神戸の集団接種を巡るまとめのようなもの

またこの話題かと言われそうですが、御容赦下さい。例のコントにしようと思ったのですが、余りにも深刻すぎてこれまで何回か書いた「まとめ」的な物にします。集団接種を企画したのは神戸市行政と神戸市医師会です。どちらがもちかけたのかは不明ですが、神戸市医師会新型インフルエンザ対策会議で定期的に連絡がある関係なので、ここは双方の阿吽の呼吸にしておきます。

私は内情なんてものは知る立場で無いので、あくまでも公式に通知された情報だけで話をまとめているのですが、


日付 事柄
11月18日 ・インフルエンザ対策会議にて神戸市行政と市医師会が集団接種計画について合意
・ワーキンググループが実施計画(案)を策定
11月20日 ・ワーキンググループにて神戸市行政が否定的見解を発表
・集団接種を小規模にする案を持ち帰り検討
11月25日 ・医師会、行政、小児科医会の見解を確認
・集団接種計画は白紙に戻る
12月2日 ・神戸市が詫びを入れて計画再始動
12月5日 神戸新聞に12/13に神戸で集団接種を行うと報道(12/4に判明との事)
12月7日 ・どうやら正式決定(神戸市HPが12月7日更新と記載)
12月8日 神戸新聞が詳細を掲載
12月9日 ・医師会員に決定のFax送付


ちょっと笑ったのは
    12月8日報道発表 → 12月10日必着の往復はがきで申し込み
つまり神戸市民が集団接種を申し込もうと思ったら、12月8日にこの情報を知り、翌日の12月9日までに往復はがきを投函しないと間に合わないという事です。市民から抗議が出ないか心配しておきます。考えれば申し込みを受けた方も大変で、12月10日の締め切りの後、12月11日には当選者を決め、当選者には平成21年12月9日付神戸市医師会新型インフルエンザ対策会議「新型インフルエンザ関連情報第45報」によれば、

12月10日必着分まで有効とし、抽選により接種者を決定する。当選者には実施要領や問診票を送付する。

たぶん往復はがきでの申し込みですから、外れた人にも通知しているかもしれません。落選者はともかく、予定接種人数は1620人ですから、半端じゃない事務作業のように思います。


さてとこの問題には幾つか気になるコメントが寄せられているのですが、まずは内猫様より、

    人口150万人の神戸市では、
    10000人を超える予防接種が行われた場合、接種促進や小児科医師への負担軽減の効果があると思われる。
    ,br> たった、1600人に実施する意義は何であろうか。
    局長が、「行政もやっています」というホーズを単に見せるためであろうか。

接種予定者は1620人なんですが、これが一度白紙に戻って再始動したときに変化があったかです。これは平成21年11月27日付神戸市医師会新型インフルエンザ対策会議「新型インフルエンザ関連情報第43報」なんですが、

 神戸市豚師会としては関連情報第40報でもお伝えしたとおり、罹患率、重症化率も高い小児に対して本来は前倒しの実施をすべきとの認識を持っておりましたがワクチン供給量の絶対的な不足から、県からも当初は対応しないとの通達が山されたこともあり、なんらかの方策を模索していたところです。その後、多くの小児科医療機関からも集団接種の要望があったこともあり、今回県からも集団接種を前提に特別枠でワクチンを早急に供給していただけるとの確約も得たため具体的な実施計画を策定するに至ったという経緯があります。

ここにある

    今回県からも集団接種を前提に特別枠
神戸市は県からの配給が決まった時には集団接種実施予定でしたから、1歳児から小学3年生までのワクチン配給がレギュラーボトルで2本(集団接種計画がなければ驚きの4本です)でした。これが白紙に戻った後、医療機関に配給されたかどうかです。確証はありませんが、どうも配給されていないように思われます。これは平成21年12月3日付神戸市医師会新型インフルエンザ対策会議「新型インフルエンザ関連情報44報」に手打ちの経過として、

その後行政側から非公式に謝罪と集団接種を復活したい旨の打診が重ねてありました。そして昨日(12月2日)新型インフルエンザ対策会議の席で冒頭に

こうありますから、交渉中であったので集団接種分は配給されずに取り置かれたと考えるのが妥当です。つまり神戸の集団接種の人数は最初から1620人であったと考えます。この1620人も県からの配給であれば神戸市や医師会はどうしようもないと考えたいところですが、12/8付神戸新聞に、

 子どもを対象にした新型インフルエンザワクチンの集団接種が8日、兵庫県内で初めて神河町粟賀町の町保健センターであった。小学校1〜3年の児童や幼児ら約100人が接種を受けた。

 品薄状態のワクチンを効率的に使い、感染者の多い小児に迅速に接種するため、神崎郡医師会と神河町が計画。22日まで7回に分け、約600人に接種するという。

この神河町の人口は1万3千人となっています。1万3千人の神河町で約600人、150万都市の神戸市が1620人。神河町では接種する医療機関が少ないという事情があったようですが、それでも神戸は少ないように感じてしまいます。



もう一つ、11月に白紙状態に戻ったのは保健所の行政医師の反対であった事が報告されています。その理由については様々に推測されますが、元もと保健所長様からこういうコメントを頂いております。

    保健所の医師が日本全国一斉に率先してやればよいものを、なぜできないのか、不思議でならなかったのですが、ようやく理由らしいものが分かりました。

    なんと、医師を含めた保健所職員が優先接種の対象になっていない県があるとのことです。
    接種を受けていない医師が集団接種に従事するのは医師・対象者の双方にとって危険なので、未接種医師には接種従事命令は出せないことになります。

    もし、神戸市保健所の医師が優先接種対象になっていなかったとすれば、市長は接種従事命令を出すことはできないと思われますが、実際はどうなのでしょうか。

私も神戸市の保健所の行政医師がワクチン接種を行ったかどうかの情報は持っていません。ただし、このワクチンを接種していないから集団接種に協力できないの理由に正当性があれば、12/13に行なわれる集団接種にも当然協力しないはずです。さらに白紙に戻した反対理由にこんなのもあります。

垂水保険部長の吉岡氏からは各区保健部の見解を集約した形で代弁させていただくと、同様な認識から集団接種を各区で実施することは反対であり、仮に医師である自分の立場として考えてもリスクのある集団接種に参加するつもりもないと。

「各区保健部の見解を集約した形で代弁」として、

    仮に医師である自分の立場として考えてもリスクのある集団接種に参加するつもりもないと
ですから12/13の行政医師の参加の有無に密かに注目していたのですが、Faxで配布された出務表があります。
これは急病診療所の分ですが、他の接種場所でも同様で、予診医としてすべての接種場所に1人は参加しています。参加していると言う事はワクチン接種を行っているという事なのでしょうか。どうにもよく分からないところです。ひょっとしたら、参加形式は神戸市からの業務命令ではなく「強力なお願い」による自主参加の形態にしているかもしれませんが、これ以上はよくわかりません。


ただなんですが、12/2に手打ちを行なった背景の一つとして興味深いものがあります。平成21年12月2日付厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部事務局事務発事務連絡「新型インフルエンザ(A/H1N1)ワクチンの接種に関する事業実施要綱に基づく接種事業の再委託の協議について」には、

 各地方公共団体におかれては、保健所又は保健センター等を活用の検討を行い、管内の優先接種対象者等に対する円滑な接種の実施に努めるとともに、実施計画の策定に積極的に関わり、集団的接種事業が接種実施要領に基づき安全性を確保した上で適切に行われるよう、よろしくお取り計らい願います。

これも憶測になりますが、この事務連絡を受け取った神戸市行政が医師会との折衝で、急に折れた原因じゃないかと考えています。これは接種要項にも反映されているのですが、こういう事務連絡があるにも関らず、保健所行政医師の反対で集団接種をオジャンにするのは拙かろうです。一方で保健所行政医師に対しても、この事務連絡を盾に集団接種への参加の説得材料にしたとも考えられます。

それでもなんですが、事務連絡を盾にしたにも関らず、保健所は活用しなかったのは何故かの疑問は残りますし、何故に保健所行政医師は予診医のみとしてしか参加しないのかも不思議といえば不思議です。

この辺は詳しくないので、御存知の方がおられれば教えていただきたいのですが、もしワクチン接種により大きなトラブルが発生した時に、責任が重いのは接種医なんて解釈があるのでしょうか。もしそうであれば、予診医と接種医の役割分担は重大になります。私もどこかで参加しますので、情報頂ければ嬉しいです。確率から言えば接種医になる可能性が高そうだからです。

単なる杞憂でありますように。


最後に蛇足なんですが、医師以外のスタッフの確保です。各所でスタッフの確保に難渋し、診療所からの一式出前方式を要請されているとありましたが、神戸ではスタッフの供出の要請はありませんでした。医師については上述した通りなんですが、その他のスタッフがどうなっているかです。これも急病診療所の例を出しておきますが、

    接種医2名予診医2名
    看護師3名(接種介助・交付証交付:2名、薬品管理等:1名)
    事務3名(受付:1名、会場整理・事業支援:1名、費用徴収:1名)

看護師3名、事務3名の計6人となっています。看護師については「どうやら」神戸市行政が用意した気配があり、事務も

※ 費用徴収にあたる事務職員については神戸市医師会で確保する。

2名は神戸市が用意したと受け取っても良いようです。これは他の地域の一式出前方式に較べると「良かった」としておきます。