県外受診統計

患者調査を見ていた時に気になったので少し触れておきます。患者調査には都道府県ごとの県内受診者、県外受診者の統計データがあります。ここから言える事はさほど多くないのですが、医師の実感程度の意味はあると思います。今日は比を中心にデータで出しますが、外来でも、入院でも県外受診の比率が高ければ「多いなぁ」の感想を持つだろうぐらいです。見えている範囲がそうなるからです。今日はその程度のデータの分析です。肩の力を抜いてリラックスしてもらって結構です。まずは全国データの推移です。

分類 1996 1999 2002 2005 2008 2011
病院入院(%) 6.3 6.2 6.0 5.9 5.6 5.8
病院外来(%) 3.8 3.8 3.8 3.9 4.1 4.4
診療所外来(%) 2.5 2.4 2.4 1.8 2.1 2.1
これ前の時も思ったのですが2011年データは東日本大震災の影響がどうもありそうです。とくに首都圏の外来数がそれまでに比べて増えており、気持ちハズレ値的な感じがしています。結論は2014年度データが必要なのですが、おおまかに言ってそんなに変わっていないぐらいに解釈しています。都道府県ごとのデータですが47都道府県を出すのは大変な上に見にくいので、今回は首都圏と近畿圏に絞ってみます。データ上も県外受診の比率が高いのも理由です。まず病院入院です。そうそうこの後の表の数値もすべてパーセントです。作ってから抜けて事に気が付いたのでゴメンナサイ。
都道府県 1996 1999 2002 2005 2008 2011
首都圏 茨城 8.6 8.1 7.7 8.2 9.0 8.7
栃木 8.1 7.5 7.5 8.9 8.3 9.0
群馬 7.8 8.6 7.5 8.0 7.8 8.7
埼玉 15.0 15.7 13.7 13.6 13.2 14.1
千葉 13.7 14.3 14.3 12.4 12.6 11.3
東京 14.6 14.0 13.9 14.2 13.6 13.2
神奈川 8.3 9.1 8.6 8.6 7.7 7.9
近畿圏 滋賀 7.3 6.4 5.8 5.6 5.0 5.0
京都 9.7 9.5 9.9 8.3 7.0 6.8
大阪 7.7 6.9 6.3 6.8 6.8 7.2
兵庫 5.0 5.8 5.1 5.1 4.6 4.6
奈良 11.9 12.3 7.8 9.4 10.0 11.0
和歌山 4.9 5.0 5.2 5.9 5.9 6.9
あくまでも「比」なんでご注意頂きたいのですが、とりあえず首都圏の方が県外入院の比率が高いのは良くわかります。首都圏で一番低い神奈川と近畿圏で2番目の兵庫が同じぐらいでからねぇ。それとこれは「へぇ」と思ったのですが首都圏では東京より埼玉の方が県外入院が多い事がわかります。近畿圏でも大阪より奈良の方が多いのも発見でした。この病院入院の県外比率が病院外来でも同じ傾向にあるかどうかが次の興味になります。
都道府県 1996 1999 2002 2005 2008 2011
首都圏 茨城 2.7 2.5 3.3 2.5 3.4 4.4
栃木 5.6 5.6 6.0 5.0 6.8 7.8
群馬 4.4 6.3 5.5 5.9 4.7 5.3
埼玉 4.0 4.1 3.2 3.5 3.0 2.7
千葉 5.6 5.2 6.8 3.3 3.6 5.3
東京 14.0 14.1 14.0 14.3 14.2 15.3
神奈川 3.1 4.1 4.0 4.1 5.0 3.7
近畿圏 滋賀 1.9 1.9 2.1 1.6 2.4 2.4
京都 5.4 4.9 6.3 9.2 6.3 5.9
大阪 4.3 4.4 3.6 4.4 6.0 6.7
兵庫 3.9 1.9 2.1 2.3 2.2 4.5
奈良 2.8 5.7 5.5 5.9 3.5 5.1
和歌山 5.7 5.2 3.9 3.8 3.9 4.2
病院外来は入院とはやや違った動向になっています。ややと言うかぶっちゃけ東京の病院外来の県外比率が突出しています。いわゆる「○○都民」の受診状況を反映しているとすれば良いのでしょうか。東京で比が高いと実数も多くなるのですが、東京の都外からの受診者数は、おおよそ栃木とか群馬の病院外来数に匹敵するぐらいになっています。これに対し近畿圏は全国平均と較べてもらうと判りやすいのですが、大阪、京都が少し高いぐらいでほぼフラットになっています。ついでですから診療所のデータも出しておきます。
都道府県 1996 1999 2002 2005 2008 2011
首都圏 茨城 2.0 1.4 2.9 2.8 1.4 1.8
栃木 2.1 2.2 4.3 5.0 2.7 1.7
群馬 1.5 2.2 2.1 3.1 2.2 1.2
埼玉 1.9 3.0 1.8 1.3 2.2 2.2
千葉 1.8 1.5 2.3 1.9 1.5 2.8
東京 10.5 9.5 9.2 6.2 8.3 5.6
神奈川 2.1 2.2 1.6 1.3 1.5 2.6
近畿圏 滋賀 1.0 1.1 1.5 1.0 0.8 1.1
京都 2.3 3.6 3.2 1.3 2.5 2.1
大阪 4.2 4.0 3.2 3.1 2.3 3.4
兵庫 0.8 1.5 1.1 1.2 1.2 1.4
奈良 5.3 3.5 4.5 3.1 3.5 2.7
和歌山 2.9 3.5 2.5 1.4 2.0 2.9
ここも病院外来同様に東京が多いのですが、病院外来よりは少ないようです。 この程度のデータでは大した事は言えません。それでもあえて言えば他地域に比べると首都圏の入院時にはかなり県外移動が行われているぐらいでしょうか。県外入院と言っても流出者数が判らず差し引き勘定まで出せないのですが、東京に流れ込む流れがある一方で、東京を含む他の県からの流入も多いぐらいです。外来が割とシンプルに○○都民の影響と言えるのに比べると因子は多そうなところです。あえて言えば、いつも指摘される都道府県境と生活圏の差が出ているぐらいです。たとえば地図上の東京都と生活圏(≒ 診療圏)の東京都がかなり違うぐらいです。地図上と生活圏の東京都の違いは外来では地図上の東京都を指向するのに対し、入院ではもっと広域になっているぐらいです。 後は「比」で較べている感覚の相違です。お隣の都道府県が巨大であれば、そこから少し流れ込んだだけで県外入院の比率が跳ね上がる関係です。近畿圏で言うと奈良の県外入院比率は高いですが、奈良の入院総数は12700人、そのうち県外入院は1400人です。奈良が県外入院で一番影響を受けやすいと考えられる大阪の入院数は9万1000人です。つまり大阪の入院のうち1.5%ほどが奈良に流れただけで近畿圏No.1の県外入院比率になってしまうです。首都圏も似たような関係の部分もある気はします。もっとも「比」の説明だけでは首都圏は説明に苦しいところがあって、大阪と奈良は「6.5:1.0」の差がありますが、東京と神奈川・埼玉・千葉は「2:1」ぐらいなのでスケールがチョットと言うところです。 でもって今日はオシマイです。実はこのデータで狙っていたのは東京の都外受診、都外入院が年々増えているデータが出るんじゃないかの期待でした。ところが出してみると○○都民の外来受診傾向が出ただけで、他はこれと言って興味を惹くようなものが出なかった次第です。なのでここまで調べて後は広がらずでした。それでも一応調べたデータなので埋め草で「出しときます」ぐらいです。こんな日もあると御了承下さい。