あくまでも噂話です

まずは似たような報道記事を2連発で、まずは3/6付時事通信社より、

近畿大書類送検=残業代未払い、労基法違反−5年前にも是正勧告・大阪労働局

 近畿大学大阪府東大阪市、畑博行学長)が事務職員の残業代計430万円を支払っていなかったとして、大阪労働局は6日、労働基準法違反の疑いで、同大と元人事部長(48)=昨年10月25日付で人事部長代理に降格処分=を大阪地検書類送検した。元人事部長は残業代を支払っていなかったことを認めているという。

 調べでは、元人事部長は昨年1月から6月まで、大学本部で勤務する事務職員34人に、残業時間を月45時間とする労基法に基づく労使協定(三六協定)を超えて残業させ、430万円の残業手当を支払わなかった疑い。

 同大は残業代の支払いを30時間で打ち切っていたとして、2003年7月に東大阪労働基準監督署から是正勧告を受けた。いったん上限を撤廃したが、04年4月から三六協定による45時間を上限に再び打ち切りを始めた。

近畿大学では事務職員に対して、

  1. 三六協定の45時間を越えて残業させた。
  2. 残業代の上限を45時間にし後はサービス残業とした。
どこでも人件費節減のために常套的に行なわれている手法とは言え、言い訳できないほどの違法行為であり再犯となれば

同大と元人事部長(48)=昨年10月25日付で人事部長代理に降格処分=を大阪地検書類送検

おそらく歴代の人事部長が「当然」として行なってきたのでしょうか、労基法にも牙はあるというわけです。

続いて3/15付時事通信社より、

阪大でサービス残業=労基署から是正勧告受ける

 大阪大学大阪府吹田市)が職員にサービス残業をさせていたとして、茨木労働基準監督署から労働基準法違反で是正勧告を受けていたことが15日、分かった。同大は職員5400人を中心に過去2年間の勤務実態を調査しており、サービス残業が確認された職員らには、今月中に残業代を支払うという。

 同大によると、昨年10月、職員から「残業が適切に報告されていない」との通報を受け、独自に調査。職員1人について、残業時間を月80時間、年間360時間とする労使協定を超えて残業させていたことが分かった。

近大と微妙に表現が違います。対象が、

  • 近大・・・事務職員34人
  • 阪大・・・職員5400人
ここで気になったのは阪大の職員に医師が含まれているかどうかです。まさか阪大に事務職員だけで5400人もいるとは思えないですからね。どう気になるかといえば、3/14付エントリーで取り上げた救命救急センターの勤務状況に関連します。ネタ元は3/13付Asahi.comなんですが、近畿の救命救急センター28施設のうち6施設が交代勤務制を行なっている部分です。記事を引用すると、

大阪大付属病院(同府吹田市)など6施設は数チームによる交代制などを取っており、宿直勤務はなかった

Asahi.comはおそらくさして意識もせずに交代勤務制を取る病院の代表格に阪大病院の名を挙げています。他の病院でも良かったのでしょうが、一番有名だろうと言うことで名を挙げたのではないかと考えます。ところがこの件につき剣呑な情報が手許に寄せられています。事が事だけに情報提供者も匿名が絶対条件としており、「さる複数の阪大関係者筋」としかできませんので、あくまでも噂話としておきます。

阪大病院ではICUは間違い無く交代勤務制で表に出しても問題ないレベルだそうです。しかし

とのことです。

ここで阪大病院が交代勤務制で無い事自体はよろしくはありませんが、無茶苦茶恥しいレベルではありません。近畿2府4県の救命救急センター28ヶ所のうち交代勤務制は阪大病院を含めても6ヵ所しかないのです。また調査は朝日新聞の独自調査であり、回答する義務もありません。現に長浜赤十字病院と南和歌山医療センターは回答していません。回答しないのも問題は残るとは言え、回答しなかった事自体は非難集中の問題行為と言えないからです。

それをわざわざ阪大病院は虚偽の回答を行なったのです。内情としてはわざわざ教授会まで開き対応を協議し「実態をそのまま回答すべきだ」の声を押し潰し虚偽回答の作成に強権を揮ったとされます。朝日新聞の調査はどうやらアンケート方式であったようで、医師個人にも調査票が送られ記入回答する形式だったようですが、阪大病院は回答例を作成し幻の交代勤務制を演出したのです。

新聞社の調査ですから、虚偽回答を行なったところで犯罪行為になるわけではないでしょうが、教授会は虚偽回答の秘密をどれだけ守れると考えていたかに疑問を感じます。つまりは情報の漏出です。ネット社会の情報伝達力をどれほど計算に入れていたかが不思議です。確認してませんが、某巨大掲示板やm3あたりに簡単に漏出していても不思議ありません。それでも虚偽の回答を作成する事にした決定に疑問です。

なぜそこまでの無茶をしたかの理由に

    労基法違反が発覚すれば大変な事になる
これがあったとの情報もあったのですが、労基法違反なんて病院では日常茶飯事過ぎて今さら理由になるのが不思議でした。しかし上記の阪大職員の労基法違反調査があると知り、少しだけ合点がいきました。おそらくですが、労働基準局による調査が阪大本学で着手されていた、ないしは着手されるかもしれないの情報があった上での教授会の判断であったのではないかと言うことです。

それでも私は釈然としない部分が残ります。労働基準局による調査ないしは調査情報を懸念して朝日新聞の調査に虚偽の回答を行い事実を隠蔽する決定を行なったとしても、後で事実を隠蔽した事が判明した時のほうが影響が大きいと思います。今どき誰でもそれぐらいは頭は回ります。長浜赤十字病院や南和歌山医療センターのように無回答の選択もあったはずです。やろうと思えば救命救急センター間で回答をしたかしないかの横の連絡は事務レベルで可能のはずです。

あえて回答を出し、さらに虚偽の回答を強制的に作り上げたのは、労働基準局の調査が阪大病院に及ばないかもしれないの観測もあったからだと考えます。下手に無回答だと労働基準局が勘ぐって調査に及ぶかもしれませんし、交代勤務制で無いとすればこれを証拠として病院も調査範囲に加えられるかもしれないの判断です。病院が調査に引っかからないようにするためには「交代勤務制である」と報告する以外は手は無いという判断です。これならそこまで強権を揮った理由は辻褄が合います。

辻褄は合いますが火種は残ります。虚偽の回答を強制的に書かされた医師の怒りは大きかったそうです。そりゃそうで、医師にとってはメリットの無い協力だからです。虚偽に協力したところで当直勤務制が交代勤務制に変わるわけではなく、口止め料が入るわけでもありません。労働基準局の調査で時間外労働に正規の手当が出るようになる事も医師にとっては歓迎すべき事ですが、虚偽に協力したら逆に改善されません。つまり虚偽に加担して得られるメリットが皆無に近いという事です。

もちろん皆無ではなく、阪大は医局の影響力が色濃く残っているところと聞きますから、反旗を翻すと昔ながらの人事上の報復はありえると思えます。ありえるからこそ怒りながらも教授会の決定に従ったのでしょうが、憤懣は残りますし私のようなところにもリーク情報が届きます。そのうえで後日虚偽だった事が明らかになった時にどうなるか。雪印の例を持ち出すまでも無いと思いますが、責任者は相当なバッシングを覚悟しなくてはいけません。

あくまでも噂話ですが、あまり賢い決定を行なったとは思いにくいところです。