これは事件かも

いなか小児科医様の浅はかすぎる...を読んでビックリしています。引用されたのは6/12付CBニュースでキモの部分は、

    外来管理加算とは関係がない時間外診療に関する調査データを基に作成されたことが、全国保険医団体連合会(保団連)の情報開示請求で明らかになった
いくらなんでもそこまではと思いたいところですが、全国保険医団体連合会該当ページを読んでみます。つうか読んでもらえればそれまでなんですが、例の「5分ルール」を決定する外来診療時間のグラフが、
このグラフを提示して、

原徳壽医療課長は2007年12月7日の中医協基本問題小委員会で、「内科診療所における医師1人あたりの、患者1人あたり平均診療時間の分布を調査したところ、平均診療時間が5分以上である医療機関が9割という結果であった」

これで「5分ルール」の影響を懸念する中医協の委員をねじ伏せたとされています。保険医団体連合会ではこのグラフの診療時間30分以上が異常に高いことに疑念を抱き、情報公開法に基づき出典開示を求めこれが認められています。情報ソースとしては完璧です。そこで明らかになったのは、原徳壽医療課長が絶対の根拠として力説した内科診療所の平均診療時間は、時間外診察に関する実態調査から作成されたグラフであったという事です。厚労省は時間外診察の平均診察時間を「内科診療所の平均診察時間」として主張していた事になります。

正規の診察時間内の診察時間と、時間外診察での診察時間は当然異なります。診療でも初診と再診では診察時間はかなり違います。とくに慢性疾患で安定している患者の再診時間と完全に初診の患者では全然違います。誰が考えても時間外の患者は初診が多く、また再診であっても状態が崩れたから診察を受けたわけですから、診察にかかる時間は当然長くなります。正規の診察時間内で見られる「お変わりないようですから、いつものクスリを」なんて患者はまずいないと考えられます。さらに言えば一般診療所の時間外診察の調査ですから、多くのところでは医師が1人で診察を行なっている可能性も考えられます。

この「時間外診療に関する実態調査」の目的は、

厚生労働省保険局医療課では、今後の診療報酬改定の検討資料とすることを目的に、「時間外診療に関する実態調査」を実施する事になりました。

これは誰がどう読んでも「診療報酬改定時の時間外診療の資料にする調査である」です。さらに調査の条件として、

ご記入いただきました調査票については、厳重に取り扱うこととし、上記以外の目的に使用することは一切ありませんので、調査の趣旨をご理解のうえ、ご協力を重ねてお願い申し上げます。

たしかにこの調査は診療報酬改訂のための資料として用いられていますが、時間外診察の診療報酬改定のために用いられていません。これは調査の目的外使用に該当しないのでしょうか。CBニュースでは厚労省の回答として、

厚労省は「『時間外診療に関する実態調査』については、対象となる診療所に協力を依頼する際、今後の診療報酬改定の検討資料とすることを目的に実施すると文書で示している。診療報酬改定の検討資料にしたもので、不正流用には当たらない」としている。

問題なしの見解としています。個人的には強弁の感触も持つのですが、目的外使用は置いておいても、時間外診察の診療時間を正規の時間内診察の診療時間と同じであるの主張は、相当無理があると考えられます。似て非なるものを根拠として、異論が強かった「5分ルール」を強行したの批判は出てくると考えられますし、見ようによっては厚労省は虚偽の根拠を基に中医協を騙したのではないかの批判も成立しかねません。

厚労省の医療関係の統計データにはしばしば「ホンマかいな」と感じさせるものがあるのは実感です。多くはサンプリングに問題があるのではないかの指摘もありますが、厚労省の公式データですから、建前上の調査方法、調査結果の集計は誤りは無いと考えていました。また集計も詳細に見ると、角度を変えての見方をしようとすれば、常にその方面の集計がなぜか行なわれていない不思議さもありますが、それでもデータ自体の信用性はあると見なしてはいました。

どうも今回の件は、そういう事にも疑念を強く抱かせるものになりそうな気がします。最後にこれもCBニュースから、

保団連は6月12日までに、参考資料がどのように作成されたのかなどをただす質問状を厚労省に提出した。

厚労省の回答が楽しみです。