シスメックスの技術情報

シスメックスは名前だけ聞くと、どこかの多国籍企業みたいな印象を受けますが、もちろん国内企業で検査機器や検査試薬の開発・販売を行っている会社です。今日のお話に関係するところで単純化すると、インフルエンザの簡易検査の製造販売を行っている会社とぐらいに理解しても差し支えありません。

新型インフルエンザに対する簡易検査の精度は低いとされています。神戸の騒動のときでも半分ぐらいは陰性だったとの情報もどこかにあったはずですが、とにかく従来の季節性より感度は悪いというのが今の定説です。これに関連するもので、御紹介するのはシスメックスから郵送されてきた技術情報です。企業からの情報なので、その点はご留意頂きたいのですが、とりあえず冒頭には、

ポクテムSインフルエンザおよびポクテムインフルエンザA/B
新型インフルエンザウイルス(A/HlN1)との反応性に関して(第2報)
 平素は弊社試薬に格別のご愛顧を賜り、厚く御礼申し上げます。

 さて、ポクテムSインフルエンザおよびポクテムインフルエンザA/Bの、新型インフルエンザウイルス(A/HlNl)に対する反応性試験結果を、以下の通り報告させていただきます。

どうやら検査キットの感受性を新型で検査した報告のようです。技術情報の日付は11/16になっていますが、届いたのは昨日です。どこで試験をしたかと見てみると、

1.試験実施機関

 本試験は、兵庫県立健康生活科学研究所とシスメックス株式会社で共同実施しました。

兵庫県立健康生活科学研究所の業務概要を確認すると、

○業務概要

  新型インフルエンザ、食品や医薬品による健康被害等の危機管理に対応するため、健康福祉事務所等と連携しながら、危機管理に直接関わる調査研究・試験分析業務を実施します。

担当機関としては問題無さそうですし、共同実施となっているので兵庫県立健康生活科学研究所もそれなりに責任を持った技術報告と受け取る事にします。それでもって検査に用いられたキットなんですが、

  1. ポクテムS インフルエンザ
  2. ポクテム インフルエンザA/B
検査結果自体は2つとも実質同じなので、ポクテム インフルエンザA/Bの検査結果を引用します。
結果の見方として、HA価の力価が左から右に向かって下がっています。右の弱い力価で検出できるほど、感度は高いと解釈したらよいと思うのですが、検査結果だけを見ると、新型も季節性も感度はほぼ同等もしくは新型の方がやや高い結果になっています。この結果を受けて、

下記のとおり、新型インフルエンザウイルス(A/HlNl)を検出することが確認されました。

個人的には「へぇ〜」と思いましたが、皆様はどう思われますか。実はと言うほどの事はありませんが、この技術情報を当院のスタッフと一緒に読んだのですが、誰でも思いつく疑問を質問されて少々困りました。どんな感じの会話と言うか質問だったかですが、

    職員:「・・・と言う事は新型の方が検査の感度が良い事になりますよねぇ」
    医師:「検査の結果からは、そうやなぁ」
    職員:「じゃ、なんで新型の検出率が悪いんですか?」
    医師:「なんでやろ」
    職員:「私らの検体の採り方が悪いんやろか?」
    医師:「それは関係ないやろ。別にうちのデータなんてどこにも報告されてへんし」
    職員:「季節性も新型と同じぐらい検出率は悪いんじゃないでしょうか?」
    医師:「はっきりしたデータは見たことないんやが・・・」
    職員:「先生、調べといてね♪」
    医師:「・・・・・」
本当は新型のデータはまだそろってないとか、こういう検査と実際の臨床には相違が生じるみたいな、わかったようなわからないような返事をして誤魔化したのですが、気になると言えば気になる技術情報です。もちろんこの技術情報一つで、あれこれ決め付けてしまうのは良くないのですが、何か参考になる情報があれば教えてください。