あそこ的にはお手柄なのかも?

昨日よもぎ様から頂いたコメントをまず紹介します。

気になったのでご紹介のURLを確認すると、11/25付DIGITAL MAGAGINE「NYタイムズの記者クラブ廃止についてのインタビューに毎日新聞の記者が「誰か自殺したら誰が責任とるの?」と意味不明な回答」である事がわかります。そこの一部を引用すると、

 日本特有の悪しき制度、記者クラブ。日本の大手マスコミしか基本的に加入できない会員制度を設けており、会員以外を記者会見からシャットアウトするこの制度を、ニューヨーク・タイムズが記事として取り上げていた。

 記事の主な内容は、この制度のために亀井金融相が週に2回連続して記者会見を開いているというものだが、この中で記者クラブの廃止について聞かれた毎日新聞の古田信二記者が、驚きの回答をしていた。

 「(記者クラブは)そんなに閉鎖的ではありません。ケース・バイ・ケースで非会員の参加も認めています。(仮に廃止したとして)もし偽ジャーナリストが記者会見中に自殺や焼身自殺をした場合、一体誰が責任を取るのですか?」

この記事のタイトルにも本文中にも明記してありますが、ネタ元はニューヨーク・タイムズ(NY紙)の記事である事が確認できます。この記事を書かれたのは篠原修司氏と明記されているのですが、念のためにネタ元のNY紙の該当部分を確認してみます。11/20付New York Times/Asia Pacificより、

Shinji Furuta, a reporter for the daily newspaper Mainichi Shimbun, who recently held the rotating chief secretary position of the club, said that it was not as closed as it seemed. Even before the change in government, he said, it allowed nonmembers to attend news conferences as observers on a case-by-case basis, and even allowed them to ask questions, something other press clubs still prevent such observers from doing.

He also noted that the club had opened up slightly in the past decade by allowing the big American and British financial news agencies to join. But he said the press club wanted to ensure that people posing as journalists did not get in and disrupt proceedings.

“What if someone tried to commit suicide or burn themselves to death at a press conference? Who would take responsibility for that?” Mr. Furuta asked.

翻訳してみると、

最近、記者クラブの筆頭幹事になった毎日新聞の古田伸二記者は、それほど閉鎖的には思えないとしています。政権交代前でさえ、非会員であってもケース・バイ・ケースでオブザーバーとして記者会見に出席でき、質問も会員同様に出来る(他の記者クラブではオブザーバーとしての出席さえ認めていないところがある)。

また過去10年の間に、アメリカやイギリスの大手金融報道機関の会員になれた者はわずかだと指摘しています。それでも記者クラブは、ジャーナリストを装った人間が入り込む事や、記者会見を妨害されないような役割を求められているとしています。

「もし誰かが記者会見で、自殺や焼身自殺を行なったらどうすると言うんですか。誰がこの事態に責任を取れると言うのですか。」

こういう風に古田記者は質問して来ました。

我ながら下手な翻訳で、細部のニュアンスに間違いがあるかもしれませんので、私の翻訳に頼らずに原文を確認されるようにお願いします。とりあえずこのエントリーでは私の翻訳で進みますが、古田記者が記者クラブの代表者的な立場であると思われます。呼び名が幹事なのか、世話人なのかはわかりませんし、亀井大臣が関連する記者クラブの関係者なのかも引用部分では不明です。

NY紙記者が取材するぐらいですから亀井大臣に関係する記者クラブの可能性は高いぐらいにしておいて、その立場で取材に応じています。その立場とは当然ですが記者クラブ擁護の立場です。それは基本的に理解しておかないといけないのですが、古田記者の主張したポイントは3つです。

  1. 必要に応じて非会員でも記者会見への参加をオブザーバーの資格で許可し、あまつさえその資格で会員同様に質問さえ出来る開かれた制度である。
  2. 米英の大手金融情報機関(the big American and British financial news agencies:この訳に自信がありません)も閉鎖的である。
  3. 偽記者の侵入や記者会見の妨害の防止の重責を担っている。
立場上の発言ですので、記者クラブ制度に良い印象を抱いていない人には反論テンコモリかとも思いますが、そこはなるべく押さえて、古田記者がもっとも強調したのは3番目の役割であると考えられます。なぜなら、わざわざ例え話を行なって、その役割が以下に重要か強調されているからです。つまり例え話のような事態が発生したときにこそ記者クラブ制度が真価を発揮すると理解すれば良さそうです。
    What if someone tried to commit suicide or burn themselves to death at a press conference?
    (もし誰かが記者会見で、自殺や焼身自殺を行なったら、どうすると言うんですか。)
この記事はNY紙記者が取材したものです。古田氏も取材相手がNY紙記者であることを十二分に承知して発言されたはずで。さらに言えば、わざわざこの例え話を持ち出すことにより、NY紙記者に記者クラブ制度の存続価値を納得させる事が出来ると確信されて話されたかと推察します。

とりあえず疑問なのは、記者クラブの会員ならそういう事は起さないかです。すぐに思い出すのは、クラスター爆弾を拾って帰ろうとして爆発事故を起した新聞記者がいます。またマスコミは可能な限りの隠蔽工作を行ないますが、新聞記者と言うかジャーナリストと呼ばれる人間も犯罪を起しますし、自殺もします。人間ですから起さないという事はありません。

当然ですが、記者クラブの正会員でも記者会見場で自殺なり、焼身自殺を行なわないという保証はどこにも無いという事です。そうなると記者クラブの会員が、記者会見で自殺をしたり、焼身自殺を行なえば記者クラブが責任を取るという事になります。どういう責任を取るか見物です。まさか連名で謝罪広告を出して、

    二度とこのような事態が起こらないように真摯に反省し、再発予防に努めます
これで終わりという事はないのでしょうね。何と言っても
    Who would take responsibility for that?
    (誰がこの事態に責任を取れると言うのですか)
ここまでNY紙記者に言い切っているのですから、謝罪広告でお茶を濁してオシマイなんて事は「ありえない」と信じておきます。


私は相当恥しいレベルのお話をされているように感じます。感じはしますが古田記者が所属している新聞社では評価は異なるかと思われます。あの新聞社では海外に向けた英字記事の発信で問題を引き起こすというのは高評価の対象になるのは既に周知の事実です。この評価も幹部と末端では変わるというところに注意が必要ですが、幹部クラスは間違い無く高い評価を得ます。古田記者も広い意味の幹部クラスになられるかと推察します。

今春に起した変態記事事件では代表取締役社長に御昇進遊ばされた方もおられるぐらいですから、この取材記事も、かの新聞社内では「good job」の称賛の嵐が起きていたとしても別に不思議でもなんでもありません。称賛の嵐は大げさでも「アイツ、やるな」との人事評価ぐらいは確実に残されたと考えています。

おもしろいものです。