私も初めて知ったのですが、都立駒込病院は127年の歴史を持ち、「こまごめピペット」はこの病院で発明され、正式には「駒込ピペット」と言うのだそうです。雑学ですが勉強になりました。もちろん今でも活発な活動をしている病院で、とくにがん治療では拠点的な病院であると院長挨拶に紹介されています。なにぶん東京の病院なのでその程度しか知らなくて申し訳ありません。
もちろんがん治療だけではなく病院HPにある、各種指定状況・施設基準等の一部を紹介すれば、
指定施設(法令等に基づくもの)の指定状況
二次救急医療機関であることもわかります。オリジナルは診療実績にあるのですが、必要な部分を引用すると、
救急患者数統計(平成19年度) | ||||||||||||
区分 |
総数 |
時間外(再掲) |
||||||||||
計 |
入院 |
外来 |
入院 |
外来 |
||||||||
救急車 |
その他 |
救急車 |
その他 |
救急車 |
その他 |
救急車 |
その他 |
|||||
総数 |
7,337 |
772 |
732 |
864 |
4,969 |
509 |
609 |
698 |
4,691 |
|||
休日分 |
3,750 |
244 |
340 |
357 |
2,809 |
216 |
321 |
337 |
2,789 |
|||
ただちょっと分かり難い集計で、休日分の時間外診療以外の受診とは何だろうと思うのですが、とにかく総数で7337件の救急患者を応需し、休日だけで3750件ある事がわかります。年間休日が120日ぐらいですから休日だけで1日30件ぐらいに成ります。かなり活発に活動されているんじゃないかと思われます。ちなみに小児科の診療案内を見ると、
当日の予約時間 |
午前9時〜11時 |
〜午後4時30分 |
午後4時〜翌日午前9時 |
診療時間 |
午前9時〜11時 |
午後1〜5時 |
午後5時〜翌日午前9時 |
月〜金曜日 |
小児科外来 |
小児科外来 |
救急外来* |
土曜日 |
土曜外来 |
救急外来 |
救急外来* |
日曜日・祝祭日 |
救急外来 |
救急外来 |
救急外来* |
報 酬(平成19年4月1日現在)
こういう記載があるので平成19年以降に出されたものであろう事が推測されます。勤務時間のところに、
勤務時間 平日 9:00〜17:45(月15日の先生は当直あり)
どうも当直はありそうです。さらに駒込病院HPの医療機関の方へに、
小児科の夜間救急についてのお知らせ
平成20年4月以降、日曜日の夜間は小児科当直医が不在となっておりましたが、10月1日より、土・日曜日及び祝日を含め、全ての日において夜間当直体制をとることといたします。(※場合によっては、小児科当直医が不在になることもございますので、夜間に小児科診療を希望の方は、事前に当院救急外来に電話でご確認をお願いいたします。)
ここには「夜間当直体制」「小児科当直医」の文字が明記されています。平成20年10月時点でも当直体制があったと考えて良さそうです。もう一つですが、チト古いのですが平成12年に都議会で民主党の尾崎正一氏が質問した議事録があります。ちょっと長いですが引用します。
〇尾崎委員
石原知事は、都議会民主党の代表質問に対し、東京都の取り組む医療改革について、警察と消防と同様、365日、24時間体制で医療に取り組む意識が必要であることを強調した。今後、都立病院改革に取り組み、都民が安心して暮らすことができる医療提供体制の確立を目指し、その実現に努めていくと答弁している。現在の都立病院は、365日、24時間体制をとっていないのか。また、現在の都立病院の休日あるいは夜間診療体制はどうなっているのか、伺う。
●今村衛生局長
都立の総合病院においては、休日、夜間に内科、外科を中心とした当直の医師に加え、看護婦、臨床検査技師、薬剤師、放射線技師等を配置し、入院患者や救急患者の診療に当たっている。特に、墨東病院など3病院の救命救急センターでは、命の危機を伴う重篤な患者に対し、常時救命治療を行っている。その他、小児病院等においても、専門医療機関として必要な休日、夜間の診療体制をとっている。
〇尾崎委員
それでは改めて、365日、24時間体制を強調するのは、都立病院にどのような体制をつくろうとしているのか、改革の具体的内容を伺う。
●今村衛生局長
都立病院は、都の救急医療体制の中で、二次救急や救命救急などに病院それぞれの特性を活かしながら対応している。今後とも、入院患者はもちろんのこと、さまざまな救急患者に対しても、民間医療機関と協力して、いかなる症状にも応じた適切な医療を直ちに提供できるよう、体制の整備を目指す。そこで、当面平成12年度においては、駒込病院で内科、小児科、外科の休日、全夜間救急に取り組んでいくほか、府中病院及び墨東病院において、土曜日の診療体制を平日と同様とするモデル事業を実施することとしている。
〇尾崎委員
12年度予算案でも、駒込病院を対象に二次救急医療体制を整備するとともに、府中病院や墨東病院で、土曜日の診療を平日対応とするモデル事業を実施するなど、前向きな取り組みは評価する。しかし一方で、石原知事は、医師を初めとした医療従事者に対し、ぶったるんでいるというような発言もあった。意識改革の必要を強調していることはわかるが、都立病院ではどのようにして意識改革を図ろうとしているのか、伺う。
●今村衛生局長
医療の提供に当っては、高水準で良質な医療とともに、患者の視点に立ったきめ細やかなサービスを提供することが重要だと考えている。このため、知事が常日ごろ言っているように、医療従事者の一人一人が、警察や消防の職員と同様に、365日、24時間の医療サービスを提供するという意識を持って、患者中心の医療を実現できるよう、あらゆる方法で意識改革を進めてまいる所存である。
〇尾崎委員
医療従事者の意識改革はもちろんだが、体制の問題もあるのではないか。医師の勤務体制は、日中に通常の診療を行い、夜間は当直で救急対応、その翌日はまた外来診療に従事するといった勤務があると聞いている。32時間不眠不休の医療行為を行うようなことが常態化されれば、それが医療事故にもつながるのではないかというおそれがある。都立病院において、外来、当直、外来で32時間にも及ぶ長時間勤務があると聞いているが、都はこのような実態を承知しているのか、伺う。
●今村衛生局長
一般的な当直医師の勤務体制は、日中に通常の診療を行って、引き続き夜間当直となり、その翌日も勤務となる。夜間当直では、入院患者とともに救急患者にも対応することとなっており、夜間の救急患者が多い場合などは、患者対応が長時間に及んで、非常に勤務体制が逼迫するというようなことは承知している。
これを読んでも駒込病院は平成12年時点では当直体制であり、その他の情報からも現在も当直体制であるとして良いかと考えられます。ここでなんですが、今日は当直勤務体制で実質夜間勤務であるのは偽装であるみたいな主張をしようとの趣旨でもありません。そういう主張も十分成立しますが、駒込病院の当直偽装疑惑はそういうレベルの問題ではないからです。
当直(宿日直)を行なうには労基署の許可が必要になります。典拠になるのは、
労働基準法第41条
この章、第6章及び第6章の2で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、次の各号の一に該当する労働者については適用しない。
- 別表第1第6号(林業を除く。)又は第7号に掲げる事業に従事する者
- 事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者又は機密の事務を取り扱う者
- 監視又は断続的労働に従事する者で、使用者が行政官庁の許可を受けたもの
つまり41条3号の「使用者が行政官庁の許可を受けたもの」が宿日直を行なわせる事が可能となります。やっとこさ問題の核心に入りますが、駒込病院だけではなく、すべての都立病院に宿日直許可の有無の情報開示を求めた方がおられます。開示請求を行なったのは東京都及び東京労働局の両方に行なっています。そこで判明した事実があります。都立駒込病院のみ非開示決定通知書が送られてきたのです。リンクしているのは東京都からのものですが、開示に際して要求した項目は、
これに対し非開示の理由は、
当該公文書は現在存在しない。
これが今回の都立駒込病院当直偽装疑惑の根拠です。非開示決定通知書を額面通りに読むと、駒込病院の宿日直は労基法41条3号による許可すら無く行なわれている可能性が出て来ます。宿日直体制での実質夜勤でさえ問題視されているのに、宿日直許可さえ受けていない疑惑が出て来る事になります。これは医師の当直だけではなく、看護師、放射線科技師、臨床検査技師、薬剤師、事務員も当直制で時間外の診療に従事していれば該当することになります。ここで考えられる可能性として、
- 本当に労基局からの宿日直許可なしで宿日直業務を行なっている。
(ごく普通に事実関係を考えればそうなる)
- 開示請求の方法が悪く、本当は宿日直許可はある
(他の都立病院が同様の情報開示請求で宿日直許可書の開示が出来ているのに不自然)
- 大昔に宿日直許可を取り、本来なら許可の更新を行なうべきなのだが、それが為されておらず「41条3号に基づく宿直許可書はない」とした
(それに近い話を法務業の末席様がコメントしてくれた事がありますが、41条3号が制定される前の宿日直許可が存在するかどうかは疑問)
- 非開示決定通知書の平成21年1月19日以前に交代制勤務に移行し宿日直許可書を廃棄した
(都立駒込病院のみが交代勤務制に移行するのは基本的に不自然。それと交代勤務制に移行しても宿日直許可書が直ちに破棄されるのもおかしい)