大手と弱小の差

まずは新聞業界の最大手の12/3付読売新聞記事です。

診療報酬、2年ごとの改定を改革…長妻厚労相

 長妻厚生労働相は3日、都内で記者団に、医療機関に支払われる診療報酬について、「国民のニーズと合致する仕組みを考える必要がある」と語り、2年ごとに改定する仕組みを改める考えを示した。

 長妻氏は同日、東京都内の民間病院など2か所を視察した。病院関係者との協議でも、「状況は刻一刻変化するが(診療報酬の)値付けは2年間変わらない。市場メカニズムも働かない。中長期的に考え、時代に対応する必要がある」と語り、改定までの期間を1年に短縮することや必要に応じて改定できる仕組みに改めることに言及した。診療報酬を医師に直接支払う「ドクターフィー(doctor fee)」にも触れた。

 医療現場への影響を2年目に検証するために、改定は2年ごとに行われている。ドクターフィーにも「チーム医療に混乱が起きる」(日本医師会)などの反対の声があり、厚労相の意向は議論を呼びそうだ。

(2009年12月3日23時24分 読売新聞)

続いて弱小といっては失礼かもしれませんが、12/3付CBニュースです。

診療報酬体系、「国民のニーズに追い付かず」−長妻厚労相が認識

 長妻昭厚生労働相は12月3日、東京都内の病院を視察後、記者団に対し、現行の診療報酬体系が患者や国民のニーズに追い付いていないとの問題意識を示した上で、時代の変化や国民のニーズに応じた診療報酬体系を考えていく必要があるとの認識を示した。

 長妻厚労相は視察を踏まえ、診療報酬体系について、「いろいろな考え方があると思うが、もう少し変動的な診療報酬という考え方も中長期的な課題」などと指摘した。
 制度改正をする場合の診療報酬改定の時期については、「(1年ごとの改定では)現場が混乱し、設備投資も含めた長期的な投資のビジョンや計画に影響が出る」との懸念を示し、「2年ごとの改定が基本」と述べた。その上で、海外の例なども参考に、国民のニーズに合致した診療報酬体系について中長期的に議論していく必要があると強調した。

 来年度の診療報酬改定について長妻厚労相は、「政府内で議論をする時に、何の数字もなしに議論するわけにはいかない」としたが、具体的な数値を盛り込んだ改定率の政務三役案を示す時期については、「近々に数字を持って交渉に臨んでいく」と述べるにとどまった。改定率の政務三役案については、足立信也政務官が1日の記者会見で、7日までに決める考えを示している。

 長妻厚労相はまた、「薬価が下がるので本体部分はプラス、全体でもやはりプラスにしていく必要がある」との考えを改めて示した。

 さらに、行政刷新会議事業仕分けで「医師確保、救急・周産期対策の補助金等(一部モデル事業)」の来年度予算概算要求を「半額計上」とし、診療報酬配分の見直しで対応が求められた点について、「半額はちょっと削減し過ぎだ」と指摘。一方、診療報酬で手当てする考え方については肯定した。

 長妻厚労相らは3日午前、救急・周産期医療現場の実態把握のため、東京女子医科大学病院(新宿区)と河北総合病院(杉並区)を視察。院内視察後は、病院長や理事長、現場の医師らと懇談した。

更新:2009/12/03 20:48   キャリアブレイン

全文引用は余り好ましくないのですが、今回は大手と弱小が同じ事柄を取材した時の比較検証ですから、全文が必要と判断しました。まず両記事のソースですが、長妻大臣が行なった記者会見の内容を記事にしたものと考えて間違い無さそうです。両記事の冒頭部を確かめると、

大手(読売) 弱小(CB)
記者会見の様子 長妻厚生労働相は3日、都内で記者団に 長妻昭厚生労働相は12月3日、東京都内の病院を視察後、記者団に対し
視察場所 長妻氏は同日、東京都内の民間病院など2か所を視察した。 長妻厚労相らは3日午前、救急・周産期医療現場の実態把握のため、東京女子医科大学病院(新宿区)と河北総合病院(杉並区)を視察
記事の概略 医療機関に支払われる診療報酬について、「国民のニーズと合致する仕組みを考える必要がある」と語り、2年ごとに改定する仕組みを改める考えを示した。 現行の診療報酬体系が患者や国民のニーズに追い付いていないとの問題意識を示した上で、時代の変化や国民のニーズに応じた診療報酬体系を考えていく必要があるとの認識を示した。


取材日時、大臣の視察場所、記事の概略、とくに長妻大臣がポイントとして話した事は同じと考えて良さそうです。同じ記者会見の記事であることは確認できましたから、内容を追って行きます。大手の読売が短くて、弱小のCBが長いので完全な比較対照は出来ないのですが、

大手(読売) 弱小(CB)
診療報酬に対する考え方 「状況は刻一刻変化するが(診療報酬の)値付けは2年間変わらない。市場メカニズムも働かない。中長期的に考え、時代に対応する必要がある」と語り 診療報酬体系について、「いろいろな考え方があると思うが、もう少し変動的な診療報酬という考え方も中長期的な課題」などと指摘した。
診療報酬の改訂期間 改定までの期間を1年に短縮すること 制度改正をする場合の診療報酬改定の時期については、「(1年ごとの改定では)現場が混乱し、設備投資も含めた長期的な投資のビジョンや計画に影響が出る」との懸念を示し、「2年ごとの改定が基本」と述べた。
診療報酬の改訂方法 必要に応じて改定できる仕組みに改めることに言及した。 海外の例なども参考に、国民のニーズに合致した診療報酬体系について中長期的に議論していく必要があると強調した。
ドクター・フィー 診療報酬を医師に直接支払う「ドクターフィー(doctor fee)」にも触れた。 さらに、行政刷新会議事業仕分けで「医師確保、救急・周産期対策の補助金等(一部モデル事業)」の来年度予算概算要求を「半額計上」とし、診療報酬配分の見直しで対応が求められた点について、「半額はちょっと削減し過ぎだ」と指摘。一方、診療報酬で手当てする考え方については肯定した。


読めばおわかりのように、大手の読売記事が強調したポイントは、診療報酬改訂について、長妻大臣が1年おきの改訂に意欲を示している事です。ところが弱小のCBニュースの方では、「」付きの発言引用で、
    「2年ごとの改定が基本」と述べた
話がまったく違う事が確認できます。さらに、
    「(1年ごとの改定では)現場が混乱し、設備投資も含めた長期的な投資のビジョンや計画に影響が出る」
もっとも2年ごとでも「長期的な投資のビジョンや計画」に混乱は十分来たすんですが、そこは長くなるので今日は置いておきます。もちろん変動的な診療報酬体系の必要性を長妻大臣が主張していないわけではなく、CBでも、
    もう少し変動的な診療報酬という考え方も中長期的な課題
この診療報酬の改訂ですが、原則は2年おきですが、現実には通達に次ぐ通達による解釈変更により、実際はある程度行われています。根本的な大きな変更が2年おきという事です。CB記事を読む限り、長妻大臣は現在の2年おきの改訂とは別に、もう少し臨機応変の診療報酬改訂の仕組みを「課題」としてシステム化したいと発言したように思われます。

もちろん大手の読売記事はそうではなく、毎年の改訂を行なう方向性を長妻大臣が強く打ち出したと強調しています。どちらが正しいかはメディア・リテラリシーの問題ですから、自己責任で御判断下さい。


ドクター・フィーの問題は、対照表に上げはしましたが、正しい対照かどうかに自信がありません。CBニュースにある「医師確保、救急・周産期対策の補助金等(一部モデル事業)」はウロ覚えなのですが、その中に補助金を直接医師に渡す事業もあったように記憶しています。間違っていたら申し訳ありませんが、これが事業仕分けにより規模が半分となり、その穴埋めを診療報酬で考えるとなれば、ドクター・フィーみたいになる可能性があると考えています。

ただし、これはあくまでも私がCBニュースを読んでそう思っただけで、読売記事はCBが伝えなかったドクター・フィーの大臣発言を取り上げているかもしれません。これもまたメディア・リテラリシーの問題ですから自己責任で御判断お願いします。


ここからは感想ですが、個人的にはCBニュースの方が長妻大臣の発言を正確に反映している様な気がします。あくまでもこれは私がそう感じただけなので、ソースに基いた判断ではないのでご注意下さい。CBニュースの方が長妻大臣発言の肝心のところを「」付きで引用しており、正しそうに感じるぐらいが根拠です。

それとCBニュースの長妻大臣発言なら、現行の診療報酬改訂制度に大枠を変えずに関与を深める現実的な内容ですが、改訂期間まで変更するとなると一挙の大幅変更になります。そこまでの重大発言を「ミスター検討中」が踏み込んで発言するかどうかが少々疑問なのもあります。長妻大臣のCBの発言なら、「今後の中長期の課題」が中心ですから、病院視察後の記者会見内容としては無難と受け取れるのもあります。

もちろん新聞業界最大手の読売新聞の記事には、長年の信用の金看板がありますから、CBニュースが間違っている可能性も十分あります。大手と弱小のどちらのメディアが記者会見の真相を伝えているかは興味深いところです。