今日はごくごく日常での診察風景のお話です。
これはどの診療科でも共通していますが、外来診療では問診は重要です。問診だけで診断や治療方針のかなりの方向性が決まっていきます。それを補強したり、確認したりが実際の診察であったり、検査になるとしても良いかと思っています。もちろん例外はテンコモリですが、うちのような小児科開業医ではだいたいそんな感じです。
小児診療の特徴の一つとして、患者本人から症状の経過を聞き取りにくいと言うのがあります。自覚症状も同様です。成人相手であってもそういう事は多々あるでしょうが、小児科では「ほぼ」としても良いかと思っています。うちは小児科ですが、両親とかも受診される事もそれなりにあり、その時には「なんてやりやすいんだろう」と感心しています。
とにもかくにも、患者である子どもの症状は、連れてきた成人から問診として聞き出さなければならないのですが、これがまた色々で楽しいところです。経過の要点と症状のキモを手際よく話される方もいる一方で、つかみどころの無いような話を滔々とされ、なおかつ関係ない方向に脱線される方もおられます。外来をやっている医師なら誰しも経験があると思いますが、たとえばこんな感じです。
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顔の湿疹が気になるのです・・・
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昨日の晩に39度の熱がありましたが、坐薬使って下がってますから心配ないですよね。
困るのは連れてくる人間が、子ども症状を実際に見ている人でない時です。共働きが当たり前の世の中ですから、同居していない祖父母が頼まれて子どもを連れての受診のケースは多々あります。別に構わないのですが、連れてきた大人も子どもの症状や経過が「又聞き」だもので、症状の程度とかになると「見ていないからわからない」が出てきます。
それでも通常はなんとかなるものですが、一番困るのは、完全に子どもの使い状態の人です。これはなかなか手強くて、
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医師:「今日はどうされました?」
使い:「娘(嫁)に子どもを連れて行けと言われました」
医師:「症状はどんな感じですか?」
使い:「かぜと言われています」
医師:「お熱とか、お咳はどうですか」
使い:「今朝に頼まれたので何も聞いてませんし、知りません」
わからないから帰す訳にもいかないのが開業医の辛いところで、無難そうな咳鼻止め中心の処方で帰ってもらう事になります。それでも大抵は良くなるのですが、良くならない時がさらに困ります。さすがに子どもの使い状態であっても、再診時には少しは症状を聞いてきています。それがどう聞いても、あんまり宜しくないのです。
宜しくないので、点滴や採血などの治療や検査を進めたいと思うのですが、当然ですが同意が必要です。同意書まではさすがに必要ないにしても、子供を泣き喚かせる処置が必要になりますから、口頭での同意ぐらいは必要です。しかし子どもの使い氏は、その同意の判断がしばしば出来ません。
「それは聞いてみないと・・・」ぐらいであれば、今どきですから携帯で連絡ぐらいで済みますが、これが「クスリをもらって来てくれとだけと言われてる」と頑張られれば、チト往生します。仕方がないので、こちらから親に連絡を取ろうとするのですが、これがまた仕事の関係か電話つながらないなんて風に展開すれば、途方に暮れそうになります。
でどうなるかですが、どうにかはなります。町医者の小児科を受診するような子どもですから、そうそう悪くなる事は少ないですし、悪くなっても最悪の事態からかなり程遠いところで、たいていはケリがつきます。ただ難儀であるのだけは間違いありません。残念ながら私の技量は、「黙って座れば、ピタリとわかる」レベルとは縁遠いですから、子どもの使い氏が来られると一番困惑します。
先日も強烈な方が来られたもので、ちょっと愚痴ってみました。