経営優秀公立病院

ある経営コンサルタントのブログ様が平成18年度の自治体病院の経営指標の実績を地方公営企業年鑑から抜き出して作成されております。かなりの労作なんですが、

平成18年度(2006年度)なので少し前にはなりますが、状態としてはさほど変わっているとは思えませんので、現在でも大いに参考になるかと思います。掲載病院数は数えようと思いましたが、眩暈がして出来ていません。参考データとしては平成22年度の総務大臣賞のエントリーで調べた時に650自治体に928病院でしたから、それほどには変わっていないと思います。

ここからある条件でデータを抽出しようと思うのですが、まず経常収益黒字病院を取り出そうとしましたが挫折しました。結構な数でブログに表にして掲載するには無理があったからです。そこでもう少し絞る事にします。総務大臣賞の受賞条件は、経常収益が5年連続以上で黒字で累積赤字が無いことです。連続は判定しようがありませんが、単年度であっても経常収益が黒字で累積赤字が無い病院を経営優秀病院としてピックアップしてみます。

都道府県 病院名 繰入金
(億円)
経常収益
(億円)
繰入金無しでの
経常収益(億円)
累積黒字
(億円)
北海道 岩見沢市立総合病院 5.2 2.1 -2.9 1.5
名寄東病院 0.0 0.1 0.1 1.0
砂川市立病院 6.2 0.2 -6.0 15.5
木古内国保病院 2.1 0.0 -2.1 0.1
国保歌登病院 3.1 0.0 -3.1 0.1
鹿追国保病院 1.7 0.0 -1.7 0.0
青森 浪岡病院 2.8 1.0 -1.8 2.1
国保おいらせ病院 0.7 0.4 -0.3 0.5
国保名川病院 0.9 0.6 -0.3 1.0
岩手 宮古病院 9.8 0.3 -9.5 45.6
胆沢病院 9.1 2.6 -6.5 108.9
久慈病院 7.4 1.3 -6.1 54.5
東和病院 1.9 0.8 -1.1 5.3
国保まごころ病院 1.8 0.2 -1.6 0.0
国保種市病院 1.5 0.0 -1.5 0.5
宮城 精神医療センター 7.9 0.3 -7.6 9.6
秋田 横手病院 1.7 0.1 -1.6 1.0
大森病院 1.2 0.5 -0.7 0.8
山形 酒田病院 5.8 1.9 -3.7 2.4
福島 会津病院 9.9 0.0 -9.0 4.0
南相馬市立総合病院 2.0 0.0 -2.0 1.2
茨城 東海病院 4.5 2.2 -2.3 1.6
群馬 国保鬼石病院 0.7 0.1 -0.6 1.0
富岡総合病院 2.3 0.0 -2.0 1.3
七日市病院 0.2 0.5 0.3 0.1
中之条病院 0.0 0.0 0.0 0.2
埼玉 がんセンター 17.6 2.5 -15.1 16.8
さいたま市立病院 13.6 0.2 -13.4 2.5
秩父市立病院 2.2 0.1 -2.1 2.0
千葉 精神科医療センター 4.7 2.1 -2.6 9.7
救急医療センター 17.2 1.2 -16.0 5.3
リハビリテーション病院 3.4 0.0 -3.4 0.0
船橋医療センター 22.7 0.2 -22.5 0.1
国保旭中央 12.4 3.0 -9.4 11.1
柏病院 2.5 0.0 -2.5 0.0
市原国保市民病院 2.1 0.0 -2.5 0.0
君津中央病院 16.6 0.7 -15.9 0.1
君津中央病院大佐和分院 0.4 0.7 0.3 0.7
東京 府中病院 36.5 7.0 -29.5 25.1
神経病院 28.6 0.0 -28.6 0.9
清瀬小児病院 16.0 0.3 -15.7 1.5
八王子小児病院 11.6 0.0 -11.6 0.5
松沢病院 44.1 0.0 -44.1 1.5
梅が丘病院 16.4 0.0 -16.4 1.5
青梅総合病院 5.7 3.2 -2.5 4.0
町田市民病院 12.7 0.1 -12.6 7.3
公立昭和病院 12.9 0.1 -12.8 7.3
公立福生病院 5.5 0.1 -5.4 2.9
神奈川 こども医療センター 53.1 10.5 -42.6 36.6
うわまち病院 3.2 0.4 -2.8 1.7
厚木市立病院 13.7 1.6 -12.1 10.0
新潟 松代病院 2.0 0.0 -2.0 2.9
柿崎病院 2.9 0.1 -2.8 3.1
妙高病院 3.8 0.1 -3.7 4.6
南部郷厚生病院 0.6 0.0 -0.6 0.0
石川 公立松任石川中央病院 4.3 0.1 -4.2 6.5
福井 すこやかシルバー病院 2.9 1.5 -1.4 3.7
国保上中病院 1.2 0.1 -1.1 0.1
山梨 都留市立病院 0.6 1.3 -0.7 1.3
勝沼病院 0.3 0.0 -0.3 0.0
飯富病院 0.6 0.0 -0.6 0.8
長野 上田市産院 0.0 0.9 0.9 0.9
岡谷病院 4.1 0.7 -3.4 0.7
波田総合病院 1.9 0.0 -1.9 0.8
両小野国保病院 1.2 0.0 -1.2 0.0
岐阜 大垣市民病院 1.9 10.7 8.8 74.6
市立恵那病院 1.8 0.0 -1.8 0.2
国保飛騨市民病院 0.6 0.2 -0.4 1.7
国保ケアホスピスたかはら 0.1 0.4 0.3 1.2
郡上市民病院 1.5 0.3 -1.2 0.8
静岡 市立静岡病院 12.9 0.1 -12.8 4.8
浜松リハビリテーション病院 3.2 0.0 -3.2 0.0
共立湊病院 1.2 0.1 -1.1 2.0
愛知 豊川市民病院 8.5 1.8 -6.7 8.4
小牧市民病院 4.9 0.7 -4.2 9.8
三重 亀山市立医療センター 1.5 0.0 -1.5 0.7
滋賀 公立甲賀病院 4.7 0.8 -3.9 18.4
京都 綾部市立病院 1.2 1.0 -0.2 18.8
精華町国保病院 0.7 0.1 -0.6 0.7
鳥取 国保日南病院 1.6 0.6 -1.0 13.3
岡山 岡山病院 5.3 0.1 -5.2 0.1
日生病院 1.3 0.3 -1.0 0.3
吉永病院 0.4 0.2 -0.2 1.6
赤磐市立熊山病院 2.0 0.1 -1.9 0.3
美作市立大原病院 1.4 1.1 -0.3 1.8
鏡野町国保病院 0.4 0.1 -0.3 1.5
広島 瀬戸田病院 5.0 1.2 -3.8 2.7
神石三和病院 4.3 0.2 -4.1 5.0
公立みつぎ総合病院 2.7 3.1 0.4 13.8
府中市立湯が原病院 1.0 0.2 -0.8 0.6
公立世羅中央病院 2.1 0.1 -2.0 0.1
山口 岩国市立美和病院 1.3 0.1 -1.2 0.9
周防大島町立大島病院 2.9 0.4 -2.5 0.4
徳島 国保勝浦病院 0.3 0.1 -0.2 0.6
香川 西香川病院 1.0 0.2 -0.8 0.2
国保土庄中央病院 0.8 0.7 -0.1 4.6
綾川町国保陶病院 0.2 0.6 0.4 3.7
三豊総合病院 2.8 6.6 -3.8 8.7
愛媛 市立宇和島病院 1.7 3.4 -1.7 6.6
大洲病院 1.2 0.0 -1.2 0.0
久万高原国保病院 0.4 0.4 0.0 1.1
高知 国保梼原病院 0.7 0.1 -0.6 0.4
福岡 芦屋中央病院 0.6 0.8 0.2 5.4
鞍手町立病院 1.7 0.1 -1.6 0.0
公立八女総合病院 3.2 0.2 -3.0 2.8
長崎 かたばる病院 0.5 0.1 -0.4 0.1
上五島病院 2.7 0.7 -2.0 1.9
対馬病院 2.1 0.3 -1.8 5.7
公立新小浜病院 0.4 0.5 0.1 0.0
熊本 河浦病院 0.8 0.0 -0.8 0.3
多良木病院 0.8 0.6 -0.2 19.4
大分 中津市民病院 0.9 1.6 -0.7 1.7
山香病院 0.7 0.30 -0.4 5.8
宮崎 宮崎市立田野病院 1.3 0.2 -1.1 0.2
諸塚村国保病院 1.0 0.0 -1.0 0.6
西郷病院 0.8 0.0 -0.8 1.0
高千穂町国保病院 0.8 0.3 -0.5 6.9
鹿児島 大島病院 12.2 1.6 10.6 20.5
鹿児島市立病院 2.0 1.1 -0.9 8.7
枕崎市立病院 0.0 0.2 0.2 0.3
霧島医師会医療センター 1.3 0.4 -0.9 0.9
公立種子島病院 0.5 0.0 -0.5 0.0


数えてみると122医療機関になります。公立病院全体の13%ぐらいになりますが、これを多いと見るか、少ないと見るかは感覚により変わるかと思います。累積赤字があっても単年度経常黒字の医療機関数も含めると、数え間違いあるかもしれませんが245医療機関で26%ぐらいになります。あくまでもちなみにですが、かの有名な坂出はこの年度には累積赤字が計上されており経営優秀病院リストから漏れています。

ただし経常黒字の内容も様々である事も確認できるかと思います。ちなみに表の中で黄色の背景をつけた医療機関自治体からの繰入金を除いても経常収益が黒字の医療機関ですが、これは14医療機関だけになります。残りは繰入金により収支を黒字にしています。どういう基準と言うか計算法で繰入金が行なわれるかよくわからないのですが、黒字の医療機関であっても行なわれているところはあります。

この辺は病院規模でも当然変わりますが、金額もかなり差があります。たとえばなんですが東京には20ヶ所の自治体立の公立医療機関があり、その半分の10ヶ所が経常収益黒字、累積も黒字なっています。全国平均からしても非常に優秀な成績です。ただ良く見ると繰入金の額も少々大きい感じがしないでもありません。元データには医業収入もありますから、東京の経営優秀病院をピックアップしてみると、

都道府県 病院名 医業収入
(億円)
繰入金

(億円)
繰入金/医業収入 経常収益
(億円)
東京 府中病院 177.4 36.5 0.21 7.0
神経病院 30.5 28.6 0.94 0.0
清瀬小児病院 52.7 16.0 0.30 0.3
八王子小児病院 18.8 11.6 0.62 0.0
松沢病院 57.7 44.1 0.76 0.0
梅が丘病院 13.6 16.4 1.21 0.0
青梅総合病院 134.9 5.7 0.04 3.2
町田市民病院 90.6 12.7 0.14 0.1
公立昭和病院 136.3 12.9 0.09 0.1
公立福生病院 37.7 5.5 0.15 0.1


指標を「繰入金/医業収入」にして見ましたが、見事にバラバラで、あえて傾向を示すと都立は比率が高く、都立以外は低そうだとの感じがします。これを全国の自治体立病院で較べてみると・・・ゴメンナサイ、体力と気力がありません。表全体を斜め読みする感じでは、都立病院はかなり繰入金の比率が高いんじゃないだろうかぐらいの印象ぐらいです。

全部をやる気力も時間も無いのでピックアップの参考データだけ示しておきます。データは2007年度のもので2009年度には変わっている部分もあるかもしれませんが、東京の都立病院の「繰入金/医業収入」の平均は赤字都立が0.24、黒字都立が0.67、全体で0.54になります。都立病院全体の平均を経営優秀病院が1ヶ所も無いのぢぎく県立病院にあてはめてみると、

病院名 医業収入
(億円)
現状 東京基準
繰入金
(億円)
営業収益
(億円)
繰入金
(億円)
営業収益
(億円)
尼崎病院 106.1 9.6 -4.2 57.3 43.5
塚口病院 48.0 3.8 -9.8 25.9 12.3
西宮病院 76.2 8.8 -3.6 41.1 28.7
加古川病院 46.0 3.3 -6.1 24.8 15.4
淡路病院 76.9 11.7 -7.4 41.5 22.4
光風病院 20.8 14.2 -6.5 11.2 -9.5
柏原病院 35.5 6.4 -11.8 19.2 1.0
こども病院 60.5 16.1 -5.0 32.7 11.6
成人病センター 93.0 12.2 -5.9 50.2 32.1
姫路循環器病センター 93.9 10.9 0.9 50.7 40.7
粒子線医療センター 18.0 6.1 -3.1 9.7 0.5
災害医療センター 17.7 4.0 -0.7 9.6 4.9


経営は劇的に改善されるのがわかります。ただ最後に残る疑問は、都道府県や自治体の財政規模・余力の差により繰入金額が変わるのは理解できるとして、たとえば同じ都立病院でも大きな差があるのがわかります。後は診療科の特異性とか、病床数、拠点病院としての性格が考えられますが、そこまで調べ上げる余力が無いので「どうしてだろう?」にさせて頂きます。