テラヘルツ波

某所で拾ったお話なんですが、可能な限り淡々と紹介してみたいと思います。


物理学領域のテラヘルツ波

テラヘルツ波と言われても知見が殆んど(いや「まったく」)ないのですが、まずは理化学研究所テラヘルツ光研究グループより、

本研究では、これまで理研が独自に開発してきたテラヘルツ光源や新しい検出システムをさらに発展させ、より高度なテラヘルツ光利用のための基盤技術を確立するとともに、それらを利用した実用化技術開発を有機的かつ戦略的に連携させて、テラヘルツ光を基軸とする新たなフロンティアの開拓を目指します。具体的な研究内容としては、超広帯域で波長可変なパラメトリック光源の開発、他の測定手段では実現が困難な分子等の低励起状態の研究、ならびにプラスチック・ゴム・医薬品等の内部の非破壊診断法の研究開発を設定し、システム化も含めた研究開発を進めます。また、将来の実用的光源として期待される量子カスケードレーザーの開発や高分子等の分子間相互作用に関する基礎的研究も行ないます。

半分以上理解できないところがあるのですが、ある種の測定に対しテラヘルツ波は将来性と言うか実用性があるように解釈します。次は東京大学生産技術研究所 平川・野村研究室です。

 ナノメートル寸法の構造(ナノ量子系)の中では、電子の軌道や電荷、スピンなどの物理量が量子化されており、それにより様々な新しい物理現象を発現します。平川研究室では、このような“量子半導体”の中で現れる新規な物理現象を発見・解明するとともに、それらを制御することによりエレクトロニクスに新しい展開をもたらすことを目標に研究を行っております。

 その第一は、テラヘルツバイスの研究です。テラヘルツ(THz)/フェムト秒(fs)領域は、従来の半導体バイスが動作しない未開拓の周波数領域として取り残されてきましたが、近年のナノテクノロジーの進歩により実現できるようになった量子ナノ構造やパルスレーザ技術の発展により、次第にそのギャップが埋まりつつあります。我々は、“量子半導体”の新しい電子物性を用いることにより、THz/fs領域で動作する超高速デバイスや量子カスケードレーザ、超高感度THz光検出素子を開発しています。

「なるほど」と言いたいところですが、たぶんですが理化学研究所と似たような研究ぐらいに推測します。これもまた「どうも」なんですがテラヘルツ波の利用により、半導体技術の新たな領域を切り開く可能性を秘めているぐらいに解釈できそうで、後へのフリの意味もありますが、

    我々は、“量子半導体”の新しい電子物性を用いることにより
量子とか量子力学はお世辞にも詳しい分野とは言えないのですが、物体の運動を詳しく研究していくと、最後は量子(原子や分子、電子、素粒子などで良いと思います)が持つ固有の運動の影響が無視できなくなるそうです。運動は振動に通じるところがあるのですが、量子が持つ微細な振動を半導体技術に応用すれば、さらに高性能の製品が開発できるぐらいの理解で宜しいかと思います。

そういう微細な振動領域で注目されているのがテラヘルツ領域であり、テラヘルツ領域を観察・測定するのにテラヘルツ波(光)の研究開発が進められているのは確認できるとして良いかと思います。なにぶん高校レベルのニュートン力学で四苦八苦した程度の物理学的知識なので、細かい点で間違いもあるかもしれませんが、大筋としては的外れでないと考えています。詳しい方がおられましたら、訂正・解説お願いします。


このテラヘルツ波ですが実用的な発生装置が専業メーカーにより製造販売されてもいるようです。株式会社テラヘルツ研究所と言うのがあり、そこの「ごあいさつ」に、

 当社は、西澤潤一博士が1963年に創案して以来同博士グループが世界に先駆けて実現し蓄積してきたテラヘルツ技術を、産学連携により更に進展させ、その成果を事業化するために2003年12月に創業いたしました。

 2004年1月に中小創造法の認定を得てから、株式会社への組織変更、地域活性化創造技術研究開発などにより、周波数掃引が可能な広帯域・高出力・高分解能・小型のテラヘルツ信号発生装置・分光イメージング装置を開発してきました。

 製品販売の実績は、2005年9月からタンネットイメージング装置、テラヘルツ分光吸収スペクトル装置及び分光イメージング装置があり、好評を戴いております。

こういう専業メーカーが成立するぐらい研究者が多い傍証になるかと存じます。


医学への応用

テラヘルツ波の研究自体は物理学領域で至極真っ当なものであるのは御理解頂けたかと思います。ここでこのテラヘルツ波を医学に応用しようの動きもあるようです。まずは一般社団法人日本テラヘルツ協会から、

テラヘルツ波は自然界のすべての物質や生命が自分自身で放射している電磁波です。動物、植物、鉱物等の自然界のすべての物質は原子や分子で構成されています。それらの分子や原子は、自然界や宇宙のエネルギーを吸収することによって振動しています。この振動がテラヘルツ波を発生しているのです。自然界のすべての物質が放射しているテラヘルツ波のエネルギーは微弱ですが、すべての物質の性質を決定し、宇宙のすべての生命活動をコントロールしていますので、生命光線といわれています。一方、従来から良く知られている遠赤外線は、透過性と浸透性はありません。しかし物質や生体の表面で少し吸収性されて、物質の温度を上昇させたり、植物の成長を促進させたりしますので、成長光線といわれています。遠赤外線は物質の内部の加熱や省エネ等に利用されています。遠赤外線より波長が長いテラヘルツ波は、超遠赤外線ともいわれていて、無機質や有機質の物性を改善し、細胞の遺伝子(DNA)活性化させます。その結果、テラヘルツ波エネルギーは、物質の性質を瞬時に改善したり、病気を瞬時に改善したり治癒させたりする力があります。従いまして、テラヘルツ波エネルギーは、その利用コストが安くて技術が簡単なので、医療や食品加工、農業、水産業、通信産業、省エネ等に広く応用できます。しかも、テラヘルツ波を物質や生体に照射した結果は、瞬間的に発生しますので、だれでも、その効果を確認することができます。

この日本テラヘルツ協会と上記した理化学研究所がどれほど関係しているかの証拠はありませんが、どうにも違う感触があります。大元は物理学領域の研究であり、その応用らしいのですが、

    その結果、テラヘルツ波エネルギーは、物質の性質を瞬時に改善したり、病気を瞬時に改善したり治癒させたりする力があります。
物理学領域のテラヘルツ波利用は測定装置としての活用が主眼でしたが、医学領域ではテラヘルツ波そのものにエネルギーがあると捉えているらしい事が推察されます。そのテラヘルツ波エネルギーの効果の発言ですが、、
    しかも、テラヘルツ波を物質や生体に照射した結果は、瞬間的に発生しますので、だれでも、その効果を確認することができます。
かなり強力な感じもします。テラヘルツ波の説明としてはさらに、

テラヘルツ波とは、光と電波の両方の性質をもった電磁波です。テラヘルツ波の周波数は、1兆Hzから100兆Hzの間にあります。その波長は3μm〜1mm(1,000μm)の間にあります。テラヘルツ波は光と電波の両方の性質を持っていますので、直進性と透過性と浸透性を持っています。

どうもなんですが「直進性」「透過性」は物理学領域の研究テーマのような気がしますが、「浸透性」を医学領域ではとくに重視しているような気配が窺えます。


医学応用の権威付け

ひょっとして「なんだか怪しい」と感じられた人も「ひょっとして」おられるかもしれませんが、それなりの権威者が加わってテラヘルツ波エネルギーの医学応用を研究されています。日本テラヘルツ協会と物理学領域の研究が関連しているかどうかは不明なのですが、日本テラヘルツ協会が関連と言うか、提携と言うか、日本テラヘルツ協会自体が子会社的な感じさえしますが、SHIMA量子医学研究所と言うのがあります。日本テラヘルツ協会との関連は組織図(共同研究施設)で確認できます。

ここで注目したいのはSHIMA量子医学研究所の役員及び代議員名簿です。

役職 氏名 肩書き
代表理事 島 博基 兵庫医科大学名誉教授
兵庫医科大学泌尿科学講座主任教授
理事 中川 八郎 大阪大学名誉教授
大阪大学たんぱく質研究所所長
理事 古山 順一 社会福祉法人 枚方療育園 関西看護専門学校学校長
兵庫医科大学名誉教授
兵庫医科大学遺伝学講座主任教授
評議員 畑 祥雄 関西学院大学総合政策学部教授
評議員 山本 新吾 兵庫医科大学泌尿器科講座主任教授
評議員 上野 陽久 西宮薬草園薬局薬剤師


非常に遺憾なんですが、誰も名前を存じません。しかし肩書きは見ただけで非常に立派であるのはよく分かります。名誉教授が3人でそれもいずれも元教授(中川八郎氏は阪大蛋白質研究所元教授)であり、現役教授も2人おられます。名誉教授や現役教授が所属するのも兵庫医大、阪大、関学と名の通ったブランド校です。

団体に対して知識が無い時に、構成役員の肩書きは信用度を測る物差しにはなります。もちろん、これだけで信用度のすべてを測れるわけでなく、安易に信用して詐欺に引っかかる事も世の中ままあります。逆に言うと、この役員名段階で信用が得られない時には論外としても良いかと思います。そういう意味で十分に信用に値する権威の方々が役員に名を連ねているのは評価できると思います。


SHIMA量子医学研究所の共同研究施設を見直してみる

この役員名からもう一度組織図(共同研究施設)を見直してみます。

兵庫医大泌尿器科講座は元教授だけではなく現教授も役員に名を連ねておられますから、深く研究に関与して当然かと存じます。兵庫医大遺伝学教室は元教授が役員ですから、これも関連性は深そうです。

畑祥雄氏なんですが、本職はプロの写真家のようで、宝塚メディア図書館は畑氏と中川繁雄氏が寄贈した蔵書を基に発展したもののようです。経歴からすると関連性は高くなさそうな気もしますが、研究のための資料発掘であるとか、この研究の広告プロモーションを担当されていると考えれば関与があっても不思議ありません。

(株)日本技術開発センターと日本テラヘルツ協会の代表は同一人物です。日本技術開発センターが取り扱っている商品は、浄水器だとか、家庭用脱臭器だとか、洗濯用ボールが並べられているようですが、その中に医療用パッドと言うのもあります。その医療用パッドの商品紹介ですが、

敷くだけで全身の血行が改善し、こりが解消します。生活習慣病の原因は部位や器官の血行不良が原因といわれています。磁気とテラヘルツ波(超遠赤外線)の応用品。国立病院で末梢血流増加効果を実証済みで、医療機器として製造が許可されています。

本当に許可があるかを知りたい人もいると思いますから、

医療用具許可:35BZ6005

こう表記されている事も添えておきます。どうやらテラヘルツ波を使った商品開発を考えておられるとしても良さそうです。つまり関与は自然に深いです。


共和電子株式会社ですが、どうも電子部品の問屋みたいな会社のようです。トップページに「目指すは便利屋世界一」となっており、エアクリーナーのメインテナンス事業も展開されているようです。この会社とテラヘルツ波研究の関連ですが、う〜ん、う〜ん、テラヘルツ波グッズの販売部門担当でしょうか。研究所には随所に様々な関連グッズの通販案内があり、この方面を担当すると言う意味で関与が深いのかも知れません。まさか出入の業者と言う事はないと思っています。


さて問題はSPRING 8と東京理科大赤外自由電子レーザー研究センターです。どちらも立派な研究施設ですが、性質からして研究協力ではなく、利用実績があると言う事かもしれません。東京理大の方はよく存じませんが、SPRING 8では利用者をかき集めるのに四苦八苦状態ですから、使いたいと言われれば、かなり敷居が低く利用できるかとは思います。


なにか並んでいる研究施設にえらい差はあるようにも感じますが、ひょっとしたらSRRING 8も東京理大も積極的に関与している可能性も否定できません。まあ、そういうところです。


医学応用の理論

SHIMA量子医学研究所のトップページには、

人間の身体=量子の集まり

量子とは「波」と「粒子」の両方の性質を持つミクロの存在です。
波として存在する「音」に気持ちのよい音(振動)と、
不愉快に感じる音(振動)とがあるように、
量子の波にも、身体によい振動、悪い振動が存在しています。

「癌」をはじめとした人体に起こりうる病気の発生メカニズムが、
この量子の「悪い振動」にあるとしたら?
それを元の「正常な振動」へ修復することが可能なら・・・?

すべての病気を根本的に治すことのできる「統一理論」の応用。
さらには「量子」で構成される地球上の全てのものに調和を。
それがSHIMA量子医学研究所の使命です。

どうにも既視感がある言葉の数々なんですが、気になるのは「統一理論」です。統一理論に対するもう少し具体的な説明が所長のあいさつの中にあります。

これらの経験を通して、病気を根本的に治す統一理論の確立が必要であることを実感し、身体の主要な構成因子である量子に着目しました。量子に着目した理由は、全ての分子の最終形態は粒子と波の性質を持つ量子であるからです。ヒトの病気は結果として量子の場の乱れが大きく関与しているのではないかと考えたわけです。この量子場の乱れを修正するためにはテラヘルツ波(波長3-1000μm)が有効であり、病気の根本的な治癒に繋がる科学的確証を論文として欧米雑誌には発表しました。

EVAとかラジオニクス理論に「どこか」類似しているところはありますが、これが似ているだけなのか延長線上であるのかは、これだけでは判断は出来ません。ただ、こういう結論に至った理由も解説されており、

このような経験により私は近代医学の方向性とは違った角度から病気を根本的に治す治療方法を研究し、また病気を予防するには何が本当に必要なのかを模索することになったのです。このため、東洋医学、気功、ヨーガ、武術、種々の食生活なども自ら実践し、身体と心を元気にするこれらの方法を真剣に勉強してきました。

思想的な類似性だけはあるように思います。ここでSHIMA量子医学研究所のテラヘルツ波の説明を紹介しておきます。

テラヘルツ波とは、3から1000μmの波長を持つ10の12j乗の振動波を持つ赤外線領域の量子波です。当研究所が使用しているのは波長と位相が揃っていないインコーヒレントなテラヘルツ波です。

太陽光線で言えば赤外線領域に入ります。自然界や宇宙界に存在する生命と物質は、すべてテラヘルツ波という生命振動波を放射しています。人体もテラヘルツ波を放射しています。それも赤ちゃんが最もその放射量が多く、平均放射率も高いのです。逆に年を経るにつれて生命力が衰えてきますと、その人が放射するテラヘルツ波の放射量や平均放射率が低下していきます。病気の内蔵器官や体力が落ちた身体もテラヘルツ波の平均放射率や放射量が低下します。ある意味では生物としての生命活動の活発さはテラヘルツ波の放射量や平均放射率で表現されていることになります。 健康な植物や動物、食品は不健康なものに比較してテラヘルツ波の放射量と平均放射率が高くなっています。その理由は不健康な植物や動物や食品では細胞を構成している有機高分子の格子振動の振幅や振動数が低く、かつ乱れているためです。ちなみに生命振動波としてのテラヘルツ波は水を通過する波長と水に吸収される波長に分かれます。水に吸収された大半のテラヘルツ波は水のテラヘルツエネルギーを高めます。

ここを読むとテラヘルツ波による統一理論の一端がわかる様な気がします。どうもで申し訳ないのですが、

    自然界や宇宙界に存在する生命と物質は、すべてテラヘルツ波という生命振動波を放射しています
テラヘルツ波 = 生命振動派」ぐらいの理解で宜しいのでしょうか。さらにこの「テラヘルツ波 = 生命振動派」は年齢や疾患により衰えるものとし、テラヘルツ波の強さそのものが生命活動の指標であると定義されているのが「なんとなく」わかります。


未知の新発見なんでどういう仮説を提唱されても構わないのですが、物理学領域で研究されているテラヘルツとはかなり趣きが違うように感じます。物理学領域の研究では量子の振動のうち、これまでは利用が難しかった帯域の振動であるとなっています。テラHzですから、非常に早い振動であり、これを解析利用するのに同じ振動帯域のテラヘルツ波(光)を用いるのが有用そうだという研究です。

人間であっても量子の集合体であると言うのは間違いではないので、テラヘルツ領域の量子の振動があってもよい事にはなります。ただ量子の振動の影響は極めて微細であり、この微細な運動を解析し理論立てるために量子力学は発展しています。簡単には古典力学では説明しきれない運動のための力学体系です。

それほど微細な振動が、

  • それも赤ちゃんが最もその放射量が多く、平均放射率も高いのです。逆に年を経るにつれて生命力が衰えてきます
  • 生物としての生命活動の活発さはテラヘルツ波の放射量や平均放射率で表現されていることになります

そんな簡単に計測できるだろうかは素朴な疑問です。それとこれは論理の遊びになるかもしれませんが、
    健康な植物や動物、食品は不健康なものに比較してテラヘルツ波の放射量と平均放射率が高くなっています
人体もそうですが「健康」なものはテラヘルツ波エネルギーは大きく、「不健康」なものは小さくなるとしています。このうちたとえば「不健康な食品」とは何を意味しているのでしょうか。至極素直に考えると「腐っている」です。たしかに腐っている食品は人間にとって不健康ですが、そこで繁殖している細菌にとっては健康な状態になります。

人間だって健康が良いと思うのは人間を中心にした天動説であり、地球と言う天体に人間と言う知的生命体が存在していない方が、地球上の他の生物・植物にとってはよほど健康体となるとの見方も成立します。「健康」「不健康」など相対的なもので、あるものが不健康になる状態は、他の者にとって健康な状態になる事なんていくらでもあるという事です。

癌もまた然りです。癌は別名悪性「新生物」と呼ばれます。確かに癌は人間を蝕み不健康にはしますが、癌自体にとっては人間が不健康になるほど「健康」になります。重箱のような指摘かもしれませんが、なんつうても「自然界や宇宙界に存在する生命と物質」とまで大上段に振りかぶっている理論ですから、整合性が欲しいところです。

ここも不思議な表現で、統一理論によれば放射された生命振動波であるテラヘルツ波は水に吸収されるだけでなく、水のエネルギーを高めるそうです。水は循環しています。陸から海に流れ、水蒸気になり雨となって陸地にまた降り注ぎます。そこに注がれるテラヘルツ波は陸上動植物だけなく、海洋生物からも注がれ、海を形作る岩盤からも、さらには水中に含まれるミネラル、さらには水自身のテラヘルツ波さえ含みます。

これは地球が誕生してから休む間もなく繰り返されているのですが、どうなっているのだろうと素直に思います。どうにも理論武装が甘すぎる気がします。もちろん理論は事実にくっついて来ると言うのもまた現実です。そうである事は私も認めますが、表現力に問題があるのか、それとも書かれているように確信して仮説を立てられているのかは不明です。


気になる問題点

それでもなんです。ある仮説に基づいて治療理論を立て、それに基づいた治療法を摸索する事自体は問題とはいえません。現在でも様々な仮設に基づいた新たな治療法は絶えず世界中で摸索されています。そうやって医学は発展・発達しています。テラヘルツ波理論での治療法を摸索されても、もちろん問題はありません。

こういう新たな発想に基づく治療も人体への実地的な医学的応用に対してはステップを踏む事が求められます。SHIMA量子医学研究所も、もちろんそれはされています。

(3)臨床試験の実施と終了

  1. テラシールの肩こりへの効果 (UMIN登録000004956)

    対象者:肩こりのある男女合計150名(終了)
  2. 正常男女の血液および毛髪Ca濃度の測定(UMIN登録000004977)

    対象者:40歳以下の健康な男性5名 女性5名(分析中)
UMIN(医学情報大学病院医療情報ネットワーク)
http://www.umin.ac.jp/

「肩こり」と「毛髪Ca濃度」で治験をされているのが確認されます。さらにとりあえずの目標として、

これらを研究目標にされているのもわかります。ここでなんですが「肩こり」や「毛髪Ca濃度」と癌への医学的応用では危険度にかなり距離があるのは判って頂けるかと思います。in vitroレベルでマウスの前立腺癌に効果を認めたとのペーパーも発表されているようですが、マウスレベルの成果の段階で人体への応用はステップとしてまだ早いと言うのが医学的良識です。

ところが他院で癌治療中の患者に対し、料金を取ってテラヘルツ波療法を施行されています。これもどういう治療を選択されるかは患者の意思と自己責任になりますが、未知の効果の治療との併用が良い方向に出るのか、悪い方向に出るのかは、これからの課題です。確かに治療法を読む限り、他の療法に及ぼす悪影響は少なそうには思いますが、これまで副作用がないと言われた治療に後日問題が発覚するのも珍しい話ではありません。

ホームページを読む限り、テラヘルツ波治療には大きな効果があると主張されています。大きな効果には副作用を伴う事が多々あるのが医学的常識です。主張として副作用が考えられないともありますが、そういう事は実際に副作用がない事を確実に確認されてからにするべきであろうと考えます。人体が想定以外の反応を示す事があるのは医師なら誰でも知っています。

とくに従来の治療理論を覆し、革新的な治療理論を構築されたいと考えておられるのなら、その点は慎重であって然るべしと私は思います。ここを疎かにされますと、世にはびこるトンデモ治療法と同類と見なされてしまう事を危惧します。役員として名を連ねている現役及び元医学部教授であれば、それぐらいは常識以前のはずです。