松前病院ムック・追加補充再検証編

もう少しだけ情報が入手できました。誰からの情報であるかを明かしても差し支えないと思っていますが、私の判断で情報提供者は伏せさせて頂きます。たぶん読んでいれば推測できる気もしますが、あえて伏せさせて頂きます。また情報自体もその気で調べれば公開可能なものですから、内部情報の暴露みたいなものではなく、あくまでも追加補充程度のものです。


2006年度以前

まず繰入金ですが地方公営企業法にはこうなっています。

第十七条の二

 次に掲げる地方公営企業の経費で政令で定めるものは、地方公共団体の一般会計又は他の特別会計において、出資、長期の貸付け、負担金の支出その他の方法により負担するものとする。
一  その性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費
二  当該地方公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難であると認められる経費

2  地方公営企業特別会計においては、その経費は、前項の規定により地方公共団体の一般会計又は他の特別会計において負担するものを除き、当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てなければならない。

具体的には大阪府資料を御参照下さい。まあ性質としては経営ための赤字補填では必ずしもなく、正規の病院収入として良さそうです。病院会計的にも繰入金を含んで黒字にすれば文句なしで、さらに言えば黒字であっても受け取って恥ずべき性質のものでは無いとしても的外れではなさそうです。

でもって現状は繰入金を収入に算入しても赤字の公立病院は数多くあります。診療報酬改訂で少しは変わったとは言え、地方の中小公立病院の経営は苦しいものがあります。この赤字が出ると言うのはどういう事かですが、手持ちの現金がスッカラカンになる事を意味します。給料も、光熱費も、水道代も、薬品などの医療材料の購入もすべてストップします。平たく言えば病院が閉じられます。それは困ると言う事で、繰入金を行った上で赤字補填を自治体は行います。

総務省公立病院改革プランの概要を注目してみたいのですが、特別損益と言う項目があります。どうもこれが赤字補填に関係するところのようで、2006年度の特別利益はゼロとなっています。これが何を意味するかと言えば、

    町からの赤字補填がなかった
これがいつからであったかですが、これは2001年度から6年間続いていたそうです。それ以前は年間5000万円(たぶん)が足りないながらも補填されていたそうですが、2001年度からパタッと止まり、病院は自治体以外からの借金で穴を埋め、2006年時点で4億3791.9万円の不良債務に膨れ上がったていたと解釈するそうです。単純計算ですが従来どおりの赤字補填があれば1億円ぐらいであったぐらいには言えます。

で、なぜに赤字補填が2001年度から2006年度まで中止にされたかの理由については・・・不明です。


2007年度

院長事務長のコンビは2005年11月赴任で宜しいかと思います。前にも書きましたが、2005年11月赴任ですから町からの予算問題になると2005年度はもちろんの事、2006年度予算に反映させるのも難しいところです。病院経営建て直しのために赤字補填の復活をまず目指されたとして良さそうです。赴任当時不良債務は4億3791.9万円ですが赤字補填のための借入金は6億円に達していたとされます。この6億円の根拠ですが総務省公立病院改革プランの概要の2006年度に

    流動負債:6億2093.4万円
    うち一時借入金:5億7000万円
このあたりの数字かと推測しています。院長事務長コンビもただの定期異動で赴任したわけでなく、病院建て直しを託されてのものとするのが妥当ですから、赤字補填金5000万円が復活が認められたと言うところかもしれません。前年度が空欄であった特別利益に5000万円が記されています。そいでもって5000万円が入った分だけこの年の病院会計は改善したとなっています。


2008年度

この年は総務省が公立病院経営改革の大号令を下した年として良いかと存じます。号令だけではなく公立病院の不良債務解消のために2008年度限りの公立病院特例債が認められています。ここで個人的によく判らなかったのは、会計上の2007年度の不良債務が4億6583.4万円なのに松前町の特例債発行額が3億5800万円である事です。差し引きすると1億円ほど足りない事になります。ここについては情報によると薬剤の在庫、資材の在庫分等を計算し直すと3億5800万円で足りたそうです。

特例債で不良債務が病院会計から一掃されたのですが、この年に限り赤字補填金がドカンと2億円出たそうです。根拠としては松前町立松前病院改革プランの平成20年度実績の特別利益が2億円となっています。この年度は結果として、

  1. 病院会計からの不良債務の一掃
  2. 経常損益の大幅な改善
  3. 純損益の黒字化
ここで今回の情報のある意味のキモですが、
    町からの赤字補填は2007年度の5000万円、2008年度の2億円のみであった
もちろん公営企業会計に基づく繰入金はあるにせよ、赤字補填はこれ以降はなかったそうです。ちょっとだけ補足しておきますが、
  • 経常損益とは赤字補填等の特別損益を含まない単年度収支
  • 純損益とは特別損益を含んだ単年度収支
これぐらいで理解すれば宜しいかと思います。


2009年度以降

非常に判り難い表(単位は万円)をまず示します。

年度 2006 2007 2008 2009 2010 2011
繰入金 8858.6 13948.4 29666.3 29719.8 29950.4 29838.1
特別利益 0.0 5000.0 20000.0 5114.8 5114.2 5114.2
小計 8858.6 8948.4 9666.3 24605.0 24836.2 24723.9
不採算地区病院の
運営に要する経費
0.0 0.0 0.0 12300.0 12300.0 12300.0
8858.6 8948.4 9666.3 12305.0 12536.2 12423.9

どうも「特別利益」に赤字補填も記載されると前提していますが、2007年度に5000万円、2008年度に2億円入っているのは符合します。一方で2009年度から5000万円余りが計上されています。この5000万円は何かになりますが、どうやら特例債3億5800万のの7年割の分として特別収益になるそうです。証拠としては算数で、
    3億5800万円 ÷ 7(年)= 5514万2857円
2009年度の末尾が8000円になっているのは、千円未満の端数の857円が7年分で6000円になるのでこれを初年度で調整したぐらいでしょうか。この特例債の償還分が病院収入になる根拠は基本的繰入金(ルール分)として「公立病院特例債元利償還経費」があるので、これに基づくもののようです。もう少し具体的には大阪府資料に、

H20に限って、国が公立病院の不良債務解消の財政支援策として借入を認めたもので、本市も1880百万円を借入れ同額不良債務を圧縮。H21からH27まで償還。その元利償還分全額を繰入

特例債の元利のうち利息分は交付税で処置されるので元分が病院の特別収益になるぐらいの理解で宜しいかと思います。ほいでもってこの特例債分を引いた残りを小計としていますが、それでも2009年度から2億4000万円ぐらいあります。この2億4000万円ぐらいのうち1億2300万円は不採算地区病院の交付金を受けられたためとされています。これも少し調べてみると2009年度から制度改正があったようで、従来は100床未満(松前病院は100床)が対象で、他もたぶん条件があったと推測していますが、とにかく2009年度から適用を受けられるようになったです。

この不採算地区病院交付金分をさらに引いたのが「計」なんですが、2006〜2008年度辺りと較べると3000万円以上増えています。ここについてですが、どんな名目の交付金か把握できなかったのですが、従来は1床当たり40万円台の交付金であったものが70万円台に引き上げられたそうです。その差が30万円ぐらいで松前病院は100床ですから帳尻は合いそうな気はします。つか「そうである」の情報を頂いています。


院長事務長コンビの功績再評価

以上より、

  1. 不良債務を特例債利用により帳消しにしただけではなく、不良債務分をそのまま繰入金として病院の収入に転じた
  2. 新たな交付金収入により病院経営を単年度(経常損益も純損益も)で億単位の黒字にした
  3. 町からの赤字補填はは2007年度5000万円、2008年度2億円の計2億5000万円のみである
単年度で億単位の黒字は大きくて、特例債分の5000万円が消えても余裕で黒字を計上できる事になります。言ったら悪いですが、松前町のようなところで、医師10人を抱えて元気な黒字病院を実現させたと言うのは驚嘆しても良い気がします。経営と言うか医療上も種々の改革を行われていますが、それについては今日はあえて省略します。これにより一般企業で言う内部留保みたいなものは今年度時点で3億円に達したそうです。


事務長騒動の真の原因は?

北海度新聞しかソースがありませんが、事務長の定年後再雇用問題について、異常ともいえる確執が病院側と町側に生じたのは間違いありません。これも結果として医師の大量辞職に至っています。なぜに町がここまで事務長問題に張り切ったのだろうかです。たとえば2008年度に策定された松前病院経営改革プランですが、

年度 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012
経常収益 116692.7 116047.2 118911.0 117378.9 118939.5 120449.1 122114.0
経常費用 130830.2 127917.7 125145.2 122135.1 122323.9 121387.8 119983.3
経常損益 -14137.5 -11870.5 -6234.2 -4756.2 -3384.4 -938.7 2130.7
特別利益 0.0 5000.0 5000.1 10114.9 10114.3 10114.3 10114.3

このうち特別利益を赤字補填と解釈すると2009年度に純損益は黒字化し、経常損益も2012年度に黒字化し、不良債務も2011年度に解消するとはなっていますが、特別利益(赤字補填)も合計で5億円ほど必要になります。これよりも町の負担が少なくなっていると私は素直に感じます。う〜ん謎だ。あえて言えば2007年度・2008年度の赤字補填がなくとも結果としては経営再建は可能であったので、その分の拠出で恨みを買ったとか? ただ確執はこれ以前にもあったようです。どうも松前病院はもともと道立病院で、これを町立に移管した経緯があったようです。松前病院は平成2年11月1日設立となっていますからこの時からしれません。でもってこの時に「退職手当見合い金」なるものを町は道もらっていたそうです。およそ1億円強ぐらいだったそうです。これは結局病院側には渡らず町が使い込んでしまった件です。もう一つ情報として松前病院は町立江良診療所も一体運用していますが、これについての補助金700万円も町が病院に「渡してないらしい」です。 どうもなんですが赤字補填の件といい、本来は病院に渡るべきはずの交付金補助金の類を町が使っていた部分がどうも多かった気がします。ここも微妙な表現ですが、交付金も様々なヒモが付いており、病院に絶対に渡すべきものは渡しているでしょうが、本来の趣旨からすると通常は病院に渡すのが望ましいの類のものをかなり町が押さえ込んでいた疑惑です。これらについての引渡し交渉の矢面に事務長は立っていた可能性を考えます。その中でも事務長が辣腕を揮ったのはやはり2007年度、2008年度の赤字補填の拠出で、この時の怨念が町側にかなり残っていた見方です。 ここからの推測の展開ですが、院長も事務長も見込まれて赴任したはずと思っていますが、町側の意図は「町が1銭も病院への支出を増やさずに経営を改善させる」だったんじゃないかとも思っています。しかし現実には町が使っていた交付金を病院に奪われただけではなく、赤字補填の2億5000万円まで拠出させられて不平不満がテンコモリみたいな状態です。 もう一つ別筋のアングラ情報があります。これは前回のムックの時にはあえて伏せたのですが、松前病院はかなり老朽化しているようです。2008年度策定の松前病院改革プランにも、

病院は老朽化してきているが財政的に改築は難しく、維持補修しながら地域医療を確保するため経営健全化を目指す。

4億の不良債務を含む6億円の借金がある状態で改築なんて夢物語だったのでしょうが、最近になり新築の話が水面下で浮上しているとされます。この新築計画についても町側と病院側で確執が生じたのではなかろうかです。ある種の北秋田状態です。病院側は現時点での新築に反対した可能性もありますし、仮に賛成したとしても新病院の構想で対立したです。大雑把には、

    町議会:目一杯豪華案
    病院側:精一杯質素案
アングラ情報では総工費25億円となっていましたが、この手の公共事業の常でなぜか最終的にはさらに膨らむ事が多々あります。豪華が必ずしも悪いとは言いませんが、ロハで建つわけがなく、工費はなんだかんだで病院の負担になります。ここまで短期間で経営を軌道に乗せた病院側としては、これから松前町に必要な規模の病院を身の丈サイズで作りたいぐらいです。一方で町側はより豪華な方が潤う関係者多数です。

町から見れば豪華案推進の障壁は院長と事務長です。このうち事務長が定年でやっといなくなるかと思えば再雇用の提案があり「トンデモナイ」の激しい反応を見せたです。ここについては傍証的なマスコミ情報もあり、前回の時に引用した北海道新聞ですが、

「病院事務局長の上位やこれに準ずる人の採用には町長の同意が必要」との見解をとる町側との話し合いは平行線をたどった。

これは定年で去った事務長の後釜に町の息のかかった人物を是非とも送り込みたいの意気込みではなかったろうかです。町側から見れば、

  1. 黒字になったと言っても交付金が増えただけの事で「誰でもできる」
  2. 黒字分のうち町に取り戻せるものは1円でも奪回したい
  3. 病院新築を推進させたい
  4. 院長権限を制約したい
北海道新聞記事だけでは単なる権限争いですが、その裏に利権問題が濃厚に絡んでいた可能性です。それと町がたぶん今でも見えてないのは、誰のお蔭で医師がこれだけ集まって元気な病院になっているかです。これもまた「誰でもできる」ぐらいであった気がしています。ま、これとて憶測に過ぎず真相はわかんないです。もっと単純に
    余所者がエラそうにしやがって
こういう感情は地方と言うか田舎に行くほど濃厚になり、時に問答無用の正義になります。病院と言う性質から医師が余所者であるのは認めるとしても、事務部は地元出身者のテリトリーみたいな感覚からの反発です。結果として前事務長も去りますが、院長も含む多くの医師もまた去ります。火を見るよりも明らかに病院経営は再び傾き、病院新築の話なんて藻屑のように消え去って行くと思います(案外平然と進められたりするのが地方政治の怖いところですが・・・)。最後に松前町民様からのコメントを紹介しておきます。

松前町出身で今も住んでいる町民でーす。^ー^

昨日、この話を家族から聞きました。私自身、病院にお世話になる事は、ほぼありませんが、町民の大半は、「超議員全員辞めても別に困らない。院長先生が居なくなると困る。」というものです。

議会では、根拠の無い話を持ちだして罵倒したりとひどい扱いだったそうで、院長の気持ちを察します。

それでなくても、実際に黒字経営という結果を出しているんだし、そうした面を考慮しても、事務局長の人事に関して”たかが町議が”口出しする権利は無いと思います。それが、黒字化に必要な要素なのですから。

20万円をケチる事というよりも、院長が主権を効かせている事に町議が腹を立てたように思いますが、それこそ、自分達の私利私欲しか考えておらず、そこに住む町民の事は果たしてどこに行ったのやら・・・?

金子なんちゃらさんが、「損失小さいは無いのでは?」とか言っているのも疑問ですが、院長も居なくなり議員も町民から叩かれて、益々衰退していくシナリオが見えました。

今後の議員の対応にもよりますが、早い所、この町を出ようかなと言う気にさせられた出来事でした。

尚、町立病院で働く医療従事者及び医師の皆さんに、思わぬ誤解が飛ばぬように記しておきますが、病院側とは何の繋がりもありません。一町民としての意見を書かせてもらいました。

医療関係者が思い浮かべている言葉は唯一つ「覆水盆に返らず」です。せめて盆に新たな水が再び注がれるように祈っておきます。ただもし新たな水が注がれても、また引っくり返してこぼしそうな懸念はありますねぇぇ。