救急病院数の推移

今日も元ネタは消防白書です。10年分の統計をあれこれ見ていると、少し興味深い事に気がつきました。先に注意しておきますが「救急病院数 = 救急医療供給力」では必ずしもありません。救急告示病院と言っても玉石混交で、バリバリの救命救急センターから場末の小病院まで含み、どちらも同じ1ヶ所と言う数え方になります。それでも県単位、地域単位であれば玉石混交の比率も同じぐらいじゃないかの前提で今日は考えます。

まず昨日も書いた基本データですが、1988年度から2007年度の10年間の間の救急病院数の変化です。

年度 総数 病院 診療所
国公立 私立 合計
1998年度 5148 1243 3040 4283 865
2007年度 4370 1272 2692 3964 406
増減数 ▲778 29 ▲348 ▲319 ▲459
増減率 ▲15.1% 2.3% ▲11.4% ▲7.4% ▲53.1%


今日はこのうち病院数に注目したいのですが、病院数の減少は319ヶ所で減少率は7.4%減です。これを1998年度の病院数を基準として10年間の変化をグラフにしてみると、
2002年度までは微増ですが1998年度を上回っていた事がわかります。ところが2003年度から減少に転じ、その減少数は年度毎に加速している事が確認できます。これに加えて対前年度の病院数の増減を加えて数字を表にしてみると、

年度 病院増減数 対前年度増減 年度 病院増減数 対前年度増減
1998 0 0 2003 -21 -34
1999 32 32 2004 -63 -42
2000 64 32 2005 -114 -51
2001 7 -57 2006 -154 -40
2002 13 6 2007 -319 -165


病院数全体では2003年度から1998年度の数を下回り始めていますが、対前年度に対する増減は2001年度から急激に大きくなった事が分かります。2002年度は少し持ち直しましたが、以後2003年度からは一貫して減少し、とくに2007年度は165病院と、それまでの9年間のトータル減少数を上回る減り方を示しています。昨年度がここ10年間でもっとも急激に救急病院が減少した年である事がわかります。理由についての分析は今日は控えます。

ここで首都圏の救急病院数の推移を見てみます。これもグラフにしたいのですが、首都圏と首都圏以外の全国の1998年度を基準にした病院数の推移です。今回の首都圏設定は茨城、栃木、群馬、埼玉、東京、千葉、神奈川としています。

首都圏が一貫してジリジリ減り続けているのがわかります。そのため2006年時点では病院減少数は首都圏では109ヶ所減少に対し、首都圏以外では45ヶ所減少に留まっています。つまり2006年度時点では154ヶ所の減少がありましたが、7割以上が首都圏であったという事です。ところが2007年度になると首都圏以外の救急病院が急速に消滅し、首都圏も確実に減少を続け129ヶ所になっていますが、首都圏以外は一挙に190ヶ所に増加している事がわかります。つまりと言うほどでもありませんが、2007年度は先行していた首都圏の救急病院減少に、首都圏以外が足並みを合わせ始めたとも解釈できます。

救急病院数の増減と言う事に限れば、2001年度と2007年度に大きな何かがあった事が推察されます。2001年度から始まった漸減傾向はほぼ一貫しており、この年度以降に救急病院が増えない何らかの要因が起こり続いていると考えます。また2007年度の急激な落ち込みも何らかの要因が広く作用していると考えられます。はて何があったのでしょうか、良ければご意見いただけると嬉しく存じます。

追記

2007年度の減少都道府県上位10県を参考までに示します。

都道府県名 2006年度 2007年度 減少数 減少率
愛知 187 167 -20 10.7%
兵庫 193 178 -15 7.8%
大分 64 50 -13 20.3%
北海道 266 253 -13 4.9%
佐賀 57 44 -12 21.1%
大阪 270 258 -11 4.1%
広島 130 119 -9 6.9%
茨城 108 99 -8 7.4%
福岡 144 136 -7 4.9%
岐阜 74 67 -7 9.5%


なおこの状況下でも増加県と言うのがあり、宮崎9、山口4、三重2、神奈川・長野・福島・沖縄1です。