医療機能評価機構が新たに手にするものはなんだろう?

1/30付m3医療維新より、

厚労省保険局医療課長の鈴木康裕氏は、「緩和ケア病棟の施設基準に限らず、第三者評価は重要だが、認定病院等に限定していることが、緩和ケア病棟の数を限定している要因になっている」と説明、結局、「認定に準じる病院」との表現を加え、「がん治療連携の拠点となる病院もしくはそれに準じる病院であること、または財団法人日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受けていることもしくはそれに準じる病院であること」という解釈に幅を持たせる表現に落ち着いた。

これだけじゃ、判り難いかもしれませんが、医療機能評価機構(機構と略します)の認定を受けて唯一現物的なメリットである、緩和ケア病棟の認定要件から外そうという議論です。これの中医協ソースは1/30付個別改定項目について(その2)にあり、pdfベースのp.6に、

緩和ケア病棟入院・料施設基準

    がん治療連携の拠点となる病院若しくはそれに準じる病院であること又は財団法人日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受けていること。→ 削除
緩和ケア診療加算・施設基準
    がん治療連携の拠点となる病院若しくはそれに準じる病院であること又は財団法人日本医療機能評価機構等が行う医療機能評価を受けていること。→ 削除

これについての反応ですが、岩田健太郎氏のツイートは、

英断と高く評価したいです

これはごく素直な反応と感じます。私の反応は、

某評価機構のこれからの巻き返しは、さぞ物凄いだろうと予想しておきます。

これはそうはホイホイと削除を受け入れないだろうです。これがrijin様になると、

終わりの始まりかも知れません。根回しもなく、こんなことが表に出るとは思いません。

rijin様に座布団一枚で、完全に一本取られた感じです。そういう事で、今日はrijin様の見解から推測を巡らしてみたいと思います。



機構と厚労省の関係は病院機能評価だけではなく産科無過失保障でも密接であると受け取るのが妥当です。つまり無断で梯子を外すような関係でないと言う事です。表に出るまでに根回しは必ず行われていると考えるのが当然です。病院機能評価自体は緩和ケア病棟の施設要件のためではなく、病院の勲章として評価を受けるところも少なくありません。

ただなんですが病院機能評価事業自体は経営としてジリ貧傾向です。一つだけグラフを示しておくと、

これをさらにジリ貧にする様な診療報酬改訂は「タダ」では受けないだろうです。ジリ貧であっても機構にとって病院評価事業は看板事業であるからです。ただなんですが経営の柱として、これからも栄えさせる事が出来そうかと言えば、これも難しいところです。選択として病院機能評価事業自体は残すが、縮小していくはあります。ま、限られた顧客を相手に看板事業として手堅く残すです。

もう一つは、緩和ケア病棟の利権を手放す代わりに、もっと適用範囲の広い施設要件に加える密約があるです。これは病院評価事業の拡大路線ですが、これからの推移を見守る必要があります。蓋を開ければバーターで焼け太りも十分にありえます。ただあんまり投網的にかけると、これもこれで問題が出てきそうな気もします。ま、少々問題があっても押しきってしまうのが厚労省ではありますが。


このバーター焼け太りですが、病院機能事業と言う枠内に留まるかどうかも考えどころです。私の見るところ厚労省の基本姿勢は機構を太らせたいです。たとえばもっと広く薄く着実に料金を徴収できる新事業を起こすと言う事もあります。それこそ厚労省のトレンディである「○○しなければ減算」で縛り上げるです。ただ病院機能評価のような高額な事業では限界があるので、保険医全体ないし保険医療機関全体に投網を被せるようなものはあるかもしれません。

そう言えば事故調案再燃の動きもあります。あれも虎視眈眈と機構が狙っている事業にも見えます。それ以前に無過失保障制度の拡大の動きも確実にあります。無過失補償制度は御存知の通り、濡れ手に粟の収益事業と化しています。産科だけであれだけの収益を上げられるのですから、対象診療科が拡大すればかつての社会保険庁も真っ青のものになるのは確実です。

他には・・・例えば総合診療医認定事業なんかもあり得るかもしれません。現在の総合医団体は悪いですが微弱です。また総合医として厚労省の「総合医 = 在宅医」路線はそのまま受け取るのは抵抗があるとは思います。一方で厚労省は、総合医を当面は在宅医療の穴埋め、将来はゲートキーパー制へと導いていきたいがあります。総合医団体がゴタゴタ言うなら総合医の管理は機構にさせようです。

延長線上で官製医局構想があります。厚労省が直接管理するのもありますが、これを機構に任せる方針なんてのもあってもおかしくありません。厚労省の直接管理にすれば、公務員にするかしないかもネックになり、公務員として縛れないと統制的な医師配置に支障を来たす怖れがあります。そこで機構に属する形にしての間接支配形態です。


一番なさそうなのは機構と厚労省の蜜月時代の終焉です。なんらかの致命的な対立から決裂が厚労省と機構の間に起こったです。可能性はゼロでない程度のもので、厚労省と機構がそこまで対立する必然性が思い浮かびません。機構は厚労省の後ろ盾があってこその存在価値に過ぎず、厚労省と袂を分かって自立できるような代物ではありません。

機構の存立は厚労省の庇護無しではありえるわけもなく、厚労省の庇護を受けている事こそが最大の利権でもありますから、最大の利権を手放す理由などどこを突付いても見当らないぐらいとすれば宜しいかと思います。それでも団体(組織)同士と言ってもベースは人と人の関係ですから、信じられないような致命的かつ感情的対立が生じる余地がゼロでない程度とすれば良いでしょうか。


緩和ケア病棟の施設要件と言う小さな利権を手放す代わりに、何を機構は手に入れるのか目を離せない展開になりそうです。それでも心の奥底に岩田健太郎氏の、

    英断と高く評価したいです
こうなって欲しい強い強い願望はあります。あんまり虚しい夢を見ても疲れるので、宝くじが当たる確率ぐらいの期待に留めておく事にします。ここも仮に現在の機構が萎んでも、新たな機構など幾らでも誕生する余地はありますから、これも考えるだけで暗くなるところです。