臨床研修制度のあり方等に関する検討会

これの第1回に第1回臨床研修制度のあり方等に関する検討会の開催についてとして、

このたび、より質の高い医師を養成する観点から、臨床研修制度及び関連する諸制度等のあり方を検討するため、文部科学省及び厚生労働省合同で、有識者からなる「臨床研修制度のあり方等に関する検討会」を設置し、第一回検討会を下記のとおり開催いたしますので、お知らせします。

文部科学大臣厚生労働大臣が出席する予定ですが、公務により欠席となる場合があります

ちなみにメンバーは文部科学大臣厚生労働大臣の他は、

氏名 肩書き
飯沼 雅朗 蒲郡深志病院長 社団法人日本医師会常任理事
大熊 由紀子 国際医療福祉大学大学院教授
小川 彰 岩手医科大学学長
小川 秀興 学校法人順天堂理事長
嘉山 孝正 山形大学医学部長
齊藤 英彦 名古屋セントラル病院
高久 史麿 自治医科大学学長
辻本 好子 NPO 法人ささえあい医療人権センター・COML 理事長
永井 雅巳 徳島県立中央病院長
西澤 寛俊 特別医療法人恵和会西岡病院理事長
能勢 隆之 鳥取大学学長
福井 次矢 聖路加国際病院
武藤 徹一郎 財団法人癌研究会理事 名誉院長
矢崎 義雄 独立行政法人国立病院機構理事長
吉村 博邦 学校法人北里研究所理事・社団法人地域医療振興協会顧問


この検討会の第6回が2/18に行なわれています。これについての傍聴録はロハス・メディカルに臨床研修検討会6として速報分だけあがっています。この会議の結論についてはマスコミ報道がなされていますが、さすがに答申本体は私の探す範囲ではまだupされていないようです。そこで答申に極めて近いと考えられる臨床研修制度等に関する意見のとりまとめ(案)を読んでみたいと思います。皆様良く御存知の通り、こういう会議の結論をまとめるのは出席した委員ではなく事務局であるからです。

まず「1 はじめに」とあるのですが、

 本検討会は、厚生労働省の「安全と希望の医療確保ビジョン」具体化に関する検討会の中間とりまとめ(平成20年9月)に基づき、医師の臨床研修制度等のあり方について検討を行うことを目的として、平成20年9月8日に第1 回の会合を開催した。

 以降、関係者からのヒアリング、研修医等に対するアンケート、さらに関係団体からの意見等を参考に、計6回にわたる会合を重ねてきたが、今般、臨床研修制度等の見直しについて意見をとりまとめた。

 文部科学省及び厚生労働省においては、本検討会の意見のとりまとめに沿って臨床研修制度等を速やかに見直すことを要請する。

言うまでもなく決定事項が決められたのが第6回であるということです。

臨床研修制度導入以降の状況

 医師の臨床研修制度は、医師としての人格のかん養と基本的な診療能力の修得を基本理念として、平成16年度に義務化された。制度導入から5年を経て、以下のような様々な状況が見られる。

  1. 制度導入以降、多くの病院で研修医の受入れ・指導の経験が積まれ、そのノウ・ハウが蓄積・共有化されてきている。今後、各病院が蓄積されたノウ・ハウをベースに病院の個性や指導上の工夫を活かした特色ある研修を展開していく上で、国が定める研修プログラムの基準の見直しが求められている。
  2. 多くの診療科をローテートすることで、研修医の基本的な診療能力に一定の向上が見られるなど、全体として制度の基本理念が実現されつつある。他方、将来のキャリア等に関わらず多くの診療科での研修を一律に課すことや1 か月単位の研修が続くことが、研修医のモチベーションを損なったり、専門的な研修への円滑な接続の妨げとなる面がある。
  3. 平成13年度に全国の医学部共通のコア・カリキュラムが公表され、また、平成17年度からいわゆる共用試験(CBT、OSCE)が実施されるなど、医学部教育の見直しが大幅に進展した。一方、こうした医学部教育改革の動向と臨床研修制度が十分に連動しておらず、双方の教育・研修内容の間で調整が必要となっている。
  4. 現行制度の下で、研修医と受入病院との間での全国的なマッチング・システムが導入されたことなどから、研修医の受入病院の数が飛躍的に増加し、研修医を受け入れた病院の活性化に貢献した。他方、受入病院の指導体制等に格差が生じており、臨床研修の質の一層の向上が求められている。
  5. 臨床研修制度の導入以降、大学病院において臨床研修を受ける医師が大幅に減少し、また、専門の診療科の決定が遅れたことも影響して、大学病院の若手医師が実質的に不足する状況となった。このため、大学病院が担ってきた地域の医療機関への医師の派遣機能が低下し、地域における医師不足問題が顕在化・加速するきっかけとなった。
  6. 研修医の募集定員は、病院ごとには一定の基準に基づき管理されているものの、総数や地域別にはほとんど調整が行われていない。このため、募集定員の総数が研修希望者の1.3倍を超える規模まで拡大しており、また、都市部に多くの受入病院があることと相まって、研修医が都市部に集中する傾向が続いている。
  7. 現行制度の下で研修医の身分と処遇(給与等)が大幅に改善され、研修医が経済的な心配をすることなく研修に専念できる環境が整った。ただし、処遇内容は研修医と病院との雇用契約で決まるため、結果的に病院間で研修医の処遇内容に違いが生じており、中には研修制度の本来の趣旨に照らして不適切に高額な処遇の事例が見られる。

ここのポイントとしては、新研修医制度の評価として、

多くの診療科をローテートすることで、研修医の基本的な診療能力に一定の向上が見られるなど、全体として制度の基本理念が実現されつつある。

ここだけ読めば十分合格点と感じるのですが、続いて、

他方、将来のキャリア等に関わらず多くの診療科での研修を一律に課すことや1か月単位の研修が続くことが、研修医のモチベーションを損なったり、専門的な研修への円滑な接続の妨げとなる面がある。

各委員の顔を立てるための修辞のためにこうせざるを得ないのでしょうが至極単純に、

    欠点が多いので改正する
これが新研修医制度に対する総括として良いかと考えます。改正すべき問題点として簡略にしますが、
  1. 卒前教育と研修の一貫性に欠ける
  2. 大学病院の医師派遣機能の低下
  3. 都市部への研修医への偏在
以後これについての是正法が書かれています。

3 制度の見直しに当たっての基本的な考え方

 「2」の状況を踏まえ、「医師としての人格のかん養、基本的な診療能力の修得」という制度の基本理念、および基本理念を具体化した到達目標を前提として、当面、以下の基本的な考え方に立って臨床研修制度等を見直すべきである。

  1. 研修医の将来のキャリア等への円滑な接続が図られ、各病院の個性や工夫を活かした特色ある研修が可能となるよう、研修プログラムを弾力化する。
  2. 医学部教育改革の動向や専門医制度の検討の動向等を踏まえ、卒前・卒後の一貫した医師養成を目指して、臨床研修の質の向上や学部教育の更なる充実を図る。
  3. 医師の地域偏在への対応、大学病院等の医師派遣・養成機能の強化、さらに研修の質の一層の向上等の観点から、研修医の募集定員や受入病院のあり方を見直す。

ここも単純化しますが、

  1. 欠点があるから研修プログラムを変更する
  2. 卒前教育と研修を一貫とした物にするためにプログラムを全国共通化する
  3. 病院の研修医募集数を「研修医数 ≒ 募集定員」にし実質的に計画配置とする
これが問題点に対する基本的な考え方です。研修プログラム変更及び卒前卒後教育の一貫性の狙いは、書くまでもなく医師の速成教育です。速成教育は聞こえが悪いので「効率化」と表現する方が良いでしょう。

「4 臨床研修制度等の見直しの方向」は、

  1. 研修プログラムの弾力化
  2. 募集定員や受入病院のあり方の見直し
  3. 関連する制度等の見直し
この3つの部分に分かれていますから、それぞれで読んでみます。

(1)研修プログラムの弾力化

  • 国が定める必修の診療科は内科(6か月以上)、救急(3か月以上)に止めることとし、これらの診療科における研修は、原則として1年目に実施する。
  • 内科、救急以外で従来必修とされた科目(外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科)は新たに選択必修と位置づけ、この中から各研修医が1〜2の診療科を選択する。
  • 選択必修の診療科について、研修医の希望に応じていずれの診療科の研修も確実に実施できるよう、受入病院は各診療科のプログラムを必ず用意し、受け持ちの入院患者について指導できる体制を確保する。
  • 内科、救急など基本的な研修を1年間とし、2年目から将来のキャリアに応じた診療科における研修を行うことができるようにする。また、研修開始時に将来のキャリアに応じた診療科における研修を一定期間行った後に、内科、救急以下の研修を行うことも可能とする。
  • 現在行われているような多くの診療科をローテートする研修も、引き続き各病院の判断で実施できることとする。
  • 小児科、産科など医師不足の診療科の医師の確保に資するよう、一定規模以上の病院は、将来これらの専門医になることを希望する研修医を対象とした研修プログラムを用意する。
  • 研修2年目に、十分な指導体制の下で、地域の第一線の病院、診療所において研修を行う地域医療研修(1か月以上)を必修とする。研修施設は、関係自治体の意向を踏まえるなど地域の実情に応じて選定されるよう配慮する。
  • 到達目標について、研修医の到達度を客観的に評価する仕組みを工夫するとともに、今後の医学的知見・技術の進歩、疾病構造の変化、さらに卒前教育や臨床研修の改善状況等に対応しつつ、適切に見直すシステムを構築する。
  • プログラムの弾力化に併せて、研修の質を確保するため、指導体制、研修内容、研修医の到達度等について、受入病院を第三者的に評価し、その結果をフィードバックする体制を構築する。

研修プログラムの変更は、

    1年目:内科(6ヶ月以上)、救急(3ヶ月以上)
    2年目:地域医療研修(1ヶ月以上)
これが基本のようです。従来は内科、救急のほかに外科、麻酔科、小児科、産婦人科、精神科が必修だったのですが、これに関しては、

新たに選択必修と位置づけ、この中から各研修医が1〜2の診療科を選択する

「1〜2」となっていますから、現在の7つの診療科研修から、3〜4の診療科と地域医療研修に変わるようです。後は現在の研修医制度に私は詳しくないのですが、

  • 研修医の到達度を客観的に評価する仕組みを工夫
  • 受入病院を第三者的に評価
どうも研修医及び研修病院に何かの試験を行なうように思います。

(2)募集定員や受入病院のあり方の見直し

  • 研修希望者に見合った募集定員の総枠を設定するとともに、研修医の地域的な適正配置を誘導するため、人口分布を始め医師養成規模・地理的条件等を考慮した都道府県別の募集定員の上限を設定する。
  • 各病院の募集定員は、過去の研修医の受入実績等を踏まえ適正規模に見直すとともに、大学病院等の地域への医師派遣実績等も勘案した上で、当該都道府県の募集定員の上限と必要な調整を行って設定する。その結果、募集定員の大幅な削減の対象となる場合などについては、一定期間の経過措置を設け、地域の実情や研修医の受入実績等を考慮したきめ細かな対応に配慮する。
  • 研修希望者が、自分の将来のキャリア等を勘案し、各病院の特色ある研修プログラムを選択できるよう、引き続き、受入病院が公表した研修プログラムを全国規模で選択できるようにする。
  • 研修の質の向上のため、研修プログラムを管理する病院について、症例数、設備、指導体制など病院の水準・規模の面で基準を強化するとともに、大学病院など地域の中核病院を中心とした臨床研修病院群の形成を推進する。その結果、管理型臨床研修病院の指定取り消しの対象となる場合などについては、一定期間の経過措置を設け、地域の実情や研修医の受入実績等を考慮したきめ細かな対応に配慮する。
  • 研修医の処遇(給与等)は、研修医と病院との雇用契約の中で決定されるべきものであるが、研修制度の趣旨を著しく逸脱するような不適切な事例については、是正を誘導するための一定の措置を講ずる。

ここも細々書いてあるのですが、

    研修医の配置権限は厚労省が握り、大学病院になるべく誘導する
こう解釈して良いかと思います。

(3)関連する制度等の見直し

  • 臨床実習を始める医学生の質を担保するため、大学の共用試験の合格水準を標準化するとともに、産科や小児科、精神科など診療科の医師不足に対応し、身体のみならず精神面も重視した全人的医療を進めるための臨床実習の充実を図るなど、医学教育のカリキュラムの見直しを行う。
  • 医学部卒業生の地域定着を促進するため、医学部入学における地域枠の一層の拡大を進める。
  • 臨床研修修了後の専門性を高める研修及び生涯学習のあり方について、医師の診療科偏在の是正を図り、医師のキャリアパスが明確となるよう見直す。
  • 卒前の臨床実習の充実の状況を踏まえながら、医学生の医行為の取扱いや国家試験の内容を見直す。
  • 大学病院等による医師派遣機能を、地域の関係者の意向が十分反映された開かれたシステムとして再構築する。
  • 今般の臨床研修制度等の見直しに伴い、研修指導体制の充実や研修内容等評価システムの構築、医師派遣機能の強化など、優れた医師養成に必要な予算の拡充を図る。

地域枠の推進や、選択研修になった産科や小児科、精神科の充実を卒前教育で医師不足を補うみたいな話がとりあえず並んでいるのですが、個人的に注目されるのは、大学病院に研修医を集めた後の話です。

大学病院等による医師派遣機能を、地域の関係者の意向が十分反映された開かれたシステムとして再構築する

医師派遣は「地域の関係者の意向」が「「開かれたシステム」として再構築されるそうです。これは、

    地域支援中央会議(厚労省)と都道府県医療対策協議会の傘下に大学医局を完全に取り込むように再構築する
地域支援中央会議にしろ、都道府県医療対策協議会にしろ、これまで会議は出来ても派遣する医師を持っていなかったので開店休業状態でしたが、大学医局を支配下に置くことにより送り込むコマを手にする事が出来ます。コマの補充のために大学医局に研修医を計画配置させる事もセットにしていますから、厚労省念願の官製医局を手にする事が可能になります。問題は研修医以外の中堅クラスが再構築された大学医局にどれだけの魅力を感じるかですが、それについての施策は見当たりません。

取り急ぎ解説しましたが、もちろんこれは会議前に出された「とりまとめ(案)」ですから、会議終了後に修正された部分があるかもしれません。それについては情報が入手できたら解説するかもしれません。最後に

5 おわりに

 今回の見直しの結果、地域医療の確保や研修医の診療能力にどのような効果、影響があったか、研修の具体的内容、研修医の到達度等を継続的に検証し、5年後を目途に改めて制度の見直しについて検討する必要がある。

 また、医師不足問題への対応は、臨床研修制度の見直しだけでは不十分である。医師養成の拡大、医師の勤務環境の改善、医療関係職種間の連携など、関連する対策の一層の強化を強く望む。

 最後に、病院関係者が、本制度の見直しの趣旨を踏まえて臨床研修の充実に取り組み、医師養成への国民の期待に応えることを期待する。

読めばわかるように研修制度の見直しは

5年後を目途に改めて制度の見直しについて検討する必要

また5年したら改訂するそうです。