ある医系技官氏のつぶやき

どんな医系技官氏かと言うとプロフィールに、

元救急医の32才男性。現在厚労省から出向し環境省に勤務している、いわゆる医系技官です。日々の業務をこなしつつ、「健康であること」の価値を高め、伝えることができるかを日々考え中。実態はただのおしゃべり&お酒と音楽とラグビー好きのおっさんです。

これだけでは寂しいので情報をググってみると、2004年千葉大卒業で、成田赤十字救急部に確かに所属していた時期があるのが確認できます。ラグビーは高校時代(開成)に頑張っておられたのも窺えます。2008年ぐらいまで病院の肩書きが確認されますが、2010年からは厚労省の肩書きに変わられています。おそらく2009年ぐらいに医系技官になられたんじゃないかと推測します。

さて2004年卒が新研修医制度であったか否かですが、新研修医制度は平成16年度(2004年度)から行われています。微妙なんですが、医師が卒業年を示す時は、年度ではなく卒業の年を言う事が多いとされます。つまり2004年卒と言うのは2004年3月卒業の事を指します。そうなれば新研修医制度の1期生になる可能性が高いと言う事になります。

そうなると医系技官氏の略歴は、

年月 経歴
2004年3月 千葉大医学部卒業
2004年4月 新研修医制度1期生として研修開始
2006年3月 前期研修終了
2006年4月 後期研修として成田日赤救急部所属
2008年3月 後期研修終了
2009年4月 医系技官になる


だいたいこんな感じではないかと思われます。厚労省のシステムは存じませんが、入省して1年ぐらいは研修みたいなものがあると思いますから、2年目ぐらいから、医系技官としてあちこちの講演会みたいなものに顔を出し始めたとすれば、ほぼ辻褄が合います。そうなると医師としての臨床経験は前期後期の4年の研修期間だけと考えても良さそうです。


さてそんな医系技官氏がツイッター論議に参戦されています。HenachokoDr様が受診閾値に関する噛みあわない議論としてまとめられていますので、医系技官氏のツィートを引用させて頂きます。

月日 曜日 時刻 ツイートの内容
2/21 Mon 23:10:36 お疲れ様です。お忙しいようですね。 RT @TakC_MD_PhD:
Fluがらみはうっとしい事ばかり。さっきから熱が出た、Fluだったらどうする、脳症とか大丈夫ですか、、、 who knows?
経験も知識も豊富な医系技官様に電話して相談して下さい @DeLoreanDoc
2/22 Tue 07:20:51 あたりまえの指示では?小児科学会も連名ですし。具体的にどういうのだったら良いですか? RT @TakC_MD_PhD: http://bit.ly/gsDmf4 不安をあおって病院受診を促し、全ては現場に丸投げ 素晴らしいポスターで感動します @DeLoreanDoc
07:26:49 何をやっても批判する人はいる。根拠に基づき、正当な合意達成経ているのであれば自信をもって進むしかない。もちろん、意見を傾聴しつつ修正も厭わず。ただ、このポスター何が悪いかよくわからない。妻も当たり前の説明じゃないかと言ってるし。http://bit.ly/gsDmf4
08:39:40 同感。最近は自治体の取り組みで電話相談を開いているところもあります。利用可能な資源を整理しておくといいかもしれません。 RT @koiawe:
ポスター良いと思います。でも親御さんはそれ以上に不安。電話とか相談所が増やしてあげれたらいいのにとよく思います
08:49:22 小児科の先生方のコンセンサスはどうなんでしょうか。自分の子供は発熱しても、全身状態がいい限り受診させず、抗菌薬の投与の必要性がありそうなときのみ受診させます。ただ、そうすると小児科の先生方には連れてくるのが遅いと怒られます。いつ受診したらいいですか。
RT @koiawe
08:53::24 小児救急電話相談http://j.mp/ev11p9 こういう取り組みもあります。@teratter:
〜〜利用可能な資源を整理しておくといいかもしれません。 RT @koiawe:
ポスター良い〜親御さんはそれ以上に不安。電話とか相談所が増やしてあげれたらいいのに〜
08:54:08 小児救急電話相談 http://j.mp/ev11p9 こういう取り組みもあります。@teratter:
〜〜利用可能な資源を整理しておくといいかもしれません。 RT @koiawe:
ポスター良い〜親御さんはそれ以上に不安。電話とか相談所が増やしてあげれたらいいのに〜
21:44:32 当直明けでお疲れでしょうか。言葉は尖っているものの中身が無いので反応できずです。もう少し噛み砕いていただけますと理解できると思います。 RT @DeLoreanDoc: @TakC_MD_PhD
国際感覚とバランス感覚・金銭感覚,すべて欠如.だから日本の経済と国民の意識が狂う〜
21:44:59 その期間は何日を目安すればいいですか。ご教示いただけると幸いです。もちろん私見でよいので。 RT @koiawe:
全身状態がいいなら発熱期間、感冒症状にしても症状持続が長い場合等〜RT @teratter:
発熱しても、全身状態がいい限り受診させず〜連れてくるのが遅いと怒られ
21:54:53 うーん。起こっていることが事実なわけで。普通おらんなんていわれても〜。先生はSOAPのSは無視するタイプでしょうか。ちなみに私の妻の体験談です。 RT @TakC_MD_PhD:
普通そんな事で怒る奴おらん。〜〜 @koiawe
〜小児科の先生方には連れてくるのが遅いと怒られます
21:57:29 ちなみに先生は小児科の先生だと思うのですがご教示下さい。小児が発熱した場合、全身状態の良いときは何日目に親は受診させたらいいのでしょうか。 RT @TakC_MD_PhD:
普通そんな事で怒る奴おらん。もし本当に怒ったとしたら、何か怒らせるような事〜〜〜 @koiawe
22:06:43 先生は親切な先生なんだと思います。ただ、こういうことを言われたことのある方は身の回りにはたくさんいます。それで傷ついてる親御さんも。 RT @TakC_MD_PhD:
連れてくるのが遅いなんて言って怒った事無いので状況が想像できません〜〜@koiawe
22:13:17 うーん。そしたら、夜間でも、休日でも、医療機関に電話すればいいということでしょうか。 RT @TakC_MD_PhD:
正解はありません。受診希望の病院に電話で相談されるのが良い@koiawe 小児が発熱した場合いつ受診?
22:19:20 僕もそのくらいが良いかと思っています。なんで小児科の先生ははっきり言わないんでしょうか。不思議です。親御さんが不安になるのも当然かと。 RT @katz0172:
横からすいません。まる2日超えてからぐらいでいいんじゃないでしょうか。
22:26:41 小児の全身状態の良好の発熱だって、何日目受診が良いのか、エビデンスに基づいたコンセンサスって作れそうな気がしますが。小児科の先生に聞いても百家争鳴なので、(続)
RT @TakC_MD_PhD:
一律に基準を決めるのは不可能
22:26:51 例えば、頭部打撲をした場合はどんなときにCTをとるべきかのエビデンスがあってコンセンサスがあります。電話相談を受ける場合はそれに従い、CT撮影が必要なら受診させるし、不要と判断できれば自宅で様子見可能です。(続く)
RT @TakC_MD_PhD:
一律に基準を決めるのは不可能
22:27:36 小児の全身状態の良好の発熱だって、何日目受診が良いのか、エビデンスに基づいたコンセンサスって作れそうな気がしますが。でも、小児科の先生に聞いても百家争鳴なので、(続)
RT @TakC_MD_PhD:
一律に基準を決めるのは不可能
22:33:13 自分が医者でも(ちなみに親は小児科医ですが)いつ受診させたらいいのか分からないのに、一般人がわかるわけ無いです。そりゃ夜間でも休日でも行くのも無理無いかと。(終)
RT @TakC_MD_PhD:
一律に基準を決めるのは不可能
22:36:09 では、夜間休日に全身状態が良好なのに、発熱で連れてくる親御さんの受診行動は医学的に正当だということですね。 RT @TakC_MD_PhD:
ご存知と思いますが、発熱性疾患てかなり幅広いです。時間経過で治る病気もあるし適切に治療しないと後遺症を残す疾患もある〜〜〜
22:46:24 まずは純粋に医学的な議論をしましょう。小児科学的には発熱したらいつでも診せにくることが医学的に正しい受療行動なのですね。 RT @TakC_MD_PhD:
〜余裕がない〜@teratter
〜〜元気なのに夜間や休日に連れて来たと説教する小児科医は、医学的に間違っているわけですね。
22:52:08 お疲れ様です。なぜ、僕がこの問題が気になるかというと、結局、小児科の業界内で受療行動に対するコンセンサスが無いことが回り回って、親御さんの不安や受療行動が適正化されない根源な気がしているからなのです。
RT @TakC_MD_PhD:
〜疲れきった四十路〜 @shuhein
23:00:37 おっしゃるとおり、コンセンサスがあっても適正化するかどうかはわからないです。でも、コンセンサスが無かったら、そもそも何が適正なのか定義できません。 RT @shuhein: 小児科に限らず救急車もだが、
仮にコンセンサスがあっても適正化しない気がする@TakC_MD_PhD
23:12:39 では小学生の場合と限定します。なら、いいですか。 RT @TakC_MD_PhD: 乳幼児と健康な中学生とかでは大分違うし〜〜〜@teratter
既往は特になしの場合、発熱したら、全身状態良好という条件で、発熱後2〜3日様子をみてから
23:17:34 なんで、この手の問題の医学的なコンセンサスって無いのでしょうか。 RT @tomtom_miz:〜無問題と考えます。RT:@teratter
既往は特になしの場合、発熱したら、全身状態良好という条件で、発熱後2〜3日様子をみてから 小児科に日中受診というルールではいけませんか。
23:22:01 医学を医療に翻訳するときには、ある種の割り切りをしながら、さらに個々にアジャストしているはずです。線を引けないのはプロで無いと思います。科学を政策に翻訳する作業も同様かと。
RT @mosatsu1987:
〜物事を決める立場にいらっしゃる方は、仕方なく「線引きをする」感覚〜
23:23:51 病院単位で設定できますので自院でやっていただければと。RT @TakC_MD_PhD:
〜個々の受診行動を制御するのは難しいので、応分の費用負担を求めるのが現実的と思います。夜間休日の軽症受診を抑制するのは、数千円?一万円程度の自己負担で十分可能では。
23:31:42 それは先生の病院がやらないことを選択しているのです。まず、院内で賛同者を増やすことから始めるべきでは。 RT @TakC_MD_PhD:
個々の自主性に任せると弱腰の公立病院は何もできません。それが現実です。厚労省主導でお願いします。〜〜
23:49:44 仰る通り出向中で医療政策の部署では無いです。ただ、保健分野としてはなかなか興味深いところにいます。保健や公衆衛生分野が健康政策の最前線で無いと認識されているのであれば歪んだ価値観だと思います。
RT @araihiro:
〜〜厚生労働省の最前線で政策形成しているわけでもない〜
23:50:58 普通の役人はこんなやりとりしたくないと思いますよ。私は物好きなのと通勤時間が長いのでやっています。 RT @araihiro:
ツイッター上の意見に厚生労働省の医系技官が耳を傾け、それが政策に反映されるなら望ましい。国の政策形成に携わる責任ある人たちがもっとツイッターに参加〜〜
23:52:41 すいません。どの部分に答えれば良いのかシンプルにしていただけると幸いです。 RT @mosatsu1987:
成る程。のし掛かる責任の中判断にと下す信念には辟易致します。個々のアジャストと言うのは現場の方とのズレも割りきる事ですか?〜〜〜〜線引きはありますか?
2/23 Wed 06:49:47 院長の決断でできるのですから、院内で同意者を増やすところから始めたらどうでしょうか。先生は部長レベルでいらっしゃると思料しますが、まずは部長レベルでの合意達成を図られてはいかがでしょうか。RT
@TakC_MD_PhD:
病院を管理する側は、下々の意見など聞く気はありません〜
07:01:33 ご教示いただけたら幸いです。2才以上の小児で既往は特になしの場合、発熱したら、全身状態良好という条件で、発熱後2〜3日様子をみてから
小児科に日中受診というルールではいけませんか。RT @koiawe: 〜夜間にあえて来る輩にお灸を据えてほしい〜RT @TakC_MD_PhD
07:03:00 それは病院単位で設定可能です。院内の合意と院長の決断次第かと。 RT @koiawe: それはいい案ですね〜〜 RT @TakC_MD_PhD:
手薄な夜間休日に受診する方は、応分の費用負担をしていただければ夜間・休日の医療を少しは支えられると思います @teratter
07:11:44 なるほど。症状の緩和が目的なら、薬局の薬で十分な気がしますがいかがでしょうか。 RT @koiawe: 〜私見ですが4、5日〜〜苦しかったり〜時は早めに受診〜〜RT @teratter:
その期間は何日を目安すればいいですか RT 発熱期間、感冒症状にしても症状持続が長い場合等〜
07:13:51 逆に聞きたいのですが、なぜ自院で設定しないのでしょうか。 RT @chunchukurin: 〜国が設定したら〜@teratter:
病院単位で設定できますので自院でやっていただければと。RT @TakC_MD_PhD: 〜応分の費用負担を求めるのが現実的。
07:15:28 その前提条件が確保されれば同意ですか。 RT @neko_a_t: 熱の出始め時期〜〜〜全身状態良好ってのの見分け方〜〜〜RT
@teratter
2才以上の小児で既往は特になしの場合、発熱したら、全身状態良好という条件で、発熱後2〜3日様子をみてから
07:19:23 どちらの問題か教えて下さい。抗菌薬などの医師の診察が無いとできない治療が遅れたのが問題ですか?それとも、対症療法が遅れたのが問題ですか? RT @koiawe:
〜日中放置して、重症化してから夜中に連れてきたりしているのをみると悲しくなります RT @TakC_MD_PhD
07:29:49 基本のキの医学的基準、コンセンサスが定められないなら、夜間休日の受診は当然だと思います。僕は医学的基準の合意達成は可能だと思ってますが。 RT @hououdouko:
夜間受診の医学的基準。お医者さんもバラバラなのね、責任的医学と経済的医学基準。あと道義的医学もあるのかな
07:34:55 都市伝説だとは思いますが、給食制をしいている学校でお弁当を持って行っていいのかという問題が、現場で決断できず、学校も教育委員会も決断できず、最終的に大臣まで上がったという話があります。そういうのどう思いますか。
@TakC_MD_PhD
07:41:05 全身状態の判断が問題なら、チェックシートによるセルフチェックや電話相談でまず判断という対応でいいですか。RT @koiawe: 〜全身状態〜RT @teratter:
2才以上の小児で既往なし、全身状態良好、発熱後2〜3日様子をみてから小児科に日中受診というルール〜〜
07:45:01 もう少し医学的な議論にお付き合いいただけると幸いです。例えば呼吸苦なら救急車ものだし、咳が苦しいなら市販薬でも良いはずです。可能でしたら先の問いに回答いただけると幸いです。
RT @koiawe:
子どもが苦しがっているのを放置することが問題〜〜
07:49:50 僕も同感です。それを小児科の先生方がクリアカットに言えばいいのにと思ってます。元気かどうか(全身状態が良いか)の判断がつかない、特別な既往がある、○ヶ月以下などの場合は電話相談するというのがいいかと。
RT @akizukid:
発熱のみ、元気なら夜間受診しないという基準〜〜
07:50:55 セルフチェックに自信が無いなら電話相談して、そこでチェックしてもらうというのでいいでしょうか。 RT @koiawe: RT @teratter:
全身状態の判断が問題なら、チェックシートによるセルフチェックや電話相談でまず 判断という対応でいいですか
07:53:07 その通りなんです。風邪なんか家で寝てればいいんだなんて言っていた小児科の先生が、雑誌の取材を受けて早めの受診と言っているのをみて力が抜けたことがあります。 RT
@hououdouko:
でも育児書もTVの育児相談も、早めの受診って言ってますよ^^;RT: @akizukid


小児救急の抑制策を考えるのなら、まずどのような層が救急受診を繰り返すかの基本的な分析と理解が必要です。もう4年前になりますが、nuttycellist氏が提案した分析を再掲しておきます。若干アレンジしますが、

定義 補足
1群 救急の本当に必要な群 当然のように重症者が含まれる
2群 親が心配して救急にかかる群 大多数は軽症で救急不要。それでも重症者が少数だが含まれる
a 前向き層
b 後ろ向き層
3群 リピーター群
a 親が共稼ぎで夜間しか受診できぬ等社会的な問題がある
b 親の医療についての意識に問題があり、表面上の利便性を求めて、夜間・休日に受診する


理想は1群がすべてになる事ですが、そんなものが出来れば誰も苦労しません。出来ることは2群以下をいかに1群に近づけるかです。それと小児救急の宿命ですが、子供(第1子)が出来てのスタートは2群から始まります。最初から1群の保護者など数えるほどかと存じます。これはたとえ親が医師であっても2群スタートが殆んどです。我が子の病気と言うのはそれぐらいうろたえるものです。

2a群は基本的に無駄な救急受診は控えようと前向きな層になります。それでも2群なんですが、比較的短期のうちに1群にステップアップします。2b群は「後ろ向き」の表現は悪いですが、「でも心配」からなかなか抜けきらない層です。それでも時間をかければ1群にやがてステップアップします。救急受診は保護者にとっても負担であり、「でも心配」であっても負担軽減のために受診を控えたいのモチベーションが存在するからです。

2群に対しては電話相談やチェックシートなどの効果は期待できます。また小児科医も全員とは言いませんが、それなりの比率で2群の受診は「やむを得ない」と考えています。どう考えても新米夫婦の第1子から1群対応が出来るとは思えないからです。極論すれば小児科医の子供だって、妙に知識がありすぎるので2群になってしまう事さえありえるからです。


問題は3群です。3a群が許容できるかどうかは、医療の問題でなく社会問題です。医療者に言わせれば、「子供の病気と仕事とどっちが大事か」になりますが、そんな綺麗事が必ずしも通用しないのが現実社会です。この層を解消するには、それこそ厚生「労働省」の出番になります。厚生「労働省」だけではなく、政府の問題としてよいでしょう。社会人として食っていくのは文字通り死活問題ですから、安易に答えが出せません。

小児科医が本当に解消を求めるのは3b群です。1群対応が本来可能であるのに、故意にそうしない層です。これへの救急対応は、肉体的疲労以上に精神的ダメージが深刻な物になります。実際にどれほどの比率で存在するかのデータは持っていない(たぶん無いと思ういます)のですが、この層はたとえ少数であっても救急医療従事者に深刻なダメージを与えます。

この層には電話相談も、チェックシートも、その他の啓蒙活動も無駄です。その気が無いのですから、正直なところ医療者レベルではお手上げになります。



ここらまでは実は4年前の分析です。4年してこの現状はよりシビアになっています。現状は2群、3群が確実に増加しています。また2群から1群へのステップアップの速度も鈍っています。一方で救急に対応できる医療資源が確実にやせ細っています。つまり2群でさえ大らかに許容しきれない現状があります。かつては3群でさえ「困ったものだ」ぐらいで対応していたのが、現在では2群でさえ「どうにかしてくれ」状態になっているとしても良いと思っています。

そう言えば、小児救急の中途半端な充実は、かえって救急需要を喚起するの箴言があります。あれをこの分析で説明してみると、小児救急が充実するまでやむなく1群対応をしていた隠れ2群が、中途半端な充実により現実の2群として行動し始めると言っても良いかもしれません。いや2群だけではなく、3群も登場するとしても良いかもしれません。

中途半端な利便性は2群以下を1群にするモチベーションを失わせると言っても良いかもしれません。


それと表を良く見て欲しいのですが、2群でも3群でも重症者は確実に含みます。正直なところ実際に診察してもこれを全員確実に見抜けるかと言えば、私如きの技量では自信はありません。「発熱性疾患」で「見た目上元気そう」の保護者判断で、「2日ぐらいは様子を見る」の対応が全員に適用できるなんて事は、経験を重ねた小児科医(小児科医でなくとも)まず口にしません。ましてや電話相談で安請け合いなどしようとも思いません。

救急抑制策の本音の議論は、そういうケースがどうしても一定の比率で存在するからどうしようです。従来は見逃さないように根こそぎ診察するで対応してきたと思いますし、現在でも医療政策としてその方向に進められています。理想はそうなるべしでしょうし、そうなる方向で解消していく方向性が見えていれば、そもそも救急問題など浮上しないと言う事です。



小児救急の抑制策を語るのなら、ここまでぐらいの基本知識は最低限必要です。これを踏まえていない発言は、素人の思いつきレベルと酷評されて当たり前です。ここからの話は、本音剥きだしのよりシビアなものになります。小児救急を抑制しないと現場はニッチもサッチも行かない状態になっています。そうなると医学的判断に依らないドライな抑制策が必要になります。

ドライな抑制策を取れば、当然のように抑制された救急患者のうちに重症者が含まれるわけです。現代の医療技術ですから、少々遅れても重症者のかなりの部分はリカバリー可能ですが、それでも予後不良は一定の比率で存在します。一定の比率で発生する予後不良の重症者の責任問題をどこに持って行くのかが最大の課題です。

そのための手法論の一つとして、時間外料金の値上げとか、救急車有料論議があります。ココロは責任問題を家族に向けるです。医療機関は患者が受診しない限り責任問題は発生しませんから、受診以前の家族の判断段階で抑制をかけようの発想と言えば良いかと思います。医療者としての良心に反する部分はありますが、背に腹は変えられないです。

ただ料金の壁を作っても、それに伴う問題は家族には転嫁しきれません。料金の壁により不幸に見舞われた家族は、そういう料金の壁を作った責任者を追及します。わかるでしょうか、その責任問題を誰も負いたくなくて、押し付けあっているのが今の現状です。厚労省も良く知っています。厚労省主導で料金の壁を作れば、責任追及は確実に厚労省に向います。厚労省だけではなく政府与党にも向います。

だから厚労省は自らは積極的に動こうとはせず「小児救急の充実」、つまり根こそぎ診療する方針を堅持しています。その上で、もし料金の壁を作りたいのなら病院でやって下さいとしています。つまりは責任は病院単位でどうぞの姿勢です。病院、とくに公立病院の料金設定は基本的に自治体の承認が必要です。間違っても雇われ院長には何の権限もありません。

自治体だって料金の壁で有権者から批判されるのは避けたいところです。進んで料金の壁を作っても、今度は選挙が怖くなります。やはり唱える方針は「小児救急の充実」による根こそぎ方針です。自分が現場で働くわけじゃありませんからね。


厚労省自治体」と責任回避に動くと、ツケは現場に圧し掛かります。現場はどう対応しているかと言えば、

  1. 病院単位で輪番救急から下りる(私立病院)
  2. 個人単位で条件の悪い病院から逃げる
根本に小児救急の「根こそぎ診察」対応は戦力的に不可能であるのが大前提です。根こそぎ対応が不可能であるのでドライな抑制策が切実に必要になっています。ところがこれには確実にデメリットが伴い、デメリットの責任を誰も負いたくない構造があります。

医療者だっての声もあるでしょうが、医療者だって負いたくありません。何を好きこのんで個人でそれだけの責任を負う必要があるかと言う事です。負うぐらいなら、救急現場から逃げ出します。どうするかについては、とくにネット上ではほぼ意見は出尽くしています。啓蒙論の限界は既に指摘し尽くされています。無効とは言いませんが、啓蒙論では現場の負担の軽減には限界があると言う事です。

ごく一部に啓蒙論成功したかに見える地域は存在しますが、とくに都市部で一般化出来るようなものではなく、むしろ特殊な例外例と考えるのが妥当です。その上での次の一手である料金の壁を、誰が責任を負って断行するかの状態です。切羽詰った一部の病院や自治体では既に始まっているところもあるようです。この動きがどうなるかを注目している状態です。



今日書いた話は「今さら」の基礎知識です。ネットで医師相手に議論するのなら、この程度の常識と経緯を踏まえないと困ります。つうか、そういう議論の積み重ねを暗黙の前提として行なわれています。医系技官氏の根本認識である、

    医学を医療に翻訳するときには、ある種の割り切りをしながら、さらに個々にアジャストしているはずです。線を引けないのはプロで無いと思います。
事件は会議室で起こっているのではなく、現場で起こっています。「ある種の割り切り」は必要ですが、「ある種の割り切り」で起こることが具体的に思い浮かばない程度の浅さでは、確かに永遠に議論は噛みあわないと思います。