これがやってみると雲をつかむような話になるのですが、大学サラリーマン日記様の高等教育予算と政策をとっかかりにしたいと思います。いくつかデータを挙げられて検証されていますが、個人的に注目したのは、
この「運営費交付金」とは、国民の皆様からいただいた「税金」です。大学の規模などによって金額の大きさは異なりますが、各大学はこの税金に加え、学生(保護者)からいただく授業料、入学料等の納付金、附属病院を持つ大学においては診療収入、その他自己収入によって運営されることになっています。
大学には研究と教育の二本の柱があり、とくに研究については様々な事業があるのですが、教育については「運営交付金」が税金からの主な財源と理解しても良さそうです。大学サラリーマン日記様は平成21年度の国立大学法人法人別運営費交付金予算額(案)をまとめられているのですが、運営交付金は当たり前ですが全学部に配分され、医学部にどれだけの配分が為されているか不明です。
さらに大学には大学院があります。予算的には大学院にも運営交付金は配分されているはずです。なんにせよ単純比較をするのは難しいのですが、何かを物指しにしないといけないので、大学を卒業するまでに学生1人当たりの運営交付金で考えて見ます。ここもやりだすと異様に複雑になるので、医学部も含めて総合大学なら4年で卒業、医学部なら6年で卒業にします。
国立総合大学のモデルは旧七帝大とし、医学部は単科大学3つにします。さらに医学部単科大学にも看護学部が併設されているのですが、医学生と学費が同じなので、医学生と同等と考えると同時に、看護学部は4年とし、なおかつ換算するために2/3に看護学生をします。ソース元はあっちこっちから引っ張ったので、ややバラツキはありますが、おおよそ総合大学現在の学生数、単科医大は収容定員にしています。
まず旧七帝大で、単位は百万円です。
大学 | 運営費交付金 | 学生数 | 学生1人あたり | |
1年間 | 4年間 | |||
北海道大 | 39295 | 11574 | 3.4 | 13.6 |
東北大学 | 49643 | 10997 | 4.5 | 18.1 |
東京大学 | 87884 | 14057 | 6.3 | 25.0 |
名古屋大学 | 35897 | 9700 | 3.7 | 14.8 |
京都大学 | 59640 | 13318 | 4.5 | 17.9 |
大阪大学 | 49267 | 15885 | 3.1 | 12.4 |
九州大学 | 46432 | 11705 | 4.0 | 15.9 |
旧七帝大平均 | 4.2 | 16.8 |
続いて単科医大です。
大学 | 運営交付金 | 学生数 | 学生1人あたり | ||
医学部 | 看護学部 | 1年間 | 6年間 | ||
旭川医大 | 5733 | 620 | 260 | 7.2 | 43.4 |
浜松医大 | 6260 | 670 | 280 | 7.3 | 43.8 |
滋賀医大 | 5769 | 673 | 260 | 6.8 | 40.9 |
3単科医大平均 | 7.1 | 42.7 |
単年度あたりで医学部平均(3単科医大)で710万円、6年合計で4270万円となります。旧七帝大と比較して単年度で1.7倍、卒業までに2.5倍ぐらいになります。運営交付金ベースでは医学部の税金投入量は1億円にはかなり遠くなります。もちろん大学院も含んでですから、4270万円よりもっと低くなるのは間違いありません。 税金と言う事になれば、運営交付金以外の税金はどうかになります。旭川医大の決算報告書の詳細の平成18年度分がありました。どうなっているかと言うと、
収入 | 運営費交付金 | 5264 |
施設整備費補助金 | 97 | |
補助金等収入 | 7 | |
国立大学財務・経営センター施設費交付金 | 33 | |
自己収入 | 13654 | |
授業料及び入学金及び検定料収入 | 610 | |
附属病院収入 | 12916 | |
雑収入 | 128 | |
産学連携等研究収入及び寄附金収入 | 754 | |
目的積立金取崩 | 220 | |
計 | 20029 | |
支出 | 業務費 | 16293 |
教育研究経費 | 3345 | |
診療経費 | 13578 | |
一般管理費 | 995 | |
施設整備費 | 130 | |
産学連携等研究経費及び寄附金事業費等 | 629 | |
長期借入金償還金 | 1519 | |
計 | 20196 |
収入側のうち「施設整備費補助金」「補助金等収入」「国立大学財務・経営センター施設費交付金」は税金と言えば税金になります。これを運営交付金に加えると54億100万円になります。運営交付金以外の税金収入の比率が2009年度(案)と同じであると仮定し計算してみると、単年度で740万円、6年間で4450万円です。私が調べる限り、これ以上の税金投与は無いと考えます。 ここから先はちょっとお遊びですが、旭川医大の決算報告書の「施設整備費補助金」「補助金等収入」「国立大学財務・経営センター施設費交付金」は見方考え方ですが学生教育に直接投資されたものと考え難いところがあります。また運営交付金も丸まま学生教育に直接投資されているとするのも少々無理があると考えます。 そこで収支のうち運営交付金、長期借入金償還金以外の収支をちょっと考えて見ます。
収入 | 金額 | 支出 | 金額 | 収入-支出 |
施設整備補助金 | 97 | 施設整備費 | 130 | 0 |
国立大学財務・経営センター施設費交付金 | 33 | |||
授業料及び入学金及び検定料収入 | 610 | * | * | 610 |
雑収入 | 128 | * | * | 128 |
附属病院収入 | 12916 | 診療経費 | 13578 | △662 |
産学連携等研究収入及び寄附金収入 | 754 | 産学連携等研究経費及び寄附金事業費等 | 629 | 125 |
目的積立金取崩 | 220 | * | * | 220 |
計 | 428 |
この4億2800万円は運営交付金以外の大学の自己財源と見ることも可能です。これと運営交付金を合わせた56億9200万円が大学の財源で、自己資金は7.5%になります。ただしここから長期借入金償還金が引かれます。そうなると残りは41億7300万円になります。このうち自己資金が7.5%ですから、運営交付金のうちで学生教育に回されているのが38億6000万円と考えるのも可能です。この38億6000万円を2009年度換算すれば42億400万円になり、学生の単年度あたりで530万円、6年で3180万円と考えるのも一つの計算かと思われます。 以上ですが医師養成に費やされる税金の額は、
* | 単年度 | 6年間 |
最大見積もり | 740万円 | 4450万円 |
最小見積もり | 530万円 | 3180万円 |
これは、あくまでも推定であって、予算の流れとか、医学部大学院生が附属病院で働く事による経済効果。さらには医学部教官の給与(人件費)が教育だけでなく、附属病院の収入に寄与している分とかは試算が複雑で出来ていませんので、そこのところはよろしくお願いします。