バイオクリーン、バイオガーデン」が発売されていたとあります。ただ製造販売はしていたものの

    品質的に安定せず、又効果にもバラつきがあり、商品というには程遠いものであったと思われます
そこで販売後の次の段階で
    当時同じ様に琉球大学において土壌微生物の研究をしている農学博士比嘉教授と出会い相談
サン興産業はアイデアとしては悪くないの思いはあったのでしょうが、販売してみると狙い通りに働いてくれず、比嘉教授に相談しに行ったです。比嘉教授は献身的に協力してくれたようで、

バイオスター、バイオスター2号、バイオライフ、バイオクリーン、バイオガーデンを安定させそれを基に色々な微生物を取り込む事により、大きく飛躍し確立された微生物資材へと生まれ変わりました。

新製品開発での産官協力として良い話です。この時に名前は「サイオン」(沖縄の農業の三大恩人の1人である蔡温の名前だそうです)に変更され、

比嘉教授の努力指導の結果、サイオン2号、3号、4号と微生物の種類、働きによっての製品分けも出来ました。

当時のサイオン2〜4号と今の製品が同じかどうか微妙な点はあるのですが現在のサン興産業製EM商品は、

商品 EM菌
サイオンEM1号 乳酸菌、酵母主体
サイオンEM2号 放線菌主体
サイオンEM3号 光合成菌主体


こうなっています。良くは知りませんがサン興産業はとても大企業と呼べるような規模とは思えませんから、社運をかけて比嘉教授との共同プロジェクトに尽力したと思われます。このサイオンが現在のEMの直系の先祖と言うかEMそのものと考えて良いかと思われます。まとめておくと、
  1. サン興産業がEMの原型であるバイオスター、バイオスター2号、バイオライフ、バイオクリーン、バイオガーデンを開発
  2. 比嘉教授がこれを改良してEMとなる
こうであったと見て良さそうです。どう見ても真面目な産官協力プロジェクトです。


仲間割れ

EMの商品開発も大変だったようですが、もっと大変だったのは、

比嘉教授も大量生産する等の手段も無く、研究で終わった可能性も考えられます。双方が運命的に出会う事によりEMが生まれ、その後色々な多くの人々に出会い、支えられ現在のEMの基が出来ました。

ここはボカして書いてありますが、比嘉教授がEMを確立した頃にはサン興産業も資金が尽きそうになっていたと解釈します。大量生産のためには新たな設備投資が必要で、それだけの企業体力がサン興産業にもともとない、もしくは尽きていたです。そこに現れたのが、

比嘉教授の紹介により自然農法を追求している世界救世救の下部団体である自然農法研究所がEMの普及に加わってきました。その事はEMにとっても、弊社にとっても大きな助けとなりました。

ここも平たく考えれば世界救世教が大きな資金協力をサン興産業に行ったと解釈します。時期は不明ですが、比嘉教授のEM研究が完成段階に近づいた頃ではないかと考えます。これまでサン興産業と比嘉教授の二人三脚で行ってきたEM研究に世界救世救が入った事でどうなったかですが、

しかし、その数年後にEMの良さを知った自然農法研究所が比嘉教授の後ろ盾によりEMを独自に製造する事になり弊社は大きな打撃を受けました

「自然農法研究所 = 世界救世教」です。また世界救世教をEM研究に呼び込んだのも比嘉教授です。さらにサン興産業と別にEM製造を行うように主導したのも比嘉教授です。サン興産業にすればコンチクショウの大打撃であったと思われます。ちなみに自然農法研究所はEM製造販売にあたり、さらにEM研究所して別離したとなっています。ここも「世界救世教 = EM研究所」としてよいでしょう。


不思議な関係

サン興産業と「比嘉教授+世界救世教」は製造販売段階で仲間割れを起しているのですが、手切れになっているわけではありません。サン興産業HPに比嘉教授とEM製造の歴史と言うのがあります。ここの関係図を良く見て欲しいのですが、サン興産業は現在でも種菌の提供を「比嘉教授+世界救世教」グループに行っております。

EMは確立段階で比嘉教授の力が大きかったのは上述した通りですが、製造販売段階になり仲間割れを起しても、「比嘉教授+世界救世教」側では種菌の製造が出来ていない傍証になると見ます。どういう関係であるのか外部からは不明ですが、考えられるのは比嘉教授はサン興産業の商品に手を加えたのは間違いありません。ただ手を加えただけでサン興産業のもともとの種菌製造は手が出せなかったです。

ここは憶測になりますが、仲間割れの時点で当初は「比嘉教授+世界救世教」側は種菌製造から製造販売まで一貫生産を目指したと見ます。その方が利益が大きいからです。ところが実際に製造してみると継続培養による安定生産が出来なかったんじゃないかです。そこでやむなく手打ちの必要が生じ、サン興産業から種菌供給を受ける関係になったです。

経営的に苦境に陥っていたサン興産業にすれば種菌提供により安定した収益を見込めることから「比嘉教授+世界救世教」側と協力関係を再び結んだです。この微妙な関係がサン興産業のメッセージ現れていると私もも見ます。それゆえに「比嘉教授+世界救世教」側に強烈な表現を出しており、これを「比嘉教授+世界救世教」側も止められないです。関係悪化で種菌提供がなくなれば「比嘉教授+世界救世教」側はたちまち行き詰るかもしれないです。

書くのが面倒なのでこの後は

  • サン興産業は「サン」
  • 「比嘉教授+世界救世教」は「EMグループ」
こうさせて頂きます。


技術問題

EMグループ側の技術の遅れは、

しかし指導技術者が居ない、修得に難しく時間が掛かる等の理由で自然農法研究所は比嘉教授へお願いし、サイオンEM2号・3号・4号を一つにした万能EM1号の開発を依頼、EM1号の誕生となりました。その後のEM研究所の指導はEM1号で全て可能との指導でありました。

ここのサイオンEM2〜4号ですが、おそらくですが元は1〜3号だった気がします。商品を2号から割り振って販売するとは思いにくいからです。もう一つ「指導技術者が居ない」はサンの販売方式は、農家なら販売相手の実態に合わせての商品使用の指導がセットであったようです。相談・販売・指導がある程度パッケージになっている感じです。

ところがEMグループはそこが出来ないので、オール・イン・ワンの商品開発に向かったようです。どうやって3種のEM製品から万能EM商品にしたかですが、

 まずEM1号で全て出来るとの根拠です。「EM1号はEM2号と3号と4号を混合し一液タイプにした。全ての菌が入っているから個別に使う必要は無い。」との事です。この事が正しい為には2号・3号・4号の菌が同等量又は適正なバランスで混合している事が前提です。しかし2号・3号・4号を混合培養するとそのバランスは崩れます。その理由は菌のエサの違い、好む環境の違い(温度・PH・その他)菌の増殖速度の違い等です。同じ様に同じ速度で同じ量では増えません。

万能EM1号は、これを読む限り3種のEM商品を一緒にして混合培養して作られたようです。サンも一時はEMグループの万能EM1号を使っていたようでしたが、

 この頃より弊社とEM研究所、比嘉教授の指導するEM研究機構とのEM技術指導の違いが出てきました。EM研究所とEM研究機構はEM1号で全て出来る2号・3号はいらない。EM1号の中に全ての菌が入っているから他は要らないとの考えです。

 弊社も一時的には比嘉教授の指導を受け、EM1号主体で普及活動をした時期もあります。しかしどうしてもEM1号のみでは過去の2号・3号・4号での結果は出せないとの結論に達しておりました。

サンは「どうも効かない」と結論し、元の3種類併用に回帰したようです。でもってその後のEMグループですが、

サン興産業 EM研究所
商品名 効果 商品名 効果
サイオンEM1号 土壌作りを主として土壌散布及び灌注で利用する EM1 土壌改良に役立ちます
サイオンEM2号 病害虫に強い作物を育てる EM2 植物体や有用な微生物の生育や増殖のために補助的な役割を果たします
サイオンEM3号 品質向上、収穫量の向上を目的として葉面散布 EM3 太陽のエネルギーを取り込んで窒素固定をする作用がある反面、反対に窒素を切り離す脱窒素作用もあります。また、炭酸同化をするかとおもえば脱炭酸作用もおこないます。さらに、硫化物を酸化したり還元したりして有害な物質を無害にする働きを有します。


同じラインナップになっていると私は読めます。さらに面白かったのはEM研究所のEM2の紹介に、

従って、以前は、十数年前はEM・2のみの散布がEM技術の全てだったのです。

 しかし、もっと早く効果を出したい、発生した病害を抑えたいとの要望が多数となり病原菌を直接抑制する微生物の収集にテーマが絞られて今日のようなEM・1とEM・3が出現したのです。

読み様なんですが現在のEM2は以前の万能EM1号だったように見えます。それ一本で押したEMグループでしたが、結局のところサンの路線に追随せざるを得なくなったように感じます。これは憶測ですが、万能EM1号路線を取った時のEMグループはひょっとして「その他のEM製品」を製造できなかった気さえします。真相は不明です。


EMの原理

ここの解説を書く前に断っておきますが、私はEMが限られた条件の中では有効性を発揮する事があると考えています。ただし万能ではないです。だから効果が出るところもあり、無効のところもあるです。ここまで調べた事でわかるのは、EMは農業資材のために開発されたものであり、農業であれば一定条件の下で有効性を見ることもあるのだろうと見ています。EMが効果が出る原理はサン側も書いております。

 先に食品加工の例を述べましたが、この分野で微生物を扱う際に重要なのは、新鮮な素材(他の微生物がいない状態)に、目的に合った微生物を先に定着させ、繁殖しやすい環境を作り、他の菌を遮断する事です。

 この原理は他の分野にも当てはまります。また、勢力を優先させてしまえば、他の菌が来ても駆逐する事ができます。

この原理は波動説よりよほど説得力があります。さらに、

 実際、畑の場合、土の1g中に約1〜10億 もの微生物がいると言われていますので、EMといえども数で圧倒できる訳ではありません。
 EMは1グラム中に多くても1億程度で、1000倍希釈で散布した場合、土壌の微生物を数的に圧倒することはできません。
 しかし、多くの微生物はいくつかの反応系を持っており、リーダー的な微生物がいると、同じような働きをする傾向があります。(このようにリーダー的な微生物に影響されるものを日和見菌と言います。)

 EMそのものが一つの生態系として機能している上に、このリーダー的な有用菌が配合されているため、日和見菌を従わせて土全体を良い状態にすることができるのです。また、EMの作りだす抗酸化物質は現場を酸化や腐敗が起こりにくい状態にします

たしかに比嘉教授も同じような主張をされていましたが、書き方一つでこれだけ変わるのかと思った次第です。医療なら腸内細菌叢のバランスの話が簡単に想起されます。消化不良症に整腸剤を投与する原理と相通じるところがあります。

 ですから、ある一定のボーダーラインを越えるところまでEM側の微生物を優位に立たせることが必要です。

 EM技術とは、このような強力な菌を共生させる技術が前提にあり、微生物による抗酸化力を活かした技術です。

サンはこの原理を研究して大元のバイオスター、バイオスター2号、バイオライフ、バイオクリーン、バイオガーデンを作り出したと見ます。農業現場の土壌はそれ以外の土壌と較べ、求められる条件が限定されます。農業において土壌の中の微生物のバランスの重要性は説明するまでもありませんし、求められる条件はほぼ同じ方向であると言うのがあります。

土壌中の微生物のバランスがいわゆる悪玉菌優位なら農業生産は期待できません。そこで農業に適切な善玉菌優位に誘導するのがEMと言う事になります。サンには申し訳ありませんが、本当にそうなるかどうかについては保留にさせて頂きますが、原理自体にさほどの飛躍性はないと見ます。少なくとも比嘉教授が主張する、

EMの機能性は、多様な抗酸化作用と非イオン化作用と触媒的にエネルギーを賦与する3次元のエネルギー転換機能に由来するものである。結果的には、超電導半導体の組み合わせで起こる光合成の原理と同じ現象が起こっており、エントロピー(秩序の乱れ)を元に戻し、秩序を強化する現象が見られる。このような現象をシントロピーと称しており、一見すると蘇生的な現象である。

エントロピーの増大のプロセスを一般的な物質で見ると、各種の劣壊(非秩序化)を伴う、フリーラジカルを一般の物質で見ると、陽イオンの増大および有害な二次元波動(有害電磁波)の増大と表裏一体のものになっている。また、有害な化学物質の汚染や放射性物質の汚染は、エントロピーの増大の極限的な側面を有するが、EMの機能性を高めると、化学物質の有害性や放射能汚染などが消失することも明らかになっている。

これより100倍理解しやすい原理です。スタートは同じはずなんですけどねぇ。


サンの批判

EM菌の培養技術はかなり難しいようです。EM研究所がサンと同じ製品をなかなか作れなかった事からもわかります。今でも同じかどうかですが、サンの説明ですが

EMは現在弊社サン興産業と弊社よりのれん分けをしたEM研究所(自農センター)と2ヶ所で製造しております。基本的には同じ技術ですが全く同じ物ではありません。

たぶんですが大きな違いは、

○ 自然培養と機械培養の違い

自然培養の利点は地元に合った強い菌が出来るが、技術に熟練が必要。

機械培養はリスクを排除し、増殖しやすい環境を作り甘やかして作る為に弱いメタボの菌になる。

サンは自然培養技術を持っているようですが、他者は機械培養になっているです。つまりサンは自然培養により種菌から作れるが、EM研究所等はそれを二次培養しているに過ぎないです。この辺の培養技術の違いは未だにEM研究所がサンから種菌を貰わざるを得ないところにも出ているかと考えられます。さて培養技術の話を先にしておいて、EM研究所のカタログに

ご家庭で手軽にEM菌を増やす方法のご紹介と言うわけです。これに対してサンは、

二次活性は一般の人では無理です。ではなぜ?・・・個々の菌のエサが違います。増殖速度が違います。適正環境が違います。その他の条件が個々の菌では違います。又、少ない菌の量では自然界にいる多くの悪玉菌に負けます。この様な厳しい条件をクリアーし各菌数、各菌叢を維持し、同じ様に作り上げる事は困難です。

二次活性の意味の取り方が甚だ微妙なところがあるのですが、次の個所はサンの比嘉教授への痛烈な皮肉のように感じています。

比嘉名誉教授の1回活性は可能の意味は菌種、バランス、その他は1回だけであればEMとしての許容範囲内だと言っている事です。2回目それ以降はEMの許容範囲外だと言っている事です。1回は好ましくは無いが効果の期待できる許容範囲内との事です。2回目以降はEMでは無いとの事で、厳密に言えば1回活性液もEMでは無く許容範囲内の液体と考えるべきです。

ここは単純にEM商品からの再培養は比嘉教授自身が効果の減衰を認めていると解釈できます。個人的にサンは比嘉教授自らの言葉を引用して比嘉教授率いるEM研究所の

    バンバン買って、バンバン増やして、バンバンばら撒け♪
これを路線を真っ向から否定しています。サンが正しいのか、比嘉教授が正しいのか、それとも両方正解、さらには両方間違いなのかは私の知るところではございません。長くなるので、続きは後編として明日にします。