ビッグニュースです

水曜日に飛び込んできた神戸市医師会からのFaxです。手打ちで起します。

神戸市医師会会員各位
「神戸市保健所より下記の連絡がありましたので通知申し上げます」

神戸市医師会

平成22年12月15日

予防接種実施医療機関 各位

神戸市保健所予防衛生課

子宮頚がん、ヒブ、小児用肺炎球菌予防ワクチン接種に関る調査について(ご依頼)

 神戸市では、国の助成事業を受けて、見出しの予防接種について、下記のとおり無料接種を実施します。つきましては、実施医療機関への関係書類の配布や市民に実施医療機関をホームページ等でお知らせする必要があることから、協力をいただける医療機関につきましては、下表に記載の上、予防衛生課あて12月22日(水)までにFAXにてご送信していただきますようよろしくお願いいたします。(契約は神戸市医師会との団体契約であり、今回の調査以降に新たに実施を希望する場合でも接種は可能です)。

1.国の考え方

  • 予防接種部会の意見書(10月5日)、国際動向、疾病の重篤性にかんがみ、子宮頚がん予防(HPV)ワクチン、ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチンは、予防接種法上の定期接種化に向けた検討を行う。
  • これを踏まえ、対象年齢層に、緊急にひととおりの接種を提供して、これらの予防接種を促進するための基金都道府県に設置し、補正予算において必要な経費を措置する。
2.本市の予定
  1. 実施期間 平成23年1月〜平成24年3月
  2. 対象
    • 子宮頚がん予防ワクチン:中学1年生〜高校1年生女子
    • ヒブワクチン、小児用肺炎球菌ワクチン:0〜4歳(5歳未満)の乳幼児
  3. 当該接種は神戸市勧奨予防接種として位置づける(市の制度で定期接種と同等の補償が適用)。
  4. 接種委託料金 従来の定期接種委託料金に準じて設定(神戸市医師会と調整中)
担当 結核感染症係 電話322-6788

正直なところ本業が少々多忙で、HPV、Hib、PCV7の公費接種化の動きを追いきれていませんでしたが、ここまで話が進んでいたのは驚きであり、喜びです。この時期に神戸市がこういう決定をしたポイントはどうやら、

    これらの予防接種を促進するための基金都道府県に設置し、補正予算において必要な経費を措置する
情報の動きに疎くなっていますので、憶測も入りますが、ここを素直に読むと、定期接種化するには予防接種法の改正が必要であり、これは来年の通常国会なりで承認を目指すとして、それまでの間に前倒しで無料接種化を「基金」を設置して行うと言う事のようです。その基金補正予算案で可決されたので、来年1月から早速活用して接種の無料化を行うと考えたら良さそうです。

ケチをつけるわけではありませんが、予防接種法の改正は少々時間がかかる見通しのようで、この基金を使った無料接種の実施期間は、

平たく取れば、来年度いっぱいまでのようです。そうなると1月の国会での予防接種法改正は目指していないのかもしれません。それにしてもかなりのビッグニュースのはずですから、補正予算案の目玉としてもう少し派手に宣伝されてもおかしくないと思うのですが、どうにも私の記憶の中には無いのが残念です。見落としたのかなぁ?

このニュースを院内掲示するかと職員に聞かれたのですが、定番の遡及措置がどうなるかが不明なので差し控えています。絶対に聞かれるのですが、その事については何もFaxに書かれていないので、聞かれたら手間取るだけですから、もうちょっと情報が集まってから動こうにしています。

このエントリーを読まれた神戸市民の方も、医療機関へのお問合せは無駄ですから、おやめになられるようにお願いします。問い合わさせをされるなら

こちらにお願いします。医療機関が知っている情報は上記したFax情報だけですから、何を聞かれても、それ以上は答えようがありません。


予防接種関連情報の追加として、ロタワクチンが来年度承認される見込みだそうです。参考情報ですが、2009.11.30付日刊工業新聞に、

グラクソ・スミスクライン株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:マーク・デュノワイエ、以下:GSK)は、11月27日付で、ロタウイルス腸炎予防ワクチン(海外での製品名: Rotarix )の承認申請を行いました。申請したワクチンは、乳幼児のロタウイルス腸炎の早期予防を目的として使用される2回接種の経口ワクチンで、ロタウイルスに対するワクチンの承認申請は国内初となります。また、GSKにとってこのワクチンは10月に承認になった子宮頸がん予防ワクチン「サーバリックス」、10月16日に申請した新型A(H1N1)インフルエンザワクチンに続くワクチンとなります。

おそらくこのロタワクチンではないかと考えられます。この来年度承認のお話ですが、流れてしまったツイッター情報の中で、上先生(だったと思う)が書かれていましたから、何かそういう情報をどこかから入手されたのだと思います。Seisan様ぐらいならご存知かも知れません。滅多に来ないですが、GSKのMRが来たら聞いてみようと思います。もっともMRまで情報はなかなか流れないですけどね。



必要な予防接種の無料化から公費定期接種化、また新たな有用なワクチンの承認は小児科医にとって歓迎すべき事です。これについては無条件に喜びますが、実地的には少々複雑です。理由は接種本数が飛躍的に増えるというのがあります。最近になって妙に注目を浴びだしている不活化ポリオワクチンの動向も気になるところで、もし予定通り四種混合化されずに単独接種になったりすれば、1歳までに必要なワクチンは、

  1. DPT
  2. Hib
  3. PCV7
  4. ロタ(来年度承認予定)
  5. 不活化ポリオ(単独での製品化は終了だったはず)
神戸市ではこれに保健所でのBCG(4ヶ月)があります。さらにになりますが、予防接種部会の意見書も読んではいませんが、
    国際動向、疾病の重篤性にかんがみ
これの流れに忠実ならHAVHBVも俎上に本来は上ってくるはずです。そうなるべきなんですが、それだけ接種できるかの時間的、物理的問題です。これらの予防接種は年間にコンスタントに行われるのですが、インフルエンザ接種のシーズンは正直なところ脅威です。今年もHibとPCV7の接種が増えて、かなり大変だったのですが、その上にさらにになるとどうしようと言うところです。

そのためには、未だに扱いが曖昧なままの同時接種問題の位置付けの明確化がまず必要と思われます。現在の原則単独接種で、やむを得ない時は同時接種の原則では需要に応じきれない部分があります。同時接種への医療機関の対応も様々で、地域や医療機関によって積極的に対応しているところもあれば、原則重視で消極的に対応しているところもあります。この延長線上に現在は禁止(神戸市は明言しています)となっている同日接種問題もあると考えます。

もう一つの問題は接種法と、接種部位の問題です。現在はこれも原則として上腕に皮下注で行うとなっていますが、これでは最大で4ヶ所までの接種しか行えません。筋注化して大腿部への接種も可能にしないと、増え行くワクチンへの対応が難しくなりそうに感じています。これらの問題もワクチン無料化や認可に較べると小さな問題ですが、小さいとは言え、現実的な問題ではありますから、学会や医会、医師会レベルで検討してもらいたいところです。


それでも基本はビッグニュースですから、小児科医としては久しぶりに良いニュースを聞いた気がします。