まじめに読んだ事がなかったので、拾い読みしてみます。
第1条
この法律は、災害に際して、国が地方公共団体、日本赤十字社その他の団体及び国民の協力の下に、応急的に、必要な救助を行い、災害にかかつた者の保護と社会の秩序の保全を図ることを目的とする。
驚くほどの事ではないですが、日本赤十字社の協力が明記されているのが確認できます。それと個人的に注目したいのは、
第2条
この法律による救助(以下「救助」という。)は、都道府県知事が、政令で定める程度の災害が発生した市町村(特別区を含む。)の区域(地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあつては、当該市の区域又は当該市の区の区域とする。)内において当該災害にかかり、現に救助を必要とする者に対して、これを行なう。
災害救助法の対象者は、
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災害が発生した市町村内において当該災害にかかり、現に救助を必要とする者に対して、これを行なう。
第23条
救助の種類は、次のとおりとする。
こうやって見ると趣きが深いところで、救出や避難所の設置はポピュラーですが、医療や住宅の応急修理(あくまでも応急なんでしょうが)、生業に必要な資金の貸与、学用品も救助の対象になっている事がわかります。医療系で目に付くところは、
第24条
都道府県知事は、救助を行うため、特に必要があると認めるときは、医療、土木建築工事又は輸送関係者を、第31条の規定に基く厚生労働大臣の指示を実施するため、必要があると認めるときは、医療又は土木建築工事関係者を、救助に関する業務に従事させることができる。
2 地方運輸局長(運輸監理部長を含む。)は、都道府県知事が第31条の規定に基づく厚生労働大臣の指示を実施するため、必要があると認めて要求したときは、輸送関係者を救助に関する業務に従事させることができる。
ここの「第31条の規定に基く厚生労働大臣の指示」とは、
第31条
こうなっていまして、医療が厚労省の指示に基くのは「まあそんなもの」ですが、「土木建築工事又は輸送関係者」も救助のために厚労省が管轄するとなっているのは「へぇ」ってな感じです。そいでもって、第24条5項があるのですが、
第1項又は第2項の規定により救助に従事させる場合においては、その実費を弁償しなければならない。
ゴメンナサイ、下司の勘ぐりになってしまうのですが、阪神大震災の避難所診療の時に一風変わった命令がありました。避難所診療に出務する事は誰も反対しなかったのですが、誰かが「これは業務命令ですか?」と質問しました。もちろんその医師が災害救助法を知っていたわけではありませんが、出務の形態についての確認みたいなものです。
これに対して「業務命令であるが、あくまでもボランティアである」と言われて「???」となったのを覚えています。なんとなく第24条5項の関連に関しての取扱いの微妙さを病院幹部が意識していたのかもしれません。いや、病院幹部も災害救助法を知っていたとは思えませんから、病院幹部に命令を下した行政当局がその辺の微妙さを言いくるめたのかも知れません。
第25条
都道府県知事は、救助を要する者及びその近隣の者を救助に関する業務に協力させることができる。
第29条
第24条又は第25条の規定により、救助に関する業務に従事し、又は協力する者が、これがため負傷し、疾病にかかり、又は死亡した場合においては、政令の定めるところにより扶助金を支給する。
ここも考えれば微妙な表現で、第33条2項に、
第24条第5項の規定による実費弁償及び第29条の規定による扶助金の支給で、第24条第1項の規定による従事の規定による協力命令によつて救助に関する業務に従事し、又は協力した者に係るものに要する費用は、協力命令を発した都道府県知事の統轄する都道府県が、第24条第2項の規定による従事命令によつて救助に関する業務に従事した者に係るものに要する費用は、同項の規定による要求をなした都道府県知事の統轄する都道府県が、これを支弁する。
修羅場では命令もクソもないのですが、実費であれ扶助金であれ、平時に戻ってから支給されるのは都道府県知事からの協力命令があった者に限られるようです。なるほどなんですが、阪神のときに「業務命令であるボランティア」みたいな珍妙な指示が出た謎が解けた様な気がします。法は難しいものです。
後も色々あるのですがキリがないので飛ばして、費用のところを見てみます。
第33条
第23条の規定による救助に要する費用(救助の事務を行うのに必要な費用を含む。)は、救助の行われた地の都道府県が、これを支弁する。
費用の負担は基本として都道府県のようです。これに対して国庫の負担は、
第36条
国庫は、都道府県が第33条の規定により支弁した費用及び第34条の規定による補償に要した費用(前条の規定により求償することができるものを除く。)並びに前条の規定による求償に対する支払に要した費用の合計額が政令で定める額以上となる場合において、当該合計額が、地方税法(昭和25年法律第226号)に定める当該都道府県普通税を除く。以下同じ。)について同法第1条第1項第5号にう標準税率(標準税率の定めのない地方税については、同法に定める税率とする。)をもつて算定した当該年度の収入見込額(以下この条において「収入見込額」という。)の100分の2以下であるときにあつては当該合計額についてその100分の50を負担するものとし、収入見込額の100分の2をこえるときにあつては左の区分に従つて負担するものとする。この場合において、収入見込額の算定方法については、地方交付税法(昭和25年法律第211号)第14条の定めるとする。
- 収入見込額の100分の2以下の部分については、その額の100分の50
- 収入見込額の100分の2をこえ、100分の4以下の部分については、その額の100分の80
- 収入見込額の100分の4をこえる部分については、その額の100分の90
読んだだけで眩暈がしそうなんですが、頑張って読み解いてみます。国庫負担の基準になるのは、
当該合計額が、地方税法(昭和25年法律第226号)に定める当該都道府県普通税を除く。以下同じ。)について同法第1条第1項第5号にう標準税率(標準税率の定めのない地方税については、同法に定める税率とする。)をもつて算定した当該年度の収入見込額
地方税法第1条第1項第5号とは、
標準税率 地方団体が課税する場合に通常よるべき税率でその財政上その他の必要があると認める場合においては、これによることを要しない税率をいい、総務大臣が地方交付税の額を定める際に基準財政収入額の算定の基礎として用いる税率とする。
基準財政収入額とは
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基準財政収入額 = 標準的税収入見込額 × 基準税率(75%)
わかる事は災害救助法では急場の援助は可能そうですが、それ以上の援助は難しそうだぐらいです。それぐらいは実感としてなんとなくわかります。非常時から平時に切り替わって行く時の対応の変化は、目の当たりにさせてもらいましたから、後は政治決断になるとしか言い様がありません。これはこれからの問題です。