金曜入院・月曜退院・午前中退院は罰金の中医協ソース のさらに続編です。曜日別入院・退院の比率と平均在院日数の基礎データを再掲します。
入院曜日 | 月曜 | 火曜 | 水曜 | 木曜 | 金曜 | 土曜 | 日曜 |
入院数の比率 | 23.2% | 19.5% | 18.2% | 16.3% | 14.0% | 5.2% | 3.8% |
平均在院日数 | 15.10 | 15.24 | 15.07 | 15.41 | 18.14 | 16.86 | 15.79 |
退院曜日 | 月曜 | 火曜 | 水曜 | 木曜 | 金曜 | 土曜 | 日曜 |
退院数の比率 | 11.3% | 14.3% | 15.9% | 15.7% | 17.2% | 17.4% | 8.2% |
平均在院日数 | 17.79 | 16.91 | 15.42 | 15.07 | 15.03 | 14.89 | 15.77 |
ここから金曜入院・月曜退院を問題視した統計結果が、
分子に関しては見出しに
-
金曜入院または月曜退院症例割合ごとの平均在院日数
-
分子 = 14.0(金曜入院)+ 11.3(月曜退院)= 25.3
つまり分母は100であると言う事です。ここで「入院時イベント数 ≒ 退院時イベント数」の関係は成立しますから、曜日別の入退院比率は調査期間中に100の入院イベントがあり、その100が退院イベントした統計と見なせます。どうなるかと言うと、
25.3 ÷ 200 × 100 = 12.7(%)
25.3 ÷ 100 × 100 = 25.3(%)
お判りになられましたでしょうか。なぜにそうなるかの統計学的な理由は私如きでは殆んど理解不能ですが、グラフで使われているパーセンテージの計算式は、
-
(金曜入院イベント数 + 月曜退院イベント数)/ 総入院イベント数(≒ 総退院イベント数)× 100
分母を100にしようが200にしようが、グラフの分布自体は同じではありますが、出てくる数値での罰金(減算)基準を作るとなれば話は少々変わります。とりあえず罰金(減算)を再掲しておきますが、金曜入院・月曜退院の医系技官式統計計算で30%以上の医療機関で土日に算定された
- 一般病棟入院基本料(1555点)
- 特定機能病院入院基本料(1555点)
- 専門病院入院基本料(1555点)
- 1000点未満の処置すべて
現在の平均は金曜退院が14.0、月曜退院が11.3の合計25.3ですから、あと5.0増えれば罰金対象になると言う事です。仮に金曜入院と月曜退院に均等に振り分ければ、2.5ずつ増えれば罰金と言う事になります。
分母が200であれば、30%基準を満たすには金曜入院・月曜退院の合計が60.0になる必要があり、仮に均等に割れば30.0づつです。現在の平均が金曜入院で14.0、月曜退院で11.3ですから、そこまで偏るのは例外的なケースになるだろうです。しかし分母が100となれば現在の金曜退院・月曜入院の合計平均値が25.3ですから、ほんの5.0、2割弱ほど変動すれば「不埒な悪行三昧」としてゴッソリ減算を喰らう事になります。
実質的に現在より金曜入院や月曜退院を増やすような事があれば、かなり多くの医療機関に罰金が待っているに状態に近いと解釈できそうに思います。そういう目で見れば医系技官御謹製のグラフの見方は変わってきます。数値を表に直して見ます。
金曜入院+月曜退院 の合計 |
医療機関数 | 罰金までのライン | |
実数 | 比率 | ||
14〜16% | 2 | 0.2% | 16%増で罰金 |
16〜18% | 6 | 0.5% | 14%増で罰金 |
18〜20% | 17 | 1.4% | 12%増で罰金 |
20〜22% | 65 | 5.5% | 10%増で罰金 |
22〜24% | 223 | 19.0% | 8%増で罰金 |
24〜26% | 418 | 35.6% | 6%増で罰金 |
26〜28% | 366 | 31.2% | 4%増で罰金 |
28〜30% | 183 | 15.6% | 2%増で罰金 |
30%以上 | 110 | 9.4% | 既に罰金 |
合計 | 1173 | 100% | * |
既に全体の1割弱が罰金ラインに入っています。背景色を黄色にしたところですが、「2%」とか「4%」と言う意味をもう一度書いておくと、
- 金曜入院であれば、全入院患者の中の金曜入院患者の百分率のこと
- 月曜退院であれば、全退院患者の中の月曜退院患者の百分率のこと
- 上の2つの数字の単純合計
これも仮にですが、土日を休みにせずに365日体制でフラットに運用している病院があるとします。入退院日も仮にフラットであるとすれば、1日当たりの入院比率は14.3%、退院比率も14.3%です。金曜入院も月曜退院も同じになりますから、合計で既に28.6%です。当該医療機関はフラットに運用しようとしても、入院患者にとっては土日は意味のある曜日です。また病院からの受け皿施設も土日は意味のある曜日です。少しでも変動があれば30%を超えて罰金ラインになります。
365日フラット運用はある意味理想の医療機関になりますが、そういう運営方式でも金曜入院・月曜退院の罰金とは無縁とは言えず、下手すると近隣の金曜入院を集中的に投げつけられて、撃沈する懸念さえ生じるわけです。なんと言っても完全に独立した指標で罰則が定められているので、必然的にそうなります。
とにもかくにも「ほぼ」決定事項ですから、現在罰金ラインにある1割弱の医療機関はもちろんの事、危険ラインにある4割強の医療機関も対策に動かざるを得なくなります。最低でも半分ぐらいの医療機関が動くと考えても良い様な気がします。また地域の医療事情によりますが、とりあえずの安全圏であっても、近隣の医療機関がとくに金曜入院対策を取られれば、そこの医療機関の金曜入院分が流入してくるので警戒が必要です。
金曜入院と月曜退院ですが、対策がまだ取り安いのは月曜退院です。入院制限は空床がある時に安易に行うと、罰金とは別に社会的批判の槍玉に挙げられかねません。そこで院内で調整が取りやすい月曜退院の数をまず減らしておこうになるかと考えます。この罰金制度では「月曜退院 = 金曜入院」であり、どちらが増えようが減ろうが等価値だからです。そうなると誰でも思いつくのは、
- 火曜に退院を遅らせる
- 土曜日曜に退院を繰り上げる
土日に繰り上げるとして、もう一つの縛りが出てきます。午前中退院の罰金です。これは金曜入院・月曜退院に比べると罰金の影響はまだしも限定的ですが、それでも喰らいたくないとは思います。この午前退院も中医協資料を見る限り、退院時刻が午後であるのが条件でなく、朝食及び昼食を食べたかが判断ポイントになっています。午後退院の定義とは、
-
病院で朝食及び昼食を食べた
さて午前中退院の条件をクリアして土日に繰り上げ退院を行えば、それで一件落着かと言えばまだ問題は残ります。従来月曜まで在院するべきであった患者が早くいなくなるわけですから、空床が発生します。つまり病床利用率の低下問題が出てくるわけです。どの程度かですが、
曜日 | 入院 | 退院 | 差し引き |
月曜 | 23.2 | 11.3 | 11.9 |
火曜 | 19.5 | 14.3 | 5.2 |
水曜 | 18.2 | 15.9 | 2.3 |
木曜 | 16.3 | 15.7 | 0.6 |
金曜 | 14.0 | 17.2 | -3.2 |
土曜 | 5.2 | 17.4 | -12.2 |
日曜 | 3.8 | 8.2 | -4.4 |
平均値なのでその程度にお受け取り頂きたいのですが、おおよそ月曜の朝時点が週間の入院患者の底になります。そこから入院数が増え始めて木曜日の夜がピークとなります。そこから日曜に向かって減っていくわけです。さて日本の病院の病床利用率での損益分岐点ですが、80%ぐらいから90%を超える必要があると言うのまであります。これはあくまでも病床利用率から見てです。
ここで病床利用率のの増減は20%です。仮に90%が病床利用率としての損益分岐点でとすれば、ピークで100%、底で80%ぐらいである必要があります。ドンブリですがそこまでやってようやく90%ぐらいの病床利用率になります。ただ90%はあくまでもドンブリである上に、「損益分岐点」に過ぎません。黒字を出すには90%を超える必要があります。
増減が20%は平均ですが、損益分岐点を越えて黒字を出すには、ピークはとりあえず100%が上限(午前中退院の罰則がさらに低下の拍車になる)ですから、底を少しでも浅くする必要があると言う事です。もちろんピークに近い日を少しでも増やすのもありますが、今回で生じる問題は底対策になります。月曜退院が土日に繰り上がれば、底は必然的に深くなります。深くなった底はなんとかリカバリーしないと経営上の問題に直結します。病床利用率を上げる鍵は底を浅くするに反するからです。
そのため、予想される反応としては、
- 土日の目減り分を可能な限り救急患者で埋める
- 土日に職員を動員して定期入院を行う
- 月曜入院として底の深くなった落ち込み分を積み増しして早急にカバーする
月金対策をやって平均在院日数や病床利用率に影響が出れば怒鳴られ、月金がデッドラインになれば責任問題にも直結しそうな叱責を頂戴し、週末の労働強化や月曜入院の負担が高くなれば現場の突き上げを喰らいます。ま、平均在院日数は金曜入院と月曜退院を減らせば、間違い無く短縮すると罰金付きの医系技官式統計技術で保障されていますから、その点だけは心配不要と思って・・・いいのかなぁ?